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第252話 干渉・2

 幾分落ち着きを取り戻してから、私たちはそれぞれ適当な場所へと腰かけた。


 これからする話の内容的に、他の人間に聞かれない方がいいだろうということで場所は変えていない。私とセスは部屋の端にある椅子に、アンジェリカとクロエはベッドに座っている。


「私が術をかけてすぐに何か強い力によって私の術は打ち消され、貴方は誰かの夢へと導かれた」


 最初に沈黙を破ったのはアンジェリカだった。


「そんな現象を目にしたのは初めてのことだからよく分からないけれど、いい影響を与えるとは思えなかったからすぐに貴方を起こそうとしたわ。でも声をかけて揺さぶったくらいでは貴方は起きなかった。だからセスが貴方を傷つけて目を覚まさせたのよ。貴方は、あの時にどんな夢を見ていたの?」


 なるほど、だからセスが私を刺したのか。無理やり起こすために。


「生垣でできた、迷路の夢だった」


 ここで話をするにあたって、私が転生者であることを明かしていいものかどうかもちろんセスと相談はできてない。それがこの話に関係するのかどうかはともかく、慎重に言葉を選んで会話しなければ。


「迷路? それで貴方はどうしたの?」


「ただ当てもなく歩いた。しばらく歩いているうちに出口らしき所にたどり着いて……僕はその先へ足を踏み入れた。そこは何もない真っ白な空間で、見覚えのない少年が1人立っていた。近づこうと思ったけれど、腕に痛みが走って気づいたら目を覚ましていたんだ」


 先ほど見た夢の内容をありのまま伝える。

 夢、というか夢とは思えないほど現実味を帯びている感覚はあったけれど。


「迷路は侵入者をそれ以上踏み込ませないための防御……と考えられるけど、干渉された側の貴方が、してきた側の迷路を歩くなんておかしな話だわ。干渉してきておいて、踏み込ませないために迷路を彷徨わせるなんて」


「…………」


 アンジェリカの話が本当ならば、確かにおかしい話だ。

 あの夢が誰かの夢で、その誰かがそれ以上踏み込ませたくないと思っているのなら、そもそも何故私をそこに呼んだのだろう。


「もう一度術をかけてもらえばまた同じ夢を見られるのかな。あの少年に会って話をしてみれば」


「やめておいた方が賢明ね。その場に他のカムニ族がいたのならともかく、遠隔からそんなことをできる人間なんて私は知らないわ。この世界にもしそれができる人間がいるとするならば、魔王とか神とかそういう次元の存在よ」


 私の言葉を遮るようにアンジェリカが言った。


「魔王……? 神……?」


 意味が分からない。ずいぶんとリアリティに欠ける話だ。魔王にも神にも縁などない。


「魔王や天王は、地族への干渉を禁じられているはずでは?」


 今まで黙って話を聞いていたセスが口を挟んだ。

 そうなのか。それは初耳だ。が、正直そんな話が自分に関係あるとは思えない。


「それができるだけの力を持つのは魔王や神くらいのもの、という意味で言っただけよ。先ほど干渉してきたのが魔王だったのか神だったのか、はたまた他の何かだったのかは私には分からない」


 首を振ってアンジェリカが答えた。


「あの黒い髪の少年が干渉してきた人ってこと?」


「状況的に考えればその可能性は高いけれど、それが誰なのかはおそらくここにいる人間の誰にも分からないでしょうね。私が知る限りでは少年の姿をした魔王なんていないもの」


「……どういうこと? 魔王って1人じゃないの?」


 今聞くべきはそこじゃないのは分かっている。だがどうしてもそれが気になってしまった。アンジェリカの言い方はまるで魔王が複数いるかのように聞こえる。


「魔王も天王も3人ずついる。確かにそんな見た目をした魔王の話は聞いたことはないし、天王の中にもいない。が、それだけの力を持った人間なら姿形などいくらでも変えられるのではないか?」


 アンジェリカの代わりにセスが答えてくれた。

 3人ずついるのか。まじか。魔王は1人だと思い込んでいた。確実に元の世界で目にしてきたゲームや漫画の影響だ。


「だとしても先ほどの話にあったように、魔王や天王が地族に干渉することは神が禁じているはずです。別の誰かと考える方が自然なのでは?」


「そうね。でもそれが誰にしろ、普通の人間じゃないことは確かだわ」


 ここで始めて口を開いたクロエに、アンジェリカが頷きながらそう言った。

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