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第247話 地図と入場券・2

「さて、入場券を買おうか」


 広げた地図を丸めて紐でじてから今度は入場券が売られているカウンターに向かった。


「俺が買ってくるから2人は外で待ってて」


 先ほど買った地図を私に手渡しながらセスが言う。

 地図売り場とは違い、入場券売り場には数人並んでいる。確かに3人で並んでは邪魔になるだろう。


「分かった。外で待ってるね」


 そう答えてアンジェリカと共に外に出た。

 服についた香の匂いが風で取り払われ、呼吸が楽になったかのように感じる。


「入場券っていくらなの?」


「1人金貨3枚ね」


「高い……っ!」


 何気なくアンジェリカに聞いてみたが、予想以上の値段だった。3人入るだけで金貨9枚ってことか。


「中で討伐すれば元は取れるわ。小さいものだけど結晶を宿しているモンスターもいるしね」


「そっか……」


 何てことないかのように言うアンジェリカに私はそれ以上何も言えなかった。






「このまま地下洞窟に向かっていいのかな?」


 戻ってきたセスがアンジェリカに入場券を渡しながら聞いた。


「別に構わないけれど?」


 なぜそう聞かれたのか分からないという顔でアンジェリカが返す。

 おそらく、セスはその格好のままでいいのかという意味で聞いたのだと思う。クルヴァンの討伐の時とは違い、今のアンジェリカはおよそ戦闘には不向きな格好だ。荷物を持ったままなので着替えはあるのだろうし、洞窟に入る前に着替えた方がよさそうに思える。


「服、汚れちゃわない?」


 そういう意図が伝わっていなさそうだったので口を出したが、しかしアンジェリカは首を振った。


「私は戦いに行くのではないもの。モンスターは貴方たちが倒してちょうだい」


「はぁ……なるほど……」


 アンジェリカの役割はあくまでも私の神力を餌とすること、というわけか。

 その潔さは感嘆かんたんに値する。女王様、とでもお呼びしようか。


「まぁ、それならそれでいいのだけど。魔力濃度が高い場所は、そう遠くもないしね」


 苦い笑みを浮かべてセスが言う。

 まるでその場所が頭に入っているかのような言い方に、どこら辺なのか聞こうと私は手に持ったままの地図を広げた。


「ここだね。おそらく2~3時間あれば着くだろう」


 私の聞きたいことを言い当てたかのようにセスがある一点を指さして言った。


「なるほど……」


 確かにそこには"魔力エリア"と綺麗な字で書かれている。実際の距離感が分からないので何とも言えないが、この地図に描かれている範囲で考えれば近いと言っていい。


 それにしてもずいぶんと入り組んだ地下洞窟だ。しかも紙の端の方の道が不自然に途切れているので、この地図に描かれている範囲は地下洞窟のすべてではないのだろう。

 もしこれがゲームなら、このダンジョンを攻略するのに相当の時間と労力を要する。全回復できるセーブポイントでもない限り、やりたいとすら思わないかもしれない。

 神魔術学校の生徒たちはよくこれだけの範囲をマッピングできたものだと感心してしまうほどだ。


「では、行こうか」


 私にも入場券を手渡してセスは歩き出した。


「あ、待って。入場券のお金」


「……そうだな、君からは形式上もらっておこうか」


 私の言葉にセスが足を止め、振り返って言った。

 もちろん払うことに何の異論もないわけだが、"形式上"というのはどういうことだろうか。


「ということは"形式上"、私は払わなくていいのよね?」


「ああ。君の分は俺が負担する」


 考えを巡らせている間に交わされたセスとアンジェリカの会話で、おおよその意図を理解した。

 これは私の訓練だから私は払う。それに付き合ってもらうアンジェリカは払わなくていい。ということだ。

 だとすればセスもまた私の訓練に付き合ってもらう側なのだから、私は自分の分はおろか全員分を負担する立場にいることになる。いや、考えてみれば当然の話だよね。


「待って、これは僕の訓練だから。僕が全部負担する」


 そう言いながら財布から金貨9枚を抜き出し、セスへと差し出す。


「……分かった」


 セスはそれを見てしばらく何かを考えていたようだが、やがて静かに頷いて金貨を受け取った。きっと私の面子のために受け取ってくれたのだろう。ここでいらないと言われたら立つ瀬がないのでありがたい。

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