第24話 ローブ
ニルヴァの言う通り、その後は何も起こらずに無事1ヶ月の契約期間を終え、達成カードを手渡された。
あの日以降、路地裏で襲われた話題は私から出すことはなかったし、向こうからもしてくることもなかった。
1週間も経つと自分の気持ちの整理もある程度ついて、どこかで問い詰めたい気持ちも出てくる。でもそれをしたらきっと私は消されるんだろう。知らない方がいいこともあるというのは、きっとこういうことなんだろうな。
ギルドで報酬とポイントをもらい、1ヶ月契約で借りていた宿を出て別の宿を取り直し、遠征依頼までの期間を準備にあてることにした。
遠征依頼の注意事項が書かれた紙にはいろいろなことが書いてある。
要点をまとめると、
・任務中は騎士団の指揮下におかれること
・命の危険がある
・途中で棄権することはできない(逃亡した場合は冒険者資格の永久剥奪)
・基地での食事と寝床は提供されるが、行きの食事は各自で(3日間)。帰りは支給。
・8人で1班とし、ローテーションを組み3交代で討伐にあたる
・道具の破損等があった場合、貸与可
・欠員が出た場合、騎士団から補充する
・任務達成後に騎士団見習いへの登用有り(希望者)
こんなところだろうか。
とりあえずは道中に必要な食料の買い出しと、神術師らしくローブの1着でも買っておこう。
術師向けに作られているローブは特殊な糸で織られており、着るだけで術の威力が上がるという優れものだ。
言い方を変えれば、同じ威力の術を少ない神力消費で撃てるということ。使わない手はない。
ちなみに、エルフは成人すると、長からローブと同じような役割を持っている触媒を授けられる。
里にあるご神木の枝を使って触媒を身に着けられるように加工し、それを神聖な泉に浸すことで初めて成人と認められるのだ。
私はそれを腕輪に加工して、肌身離さず身に着けている。
ヒューマが術を使う際に必要となる触媒も、私が身に着けている触媒と同じものだ。
ギルド近くにあった術師御用達のお店に足を踏み入れてみると、中は薄暗く、物々しい空気に包まれていた。
窓には紫色のカーテンがかけられており、天井にいくつか散りばめられた光の触媒が淡い光を発している。
店内にはまるで前世のファッションショップのようにいろいろな種類のローブが陳列されていて、杖や触媒といった道具類も充実している。
ローブはサイズや形状、色、素材など様々で、見ているだけで楽しい。
店主は奥のカウンターに座り、書き物をしていた。特に声をかけてくることもない。その辺りは前世とは違ってサービス的には劣る。まぁ、店員に声をかけられるのは苦手だったので私的にはその方がいいのだけれど。
男性用のローブが陳列されている場所へと行き、色々と手に取ってみる。
足元までくるような長い丈のものもあれば、パーカーみたいなものもある。長いものは動きにくいし、パーカータイプに絞ることにした。面積が少ない分、値段もそちらの方が安い。
肌触りは物によってだいぶ違う。シルクのようにツルツルして肌触りがいいものが一番高く、綿のような素材の物が中間で、麻のような硬めの質感の物が一番安いようだ。
とりあえず今はまだ高級なローブは手を出せないので、中間あたりか安いやつで探そう。
まず初めに考えるべきは色だ。エルフと言ったら緑なイメージがある。私が思い浮かべるエルフは大体緑の服を着ている。
私も着たい。
パーカータイプで緑の物はいくつかあった。パッと見比べてデザイン的に目を引くものを手に取る。
色は緑と言ってもかなり深い緑だ。シックでいい。素材的には綿の服と同じような感じ。胸元は金の糸でアラベスク模様が刺繍されていて、同様の模様が丈や手元にも施されている。値段は金貨7枚。いいね。こういうのは最初の直感を信じるべき。よし、これにしよう。
カウンターに持って行くと、店主は「金貨7枚です」とだけ短く言った。なんて愛想がない。金貨7枚を支払い、店を後にした。
その後、食料をなどを買い込み、来る遠征依頼に備えた。




