第242話 地下洞窟
ちょうどいいタイミングで料理が運ばれてきて、会話が途切れる。
アドルドは冒険者が多い街だからなのか、ロッソと同様どのお店も肉がメインで味付けが濃い。この近辺にはモンスターも多いが食料に適した動物も多いので肉には事欠かないようだ。
「それにしてもシエル。貴方は一体何者なのですか? その神力量、普通のエルフとはとても思えないのですが」
「……っ!?」
突如クロエから振られた言葉に動揺し、危うくサラダを取り分けるために持っていたトングを落とすところだった。
その様子を多分全員が見ていたとは思うが、特に何も言われなかった。
「……僕は、普通のエルフだよ。小さいころから限界まで神力を使って鍛えさせられてきただけだ」
セスの方を見ないようにして、私は咄嗟にそう答えた。
あれだけの動揺を見せた後にセスに目配せでもしてしまえば、何か秘密があると言っているようなものだ。
まぁ、動揺を見せた時点で遅いのかもしれないけど……。
「それで、そんなに? 相当の才がおありだったのですね」
「……どうもありがとう」
何だか都合がいいように解釈してくれたようだ。思うところはあるのかもしれないが、そういうことにしておこう。
実際、転生者だから神力量が多いということが証明されているわけではないし。本当に子供の頃に頑張った成果の可能性も大いにあるのだ。
「あのさ、ヴェデュールの地下洞窟って?」
この話をこれ以上振られないよう、私は強制的に話題を変えた。
「ヴェデュールの地下全域に広がる洞窟のことだ。そこはどういうわけか魔力濃度が異常に高い場所と、神力濃度が異常に高い場所が混在していてね。魔力濃度が高い場所なら君の訓練もできるだろうと思って」
セスも私の意図を汲んでくれたのだろう、すぐにそう答えてくれた。
しかし地下全域とは一体どういうことだ。凄まじく広い洞窟ってことか?
「ヴェデュールの地下全域ってことは相当広い洞窟ってこと?」
「ああ。ヴェデュール自体そこまで広い国ではないが、その地下すべてに洞窟が広がっていると思えば広大であることに変わりはない。4つある地下洞窟の出入り口は全て国に管理され、その全てが街の中にある。まぁ、街の中にあるというよりも、出入り口に街を作ったという方が正しいのだろうけど」
「へぇ……すごい」
何だか規模が大きすぎてよくわからない。
国が丸ごとダンジョンになってるってことか。
「じゃあ街から街へ移動するのに、洞窟の中を通って行けるってこと?」
「そうだね。実際そうして洞窟で討伐をしながら別の街まで移動する冒険者は多い。洞窟は入場料を取られるからね。入るなら長くいないともったいないと思う人間が多いのだろう」
「入場料取られるんだ……」
「国が管理している洞窟だからね。そのために出入り口に街を作ったのだろうし」
「なるほど……」
まさかの有料ダンジョンだった。
まぁ、それでもきっと元は取れるのだろうな。じゃなきゃ誰も入らないし。
「それで、どこの街から地下洞窟に入るつもりなの?」
痺れを切らしたようにアンジェリカが口を挟んできた。
地下洞窟のことを知っている人間にはつまらない会話だっただろうか。しかし私には重要な話だ。なにせ、その場所で自分の訓練をするというのだから、少しでも多くの情報は欲しい。
「どこの街へ転移できる?」
「どこでも構いませんよ。ミトスの街であれば、すべてのレコードを作ってありますから」
「レコード?」
聞きなれない単語が出てきて、思わず3人の会話に口を挟んでしまった。




