第235話 クルヴァン討伐戦・1
次の日の昼過ぎ、本当に突然前方に巨大な何かがフッと現れた。
「……っ!?」
超巨大な石像。例えるならば、ハニワをものすごく大きくした感じ。あれがクルヴァンだろう。
今いる場所からは結構距離がある。でもそれで本当によかったと思った。それくらい遠目から見ても恐ろしいほどにクルヴァンは存在を主張している。
ゲームで言ったらまさしくレイドボス。あの大きさの敵をたった5人で狩ろうなんて正気かと思うほどに大きい。
「あれがクルヴァン……」
「あぁ、そうだ」
思わず立ち止まった私の横に並んでセスが頷いた。
「ちと遠いな。着くまでに転移されるかもしれねぇし、他のパーティーに取られちまう可能性もある」
ガレンも立ち止まって言った。
ここで狩りをしている人はほぼ全てクルヴァン狙いだろう。道中何度か他のパーティーにすれ違ったくらいにはこの山にも人がいる。
ちなみに他のパーティーが狩っている敵には援軍要請がない限り手を出さない、というのがこの世界のルールらしい。そこもまたゲームみたいだ。
「とりあえずもう少し近づきましょう。誘導する場所も決めないといけないし」
冷静にアンジェリカが言う。
確かに狭い道であんな大きな敵とは戦えない。そのためにこの山には多くの広場があるのだろうし。
「誘導は誰がやる?」
「俺がやろう」
ガレンの問いかけにセスが名乗りを上げた。まじか。
「分かった。頼む」
「1人でやるの? 大丈夫なの?」
すんなり頷いたガレンとは対照的に、私は不安になった。
あのでかいのを1人で広い場所まで連れて来るということだよね。危なくないのだろうか。
「大丈夫だ。逆に誘導は1人でやらないと危ないからね。行こう」
私の方をチラリと見て言い、セスは歩き出した。
何てことないというような態度に少し安心しつつ、セスの後ろに出てしまわないように私も慌てて後を追った。
クルヴァンに近づくにつれその大きさが鮮明に分かってきたのと同時に、地響きがするようになった。歩いているだけでかなりの衝撃をもたらしているのだろう。おそらくビル3~4階くらいの高さがある。そりゃあ歩いたら地響きの1つもするだろうな。
「やるのはここがよさそうだな」
開けた場所に出るとガレンは言った。
クルヴァンはまだ同じ場所に留まり続けている。他のパーティーがやっているのかと思ったがそのような様子も見受けられないようだったので、私たちはあのクルヴァンを狩るつもりで徐々に距離を詰めてきた。
確かにここならクルヴァンからかなり近く、間合いから逃げるにも充分なスペースがある。適した場所と言えるだろう。
「じゃあここに連れて来よう」
スッと前に出てセスが言った。
「気を付けて」
「ああ」
アンジェリカの言葉に短く返して、振り返ることもなくセスはクルヴァンの方へと歩いて行った。
「シエル、お前クルヴァンと戦うのは初めてなんだよな?」
「え、あ、うん」
セスが行ってすぐにガレンが私に聞いた。
「核はお前に割ってもらうことになる。俺たち前衛が引きつけている間に割ってくれ。時間がかかっても構わないから焦らず確実にな。くれぐれもやつの間合いには入るなよ」
「うん、分かった」
セスと同じことをガレンは言う。
「何があろうとも、お前は核を割ることだけを考えろ。いいな」
「何があろうとも……?」
「誰かが倒れても、ってことよ」
私とガレンの会話にアンジェリカが入ってきた。
なるほどそういうことか。あまり考えたくない部類の話だな。
「核を壊さない限りクルヴァンとの戦いは終わらない。だから、あなたはそれを一番に考えて。私もサポートするし、ガレンたちも慣れてるから大丈夫だと思うけど一応ね」
「分かったよ」
万が一、ということもあるわけだしね。
とは言え、もしこの中の誰かが深手を負うなんて事態になったら、冷静に核なんて割れない気もする。
「よし、じゃあアンジェリカとシエルは下がってろ。もうすぐ来るぞ」
ガレンの言葉通り、クルヴァンはかなり近くまで来ている。それに比例するように地響きもだんだんと大きくなってきた。




