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第229話 核

「……転移石?」


 そこに置かれたのは以前にも見せてくれた、アルディナまでの転移石だった。


「そう。クルヴァンの核は神力を含んだ結晶だ。その名の通り心臓と等しきもので、核を壊すとクルヴァンは死ぬ。彼女の連れのルミアス族は、その核を手に入れて転移石を作りたいのだろう」


「なるほど……。だからクルヴァンを狩りたい、と」


「クルヴァンの核一式で白金貨5枚の報酬が出る。それはクルヴァンがそれだけの強さを誇るということもあるし、その核に価値があるということでもある。例えば5人でクルヴァンを狩るとしたら報酬は1人白金貨1枚。一度納めた核をギルドから買い戻せば、彼女たちは実質白金貨4枚で核を買える計算になる」


「……なるほど」


 オンラインゲームの臨時パーティーでもよくやる清算方法だ。

 レアが出た場合、欲しい人が買い取って、それを含めた金額を最終的に分配する。誰かから譲ってもらうよりもそうした方が安く買えるというわけだ。


「あれ、でもクルヴァンを倒すには核を壊すんだよね。割れちゃったら価値がなくなっちゃうんじゃないの?」


「核を壊さずしてクルヴァンを殺せる方法はない。だから世に出回っているクルヴァンの核は、すべて割れているものなんだよ。この転移石も同様で、核の一部にすぎない」


「なのに討伐の証が核なの? 割れた核の一部を納めればいいってこと?」


 クルヴァンを倒すためには核を割らなければならない。でもその核はギルドに討伐の証として納めなければならない。となれば、割れた核の一部分だけ納めて残りは山分けしちゃってもいいということだろうか。


「クルヴァンの核は形も大きさも決まっている。だから、割れた核を繋ぎ合わせて一式で納品するんだ。欠損があれば当然報酬は減額になる」


 さすがにそう上手い話ではなかったようだ。そりゃそうか。

 

「じゃあ割れた欠片はちゃんと回収しないといけないということだよね。なかなか大変そうだ」


「そんなに気負う必要はないよ。見つからなくて困るほど小さな欠片は、なくても影響ないから」


「そうなんだ」


 ならばいいか。

 まぁ、実際どんな感じなのか見てみないことには分からないしね。


「……あのさ、カムニ族が神力を餌とするなら……セスが言っていた訓練ができるよね。僕の神力を餌にしてもらうってやつ」


 セスがそれ以上会話を続けてこなかったので、私はおずおずと切り出した。


 カムニ族が神力を餌とする、と聞いた時から思っていたことだ。アンジェリカから見れば私たちは都合のいい存在であったのだろうが、私から見てもまた同じ。神力を餌とする魔族が探さずとも目の前に現れたのなら、いい機会なのではないだろうか。


「……彼女が信用に足る人物だと判断できれば、ね。その上で彼女が協力してくれるというのなら、頼んでみてもいいかもしれない」


 セスは私の言葉に驚く様子も見せずにそう口にした。

 おそらく、セスも同様のことを考えてはいたのだろう。


「そっか、そうだね……」


 信用に足る人物かどうか。それは今言える話じゃないもんな。

 このところ人に騙されてばかりだったから特に気を付けないと。






「約束通り見つけてきたわ。明日時間をもらえるかしら?」


 アンジェリカが再び声をかけて来たのはそれから2日後のことだった。

 セスと共に宿の食堂で夕食を食べていたらアンジェリカが連れの天族と思わしき人物と一緒に現れたのだ。ちなみに、最初に声をかけられてから今まで、一度もこの宿でアンジェリカの姿は目にしていない。ずいぶんと都合よく私たちを発見できたものだと感心してしまう。


 この2日間、私たちは特に何かをするでもなくのんびりと過ごしていた。

 転移陣で駐屯地まで飛んで訓練場みたいなところで軽く訓練をしたり、討伐の準備をしてみたりといった感じだ。


「……どんな構成?」


「剣士が1人、鎖鎌を使う中衛が1人という感じね」


「なるほど」


 セスはアンジェリカの背後に立つ天族を気にすることもなく普通に話している。が、私は気になって仕方がない。


 なぜなら、アンジェリカが連れてきたその人物が女性だったからだ。

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