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第228話 天門の守護者・3

「……君は魔族だろう。そこまでの転移術を使える魔族などいないはずだが?」


 女性の問いには答えず、セスが聞いた。


 なるほど、この女性は魔族なのか。

 

「そうね。私はできないわ。ルミアス族の仲間がいるの」


 ルミアス族、という言葉を聞いてセスが動きを止めた。

 何だろう、私は聞いたことがない。


「……なるほど。君は何族?」


 若干長めの沈黙の後にセスが聞く。

 今の間が何を意味するのか気になるが聞ける雰囲気ではない。


「私? 私はカムニ族よ」


「……神力を餌とするカムニ族と、天族であるルミアス族が仲間とはね」


「愛し合っているもの」


 セスの言葉にカムニ族だという女性はにっこりと笑ってそう言った。

 どうしよう、全く話についていけないんだけど。


「クルヴァンを狩るにしても、ルミアス族は戦う術を持たないはずだ。俺たちと君の3人でやるつもりか? それとも他にも仲間が?」


「いいえ、他に仲間はいないし、3人では厳しいことも承知しているわ。あと2人くらいは必要でしょうから、それはこちらで手配するつもりよ」


「……なるほど。シエル、悪い話ではないと思うけどどうかな」


「えっ……あ、うん、そうだね。僕はいいと思うよ」


 カムニ族の女性と話していたセスが突然私に話を振った。


 どうかと聞かれてもよく分からないが、悪い話ではないというのならば異論はない。


「では、3日以内にそちらが残りの2人を手配するというのならば、この話を受けようか」


 私の返事を受けてセスが女性に言う。

 何故3日以内なのかよく分からないが、それを聞いた女性は満足したように微笑んで立ち上がった。


「分かったわ。貴方は見たところリュシュナ族かと推測するけれど間違っていないかしら」


「ああ。だから残りは前衛2人か、前衛後衛1人ずつのどちらかがいいのではないかな。カムニ族は幻術師だろう?」


「そう、幻術師よ。まぁ、何とか上手いこと見つけてみるわ。私の名前はアンジェリカ。貴方たちは?」






 アンジェリカと名乗った女性は3日以内に残り2人を確保すると約束をして去って行った。

 どうやって合流するのかと尋ねたら、ここにくれば会えるでしょうと楽観的な返事が返ってきた。どうやらアンジェリカもこの宿に泊まっているらしい。


「……ごめんね、勝手に話をして」


 突然の訪問者が去って静寂が訪れると、セスが躊躇ためらいがちに口を開いた。


「ルミアス族は天族でも一番転移術に長けている種族なんだ。クルヴァンの討伐に協力する対価でヴェデュールまで転移してもらえるなら悪くない取引だと思ってね」


「ちゃんと僕にどう思うか聞いてくれたじゃない。よく分からなかった部分もあるけれど、異論はないよ。それにしてもこんな風に突然声をかけられることがあるんだね。少し驚いた」


「彼女からしてみればちょうどいい人材に見えたんだろうね。リュシュナ族とエルフの2人連れが、ここで狩りをするか先を急ぐか悩んでいたのだから。利害の一致というやつだ」


「確かにね」


 利害の一致。

 その言葉でふとヘルムートを思い出した。彼もそう言って私をセスの元に連れて行った。結局言葉の意味を聞くこともなく別れてしまったけど、それはどういう意味だったのだろうか。今となっては確かめようもないが、きっと死に場所を求めているのだろうな。


「えっと、確認なんだけど、アンジェリカさんは神力を餌とするカムニ族という魔族で、連れの人が転移術に長けているルミアス族という天族なんだよね。で、ルミアス族の人は戦えないから、クルヴァンを狩るのに他に2人ほど声をかけると」


「そうだね」


 先ほどの内容を反復するような私の言葉に、セスが頷いた。


「あと2人いればクルヴァンは問題なく狩れるってことだよね?」


「まぁ……そうだね。おそらくは」


 悪くない話だからと言っていた割には、何とも心許こころもとない返事が返ってきた。

 まぁでも大丈夫なのだろう。倒せるかどうか分からないくらい危険なものだったら、多分セスはこんな簡単に話を進めたりしないはずだ。


「あの人が欲しいって言っていたクルヴァンの核って?」


「これが、クルヴァンの核だよ」


 そう言いながらセスは鞄から何かを取り出してテーブルの上に置いた。

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