第225話 アドルド
アドルドまでの道のりは、結構険しかった。
モンスターもちょこちょこと出てきたし、道が狭かったり急だったりとなかなか厳しい。でも、だからこそアドルドは他国からの侵攻に強いのだとセスは教えてくれた。
聞いたところによるとアドルドは、超巨大なクレーターの中に1つの街があるのみで、その街の名前がアドルドだから国名もアドルドとなっているらしい。
その街は元々、隣接するロハネス山脈という名の山脈で討伐を行う傭兵団が拠点として作り上げた施設村で、今でも山脈討伐の拠点としての意味合いを強くもっている。故に代表者はいるが国王と呼ばれるような人は存在しないんだとか。
そして街から1週間ほどの場所に小さな拠点があり、ロハネス山脈で狩りを行う人はそこで補給や寝食をするらしい。それは街を中心に東西南北4つあって、例えるならばデッドライン討伐の駐屯地のようなものだとセスは教えてくれた。
「本当に駐屯地みたいな感じなんだね」
南に位置する駐屯地に足を踏み入れて早々、私は言った。
ここに至るまで、実に3週間以上。そんな長い期間、私たちは山登りしていたのである。
正直、2週間を過ぎたあたりからヘレンシスカ経由にしなかったことを後悔したほどにしんどかった。
セスの説明通り、南の駐屯地はデッドライン駐屯地と同様に、簡素な石造りの建物がメインの小さな村のようなものだった。
それにプラスして武器や食料が買えるお店があるといったところか。
道行く人たちはいかにも冒険者という感じの人たちばかりだ。
「そうだね。最低限の補給や寝食ができるだけの施設だ。駐屯地からアドルドの街までは転移陣が敷かれていて、すぐに移動ができるからね」
「転移陣!?」
何それ、初耳なんだけど。
アドルドの説明をしてくれた時には、一切そんな話は出てこなかったのに。
「そう、転移陣。誰でも自由に行き来ができる」
「へぇ、すごい! 便利だね! どうしてその転移陣は他の場所にないの?」
そんな便利なものが存在するならなぜ今まで訪れた街には設置していなかったのかと不思議なくらいなのだけど。もしかして知らないだけで実はあったりして?
「天王がアドルドのために設置したものだからだよ」
「天王……!?」
何度かその存在は耳にしたことがある。
アルディナ直属の部下的な認識だ。
「アドルドはね、デッドラインと似たような場所なんだ。アルディナから単独リンクを通って、とても強いモンスターが落ちてくる。だから天王はお詫びの意を込めて、ミトス側の人間が少しでも楽に倒せるようにと転移陣を設置したんだ」
「へぇ……」
だからアドルドにしかないというわけか。
それが各街にあれば元の世界よりも移動が楽で安全なのに。
「というわけで、ここからアドルドまで転移陣で飛ぶよ」
セスに案内された場所は、石で造られた長方形の建物だった。部屋の左側に青く光る陣があり、部屋の右側に赤く光る陣がある。ずいぶんと複雑な模様で描かれた魔法陣だ。窓もなくそれ以外には何もないので、まさしくこの陣のための建物といった感じがする。ちなみに、入口が広いので、リッキーやライムもちゃんと通れる。
「この陣を踏むだけでいい。ちゃんとリッキーに触れて陣を踏むんだよ」
そう言ってセスが青い陣に一歩足を踏み入れた瞬間、セスとライムが消えた。
一歩入るだけでいいのか……。詠唱も何も必要ないなんてとんでもないな。隣の赤い陣は一体何なのか気になったが、恐いのでさすがに踏めない。
「リッキー、おいで」
私もセスにならってリッキーに触れながら陣に足を踏み入れた。




