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第223話 厳然たるもの・1

「ここは少し広くなっているから、久しぶりに手合わせしようか」


 アドルドまでの道を辿っている途中、セスが切り出した。


 ロッソからアドルドへの道は、今まで通ってきた街道とは違い、基本的にゴツゴツとした岩場だ。

 その割に草木は結構あるが、葉をつけていない木が多く、あったとしても黄色く秋っぽい感じだ。それはロッソの近くとあまり変わらない。道が狭かったり、傾斜が急なところも多々あるが、今いるここはまるでデッドライン前の広場のように広々としていて訓練をやるにはちょうどいい。


「うん、お願いします」


 ここ最近訓練はやっていなかったので、また体が鈍っていそうだ。






「崖から落ちないように気をつけてね」


 少し離れた場所に立っているセスが言った。


「うん」


 先述したように、ここは三方を高い岩肌に囲まれたデッドライン前の広場と似たような場所だ。残りの一方が崖になっており、そこから落ちれば命はないだろう。


 巻き込んでしまうといけないので、リッキーとライムはこの広場から離れた場所に繋いである。


 私はセスには仕掛けずに、屈んで地面に手を付けた。

 そして足元から円柱状に岩を具現して、その上に乗る形で私は一気に上まで上がった。


 それと同時にセスが地面を蹴ってこちらへと向かってくる。

 おそらく、この岩場を相殺して崩すつもりなのだろう。


 横殴りに振ったセスの手刀が岩の柱にぶつかる直前、私は背後の岩肌にあったわずかな足場へと飛び移った。

 かなり高い。10mは超えていると思う。この高さならば、ジャンプして届くことも瞬時によじ登ってくることもないだろう。


 セスのまとった纏気てんきによって、作り出した岩の柱が砂となって崩れていく。

 飛び移るのが間に合わなかったら落ちるところだった。


 すぐさま真下にいるセスに向かって火炎放射を撃つ。

 それなりの威力と、それなりの範囲で放射し続ける。


 そして炎でお互いの姿が見えなくなった瞬間、私は岩場から飛び降りた。


 セスはおそらくその場から動かずに相殺して防いでいる。炎で視界が遮られているので、私が落ちてきていることは分からないはずだ。題して奇襲作戦。


 だいぶ地面に近くなった頃、私は火炎放射をやめて爆風を起こした。その爆風で炎が一瞬にして散り、落下速度がだいぶ緩まる。

 それにより、セスからはいきなり私が現れたように見えたはずなのだが、驚く様子は見られない。それどころか、暴風に押され若干体勢を崩したにも関わらず、すぐに風を気で散らして立て直した。

 さすがにそれは計算外だったが、ここまで落下速度が緩まれば構わない。私はすぐさま腰の短剣を抜き、勢いに任せてセスへと振り下ろした。


 だがそれにも全く焦る様子は見せずにセスは軽く体を捻ってかわし、パスで回ってきたボールを蹴るかのように私の体を蹴り飛ばした。


「ぐぁ……っ!」


 女だと分かっても尚、容赦がない。

 私は遠くまで飛ばされ、地面を激しく転がった。


「くっ……!」


 すぐさま痛む体を起こし、セスに向かって水を噴射する。

 セスは私に近づいてきてはおらず、先ほどの場所に留まったままそれを相殺した。

 空中に飛散した水で手の平サイズの氷の刃を多数作り、それをセスへと向けて放つ。一から氷を具現するよりも、存在する水から作り上げたほうが早いからだ。

 それもセスは難なく相殺してしまった。おそらく覇気だ。セスの周りで飛散した水がビシャビシャと地面を濡らした。


 私が右手を前に突き出した瞬間、セスが地面を蹴った。

 本当は何か一発術を撃つつもりでいたがそれは中止して、逃げるように距離を離し、再び岩の柱を作り出して先ほどとは反対側の岩肌へと登った。


 セスは具現した岩の柱を相殺しには来なかった。足を止めて私を見上げている。


 蹴られた脇腹がひどく痛む。

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