第218話 剣・2
剣を見繕う、という言葉通り、セスは私を武器屋に連れてきた。
道中で説明を求めても実際に見た方が早いからと軽くあしらわれてしまったので、さっぱり意図が掴めなかったのだが、セスが真っ直ぐ向かった売り場で合点がいった。
「なるほど、短剣か……」
そういえば以前訓練した時に私も短剣を持っていた方がいいと言われたのを思い出した。
「君が使うならなるべく軽いものの方がいい。できれば双剣として売られているものがいいね」
「ふむふむ」
あの時に短剣が2本あればよかった、と言っていたので双剣というのはそういうことなのだろう。
売り場を眺めてみると、双剣という括りで売られているものはそう数が多くない。しかし値段はピンキリで、安いものは2本セットで金貨1枚、高いものでは白金貨10枚のものもある。
「どのあたりのがいいのかな?」
「刃物は基本的に値段と性能が比例する。高いものの方が当然扱いやすいし、手入れをすれば長くもつ。ただ、君はそれで戦うわけじゃないからね。緊急用で持っておくだけなら、そこまで高いものを持っておく必要はないと思う」
そう言いながらセスは棚にかけられていた双剣を手に取って私に差し出した。
金貨6枚。これがセスの中で私に持たせるのに妥当ということだろうか。そこまで高いものは必要ないと言いつつ、なかなかのお値段な気がするんだけどどうなのだろう。
刃渡りは20cmくらいで、重さは2~3kgと言ったところか。一言で言うならダガー。まさしく、ゲームとかでよく見るダガーと相違ない。
「じゃあこれで」
軽く振ってみながら私は言った。
何だか双剣使いになったみたいでちょっと楽しい。
「じゃあ、後はベルトかな」
セスの後について行くと、剣を下げるためのベルトが並んだコーナーだった。
ちゃんと双剣用のものもある。
「脇に下げるものより、背に隠れるようなものがいい。君は術師だからね。武器を所持していると悟られないように、ローブの下に隠すんだ」
セスは迷うことなく数あるベルトの中から1つを手に取り、先ほど決めた短剣2本をホルダーに括り付け私に手渡した。
金貨1枚。しっかりとした革でできているし、そんなものだろう。
短剣が背中側に来るように腰にベルトを巻く。背中に手を回してみると、右手で1本、左手で1本抜けるようにちょうどいい位置で収まっていた。
「いいね。それでその上にローブを着れば完璧だ」
試しに2本同時に抜いてみた私を見てセスが言った。
「じゃあ、ローブも後で買わないと」
「買う? 修繕中じゃなかったの?」
セスはローブを修理に出していると思っていたようだ。カーダと交戦していた時から結構ボロボロだったし、成り行きを話していなかったのでそう思うのは当然だろう。
「フェリシアとの戦いでさらにボロボロになっちゃったから、ここに来た時に売ったんだ」
「なるほど。買うのならロッソじゃなくてヴェデュールに入ってからの方がいいよ。君はなくても特に困らないだろうし」
「そっか。ここ、ヴェデュールの近くなんだっけ」
エスタには近くなった、という話は聞いた気がするが、ロッソがルーマス大陸のどこにあるのかよく把握できていない。帰ったら地図を見返してみないと。
「まぁ、その間にもう1つ国を挟むけど、ヴェデュールは4つあるどの街にも神魔術学校があるから品ぞろえがいいんだ」
「なるほど」
術師御用達のお店が多いということか。
それならばそこに着いてから買うことにしよう。
「じゃあとりあえずこれ、買ってくるよ」
「待って、それは俺が買う」
奥で何か作業をしている店員の元に持って行こうとベルトを外したら、セスがそう言った。
「え? お金ならあるよ?」
「それを君に持たせたいのは俺だから。俺が買う」
「…………」
要は買ってくれるということなのだろうが、その理由がまた何とも独特だ。
人に物をプレゼントするならもっと他に言い方があるのではなかろうか。まぁ、これは物が物だから、そういう意味合いではないのかもしれないけれど。
多分ここで遠慮してもセスは引かないだろうから、素直にそうしてもらうことにした。
「ありがとう、大切にする」
受け取ってお礼を言うと、セスはどういたしまして、と嬉しそうに笑った。
不意に見せたその笑顔に思わずドキドキしてしまい、それを悟られないようにそそくさとベルトを巻いた。




