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第207話 ロッソ

「リッキー……ライム!」


 2件目に訪れた厩舎きゅうしゃで、見慣れた2頭を見つけた。

 駆け寄って2頭の頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らして顔を擦り付けてきた。忘れられてはいないようだ。


「ということは、まだここにいるようだね」


 後ろからゆっくり歩いてきたヘルムートが言った。


「はい、よかったです……!」


「こんな時間に旅立つことはないだろうから、ひとまず先に宿を確保しよう」


「はい!」


 安堵感と喜びで胸を躍らせながら、私はヘルムートの後をついて行った。






 ヘルムートは厩舎にほど近いところの宿を取り、再び厩舎に戻った。

 ちなみにこの宿を取る時に、ここにセスという人間は泊まっているかと尋ねてみたが、この宿には泊まっていないということだった。

 しかしあっさりそれを教えてくれるところが日本とはえらい違う。


「あのカデム2頭はどういう期間で預けられている?」


 リッキーとライムを預けた人間と知り合いだ、ということを話した上でヘルムートは厩舎の管理人にそれを聞いた。

 管理人もリッキーとライムが私に懐いている様子を見たからか、特にいぶかしむこともなく依頼のリストに目を通し始めた。

 なるほど、そうすればセスがいつまでロッソにいるつもりなのか分かるもんな。


 ロッソはドワーフの街だが、この厩舎の管理人は50代くらいのヒューマの男性だった。


「ひとまず2週間、ということで預かっている」


 つまり2週間は確定でロッソにいるということか。

 リストを机の上に置いているので何が書かれているのか私からでも見ることができる。先ほどの宿といい、これといい、プライバシーも何もあったものではない。


「あれ、預けに来たのは昨日……?」


 リストには、昨日の夕方くらいの日付と時間が記載されている。リンクの前でセスと別れてから3日は経っているのに、空白の2日間はどうしていたのだろう。


「おそらく、あの場所で君を待っていたのではないかな」


 私の疑問が聞こえたかのようにヘルムートが言った。


「2日間も……?」


 リンクから出てきたあの場所の近くには川もあった。食料もカデムに積んである。確かにあそこで待つことは可能だったことだろう。

 しかしだからと言ってあの場所で2日間も待っていたというのだろうか。

 そんなに、私を待っていてくれたのだろうか。


「もしセスが1人でカデムを引き取りに来たら、シエルという名を出してここに来るように伝えてほしい」


 ヘルムートのその言葉で思考が中断され、現実へと引き戻される。

 ヘルムートが宿の名前や部屋が書かれた紙とチップを管理人に手渡していた。

 チップがあったからなのか管理人も快く承諾してくれて、セスの名前が書かれた欄に"シエル"と書き足した。


 その後は、いつセスと合流できるかもわからないので服を何着か買うことにした。

 ヘルムートがお金を出してくれると言ってくれたのだが、宿の代金も支払ってくれているのでローブを売ってお金を作り、それで服を買った。

 あの状態のローブでも金貨1枚で売れたのには驚いた。生地の価値が高いのだろう。


 夕食は外で食べた。私たちが泊まっている宿にセスがいないことは確実なので、宿に併設されている食堂で食べていてもセスに会えることはない。なるべく出歩いて探す時間を確保したい、というヘルムートの考えの元だ。

 今日はセスがロッソにいるということが分かっただけでもよかった。

 ルブラで失った神力ももう完全に戻ったし、久しぶりに食事がおいしいと思えた。

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