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第20話 届け物

 明日にはカルナを立つガルガッタと最後の夕食を共にした。


「ガルガッタさん、本当にお世話になりました」


「いいってことよ! お前さんがいてくれたおかげで道中もここでも退屈せずにすんだわい」


 いつものように豪快に笑う。


 ガルガッタは現在200歳くらいらしい。ドワーフの寿命は300年程と聞いているので、ヒューマで言ったら50代くらいか。

 エルフは20代中ごろで体の成長が止まるが、ドワーフはそうではないらしい。年相応に見える。


 ガルガッタには長く生きてきた経験からいろいろな話を聞かせてもらえた。ほとんどはドワーフのことだったが、冒険者をしていた頃の武勇伝などこれからの旅が楽しみになるような内容もあった。いつか私も冒険者として語れる内容を持って、ガルガッタに会いに行きたい。

 お互いに元気で、また会おうと別れを惜しみつつ、ルワノフでの居住地が記載された紙を受け取り、宿へと戻った。


 明日からどうしよう。さすがに1ヶ月何もしないというわけにもいかない。




 というわけでまた1ヶ月契約の小料理屋の厨房依頼を受けた。

 私は異世界に来て一体何をしているのだろう。本格的に料理人修行をしている気分だ。


 今回は1ヶ月契約で宿を借りているし、そもそも小料理屋も宿を併設していないので通勤だ。宿から30分ほど歩くが、通えない距離ではない。

 調理はもうあらかたできるので、即戦力として働くことができている。冒険者を目指していると言ったら驚かれたくらいだ。

 ギルドの依頼は多岐たきに渡るので、皆が冒険者とは限らずこういう街依頼をメインに受ける人も多いことから、私もそうなのだと思われたらしい。


 料理人生活3週間目の終わり、オーナーから荷物を知り合いの元に届けてほしいと頼まれた。


 その場所は、カルナ南西の城壁近くにあった。ここまで来るのに2時間くらい歩いただろうか。もう日もだいぶ落ちて辺りは薄暗い。

 この辺は店も少なく、居住区になっているのだろう。時間も相まって人通りもほとんどない。


 オーナーの知り合いの家を訪ねると、40代くらいの男性が出てきた。名をヒューバート・バルミンド。その顔に覚えがないので店には来たことがない人だと思う。


「ご苦労様。遅い時間に申し訳ないね。あいつも人使いが荒いみたいで。遠かっただろう」


 その男性はにこやかに迎え入れてくれた。


「大丈夫です。これが預かったものです」


「あぁ、どうも」


「では、失礼します」


「ちょっと待って」


 荷物を手渡して帰ろうと思ったら引き留められた。なんだろう。


「この辺りは治安もあまりよくないから暗い道を通る時はちゃんと道を照らして歩かないと危ない。光の触媒をあげよう」


 触媒。それはヒューマが術を使う上でかかせない、魔法のような石だ。いや、魔法か。

 触媒と一口に言ってもいろいろと種類はあるのだが、光の触媒は石に神力や魔力を流すことで光り、周りを照らしてくれる。前世でいう電気と同等の役割を持っているのだ。

 この場合は、さながら懐中電灯といったところか。


 ちなみに、水や火の触媒もある。その名の通り、神力や魔力を通すと水や火が出るものだ。


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」


 確かにこの辺りは路地裏と呼ばれるような道も多く夜道を1人で歩くには危ない。

 家から漏れる光を頼りにしようと思っていたけれど、忠告通りちゃんと自分の周りを照らして帰った方がよさそうだ。


「気を付けて帰るんだよ」


「お気遣い感謝します」


 来た道を引き返す。

 今はまだ家からの光がそこかしこから漏れ出ているので先が見えないほど暗くはない。本当に真っ暗になってしまう前に人通りが多いところまで出たい。


 30分ほど歩いただろうか。ここからは時計が見えないので正確には分からないのだけれど、先ほどよりも少し暗くなってきた。まだ見えないという程ではないが、念のためそろそろ自分の周辺を照らそう。


 そう思って先ほどもらった触媒に神力を流した。


「っ!?」


 しかし周りが淡く照らし出されたその瞬間、突然後ろから誰かに羽交い絞めにされた。

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