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第19話 治癒術師と医術師

「1ヶ月ここで過ごすなら1ヶ月契約の宿をとったほうがいいぞ。その方が安く済む。いいところを教えてやろう」


 依頼を受けたことを報告すると、ガルガッタがそう申し出てくれた。


「ありがとうございます。お願いします」


 前世でいうアパートみたいな感じかな。そういう契約もできるのはありがたい。


 その宿はギルドからほど近い場所にあった。宿の隣には風呂屋がある。なるほど、この世界にも銭湯があるようだ。

 宿リン・デュール。見た目は他の宿屋と変わらない。料金形態が月単位なだけで、中もきっと普通の宿と同じような感じなのだろう。


 その後、おいしくて安い食事処、日用品店、武器・防具店、保存食や食材が売っているスーパーみたいな店など色々と教えてくれた。

 なにせ広い街なので歩くのにも時間がかかり、店を見てまわるだけで1日が終わる。と言っても、ほとんどが南ギルドの周辺なので、この街全体を見てまわるとなると何日かかるのだろう。


 次の日、ガルガッタは南ギルドに近い場所にある診療所に案内してくれた。

 診療所と聞くと病院のようなところを想像すると思うが、その通り病院である。


 魔法が存在するこのファンタジー世界で病院とは、と思うかもしれない。というか、私は思った。

 怪我や病気なんて回復魔法でパッと治せるだろう、なんて安易な考えでもいた。


 確かに、この世界に回復魔法は存在する。


 しかしその適正を持つものは非常に少ない。

 それは治癒術と呼ばれるもので、本来天族が得意としており、地族で適性を持っているのは神属性のヒューマのほんの一握りだけだ。加えて、ヒューマが治癒術を使うには相当の神力消費が必要になるので、ミトスでは驚くほど医学が発達している。

 さすがにレントゲンやCTみたいな機械的なものはないが、注射も点滴も普通にあるし、薬の種類も豊富だ。

 医療器具の加工技術はさすがに劣るようで、注射は前世のものに比べて針が太く痛みを強く感じるが、ファンタジー世界にしては違和感を覚えるほど現代の医学に近い部分がある。


 エルフの里にも医者がいた。

 ルザリーという名の女医師で、父との戦闘訓練で怪我をした私の手当てをよくしてくれていた。

 サバサバとした男勝りな性格をしているせいで少し怖い印象を受けるが、実のところは面倒見のいい優しい人で、私はとても好きだった。


 ちなみにこの世界では治癒術が使える術師のことを治癒術師と呼び、医者のことを医術師と呼ぶ。


 よって、ミトスの診療所は2種類存在する。

 1つは医術師の診療所。もう1つは治癒術師がやっている、術で何でも治しちゃう系の診療所だ。

 そう聞くと、わざわざ医術師の診療所に行かなくても治癒術師がやっている方の診療所に行けばいいのでは、と思うかもしれないが、前述した通り治癒術を使える人間は少なく、なおかつ神力消費も激しいので、治癒術師の診療はびっくりするほどの高額請求をされるという。


 なのでミトスでは、通常は医術師の診療所に行き、命に係わるような怪我や病気にかかった場合には治癒術の診療所に行く、というのが一般的だ。

 確かに、命に代わるものはないのだから、死ぬかもしれないとなれば高額であろうとも治癒術師のところに行くしかない。ちゃんと住み分けができているということなのだろう。


 前世でやっていたゲームではどれもこれも大体回復魔法でパッと治せてきたので、なぜこの部分だけこの世界はそうじゃないのかとはなはだ疑問だ。


 それだけ、命は重いということか。




 次に向かったのは城。この国の国王がいる場所であり、中枢だ。

 しかしガルガッタはドワーフだからベリシアの国政には詳しくない、ということでただ単に城を眺めて終わった。

 城はこの街の中心に位置し、その周りは富裕層の居住区となっている。中心に行くほど位の高い者が住んでいるというわけだ。


 この時点で昼をだいぶ過ぎていた。

 ここまで来るのにも時間がかかったので帰るのにも時間がかかる。適当に食料を買い出したりしつつ、軽い昼食を食べてギルド周辺まで戻ってきたときには日が暮れてしまっていた。

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