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第187話 カーダ・1

 結局、たいした睡眠も取らずに私たちは森の手前まで来た。

 日が昇ってからもうずいぶん経つ。

 セスの神力残量は500くらいらしいが、それ以上に衰弱している。時間がない。

 それでもセスは、ぐったりと背もたれに預けていた体を起こし、剣を抜いた。


「セス……」


「行こう……」


「うん……」


 言いたいことは色々とあったけれど、ここで何かを言ったらフラグになりそうなのでやめた。






 森の中は鬱蒼うっそうとしていた。

 元々息苦しいルブラの空気が、より一層重くなった気がする。


「……はっ……はぁ……くっ……」


 セスが苦しそうに息を吐いた。

 気のせいではなく、実際にそうなのかもしれない。急がなければ。


「……っ!?」


 リッキーたちを走らせてすぐのことだった。

 視界の端に何かが映った。それと同時にその何かがこちらへ向かってくる。


「シエル!」


「分かってる!」


 私を狙って迫ってくるそれは、ゲオルグの言う通り蜘蛛だった。

 ただし、体長2mはありそうなくらい大きく、その足はカマキリの手みたいに鋭い刃のような形状をしていた。

 私はまだカーダが遠くにいる内に仕留めようと、そこそこの威力を込めて岩の槍を放った。


 だがそれは、カーダの体に当たった瞬間バラバラと崩れてしまい、ダメージを与えられた様子はない。

 こちらに迫るスピードも緩むことがない。


「……なっ……!?」


 まさかあんなに簡単に相殺されるとは思わず、動揺に手が止まる。

 その隙に目前まで迫ってきたカーダと私の間にセスが割り込んでカーダを一閃した。


「今のは相殺されたんじゃない……! 無効化だ! 違う元素で!」


 セスが絞り出すように叫びながらそのまま通りすぎて先行する。

 そして前方からも迫っていたカーダを同じように一閃した。

 どこにそんな力が残っていたというのか。この時のために温存していたのだろうか。セスの動きは今までぐったりしていた人のそれとはとても思えなかった。


「分かった!」


 だがそれを問うている余裕はない。再び横からカーダが襲いかかってくる。

 私はそのカーダに向かってかまいたちを放った。自分が思い描いたイメージで撃つが、何せ風は目に見えないので本当にその通りに具現できているのかあやふやで実はあまり得意じゃない。


 カーダは撃った自分にさえ分からないそれを素早い動作で避ける。だが、避けきれなかった足が私の放ったかまいたちによってスパッと切り落とされた。

 しかしさすが蜘蛛。足が多いので1本なくなったくらいでは影響がない。スピードも落とさず足の刃を振り上げて飛びかかってきた。


「……っ!!」


 至近距離で再びかまいたちを放った。

 避けきれなかったカーダの体はバラバラに引き裂かれ、紫色の体液が風に乗って後方へと散る。


 何から何まで気持ち悪い。






 カーダは群れを成して縄張りを作っているのか、常に数匹ずつ襲いかかってきて、それを片付けるとしばらく出てこない、というようなサイクルを繰り返した。

 なので群れを片付けたタイミングで休憩を取る。

 休憩と言っても座ってご飯を食べる、なんていうことはできない。せいぜい水分補給をする程度のものだ。


「はぁっ……はぁっ……はっ……」


 セスの息がだいぶ荒い。

 休憩の度に背もたれに体を預け辛そうにしているのに、いざライムを走らせるとそれが嘘のように毅然と剣を振るう。まるで最後の力を振り絞っているかのように。

 実際本当にそうなのではと思ってしまう。こうやってぐったりしているセスを見ていると、いつ力尽きてしまってもおかしくないように思える。

 だからこそセスには何もしてほしくないのに、現実はそう甘くなく、セスに頼っている部分も大きい。


 私がみんなを守ると豪語しておきながら情けない。

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