第182話 アルディナへの転移・1
私は少しでも早くミトスに帰れるよう、リッキーとライムを走らせリンクへの道を急いだ。
さすがにずっとカデムたちを走らせるわけにもいかないので、こまめに休憩は取っている。
その度にセスの神力残量を確認しつつ、ルブラに来てから初めての夜が訪れた。
セスはずっと荷台に横になっている。水分を取るだけで食事は取っていない。呼吸も荒く、本当に苦しそうだ。
少しでも楽にしてあげたくて、前にデッドラインの横穴でやったみたいに神力を放出したら無理やりやめさせられた。これをやったくらいじゃ大した影響はないからと言ってもセスは納得しなかったので、私は素直に諦めることにした。
「セス、ロッソってどこ?」
休憩の際に、女が言っていたことを思い出して私はセスに聞いた。
あのリンクの先がロッソ付近なのだと、そう言っていた。
「ロッソは……ルーマス大陸にある、ドワーフの街だ。ルワノフと同じだと思えばいい。エスタには……俺たちがいた場所からは近くなった」
「なるほど……」
なら逆に好都合だ。
アルセノには迷宮もあるしちょっと行ってみたかったが、それはまた別の機会にしよう。生きて帰れればいつだって行けるんだし。
ふと、ルブラの空を見上げる。
ルブラの夜は本当に暗く、2つの月が見えるだけだ。
どんよりとした赤紫色の空は、夕方だったわけでもなくあれが標準の空だったようだ。
ミトスでもルブラでも月は同じように見える。若干位置が高いような気もするか。アルディナでもそうなのかとセスに聞いたら、そうだという返事が返ってきた。
不思議だ。だとすると3界はどのような位置関係で存在しているのだろう。
「…………!」
そう考えを巡らせてある道具の存在を思い出した。
「ねぇ、セス。アルディナへの転移石を使ってセスだけアルディナに送ることはできない?」
セスが持っている転移石を使っての転移なら、私の神力で余裕を持ってアルディナまで転移できる。
ただ分からないのが使う者と転移する者を別にできるのかということ。リッキーとライムは魔獣だ。アルディナには連れていけない。だが、2頭をここに残して私とセスだけルブラから出る気もない。だからセスだけでもアルディナに送れないかと、私はセスに問いかけた。
「……君でも、さすがに2界を跨ぐほどの転移術を使うのは厳しいだろう……」
セスは体を起こしながら言った。
どんな体勢だろうがそれで状況が変わるわけではないので、私はそれをただ横目で眺めていた。
「2界を跨ぐ? どういうこと? ルブラから直接アルディナには行けないってこと?」
「アルディナとルブラを結ぶリンクは存在しない。だから3界はミトスを間に挟んで、縦並びに存在しているとされている。ミトスからルブラに来た時に落ちるような感覚がしただろう。ミトスからアルディナに行く時は、逆に上がるような感覚がする。縦並びというのは、正しい見解だと思う」
だからルブラからアルディナへの転移は厳しいということか。ミトスを飛び越さなければならないから。
「なるほど、それは分かった。じゃあ仕組みとして、術者と転移者を別にすることはできるの?」
「できるけど、君にはやらせないよ」
ピシャリと言われた。
「……やるなんて言ってないじゃん」
断定的な言い方に、ちょっとムッときて拗ねたような言い方をしてしまった。
「いいや。俺ができると言ったら……君はそれを試すつもりでいたんだろう」
「…………」
そんな私の態度を気にも留めず、セスは何でもお見通しと言わんばかりに言った。




