第17話 モンスター襲来・2
護衛の人たちは馬車を守るように前へと布陣し、接近を待っているようだ。私もニルヴァとカーラの邪魔にならないよう、その少し後方に控えた。
術師が一斉に術の準備に入る。そして自分ならここで術を放つ、というタイミングで護衛の術師たちが一斉に術を放った。
耳を劈くような断末魔と共に、5匹のうち3匹が撃ち落された。残り2匹。その内の1匹はニルヴァに照準を定めている。
スピードを緩めることなく向かってくるモンスターに、ニルヴァはその場から動くことなく身構えた。
鋭い嘴がニルヴァを刺し貫こうとする寸前で、ニルヴァは剣を横に振った。ただそれだけの動作に見えたが、モンスターの首はスッと胴体から離れた。と同時に、カーラと別の護衛の術師が放った術がモンスターを捉える。どう見てもオーバーキルだ。
しかしあんな簡単にモンスターの首を切り落とせるなんてどういうカラクリなんだろう。よほど切れ味が鋭い剣なのだろうか。そんなに特別な剣という風にも見えないのだけれども。
それにカーラやもう1人の術師も1匹先に迎撃してからニルヴァの援護に回ったというのに、あれほど早く次の術を放てるとは。さすがAランク以上の冒険者だ。
残りの1匹も問題なく他の人たちが倒したようだったが、正直ニルヴァとカーラを見ていたのでどうやったのかは見ていなかった。
だがそんなに強いモンスターには見えなかった。それは実際にそうなのか、それともニルヴァたちが強いからなのか。
今の感じなら自分でもきっと同じように迎撃はできただろうと思う。あれを討伐隊が撃ち漏らすというのはどういうことなのだろうか。
「あいつはワイバーンだな。スピードは速いが知能は低い。大したモンスターではない」
成り行きを見守っていた私に、ニルヴァが剣を鞘に納めながら言った。
「大したモンスターではないのに5匹も撃ち漏らされたんですか」
「デッドラインのワープポイントは岩肌に入った大きな亀裂だ。飛行系のモンスターはワープポイントから勢いよく飛び出て、手の届かないところに行ってしまうことも多い。そしてデッドラインから直線状のこの位置に人がいればまずそこを襲う」
「なるほど」
確かにあのスピードでワープポイントから飛び出されれば、討伐隊が手を出す前に姿が見えなくなるだろう。
偶然ここに人がいなかったら、あのワイバーンたちはどこへ行くのだろうか。シスタスやカルナに現れることはあるのだろうか?
ワイバーン以降襲ってくるモンスターはおらずそのまま歩き続け、だいぶ日が昇ったころに馬車は止まった。デッドラインの危険区域は通り過ぎたということなのだろう。
ガルガッタが私の側まで来て、私が護衛と一緒に歩き続けたことを豪快に笑い飛ばしている。適当に返事を返しつつ、久しぶりに腰を下ろして束の間の休憩を取った。
残りの3日は特に何の問題もなくただひたすらに道を歩いた。
ガルガッタもそうだが、ほとんど馬車には乗らなかったので、ニルヴァとカーラには相当呆れられた。
しかしそのおかげで道中ではガルガッタからドワーフについて色々と聞くことができた。
ドワーフは前世でのイメージ通り、鍛冶に長けている種族で戦闘能力も高い。地族の中でも腕力が飛びぬけているので、重量級の武器を主に扱う。魔力を持ってはいるがその扱いは苦手で、鉱山付近に住み、ドワーフ自ら鉱石を採掘しそれを加工して武器や防具などを作っている。
エスニール山脈は刃物の主な材料となるベルマ鋼という金属の採掘地なのだという。だからドワーフはエスニール山脈の麓に街を作ったんだろう。
ガルガッタはベリシアにある街の1つ、ファルシオスにいる知り合いに会いに行ってルワノフに帰る途中なのだそうだ。
普段はルワノフで武器・防具屋を経営しているらしく、ルワノフに来たらぜひ顔を出してくれと言ってくれた。
私は神術師なので剣や防具の類にはあまり縁はなさそうだけれども、もしそういうものが必要になったらぜひ行こう。




