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第176話 ファンク狩り

 なるべく早く森を抜けたい、と夜はあまり長く休まなかった。モンスターも出てくるので、どっちにしろゆっくり休めもしないのだが。


 再び朝がやってきた。明日の昼過ぎには森から抜けられるそうだ。

 森を抜けてしまえばレブルールまでは3日。早く街に行きたい。


「シエル、モンスターが出てきても君は1人で大丈夫そうだから、俺はちょっと森の奥に入ってファンクを狩ってくる」


 退避場所で休憩をしながらセスが言った。


「え、ファンクを?」


「森の奥にいるんだ。食材が現地調達できる時はしておくに越したことはない」


 ファンクは鹿のような動物で、肉は脂が少なく食べやすい。

 この世界では一般的に食されている肉の1つだ。


「なるほど……1人で行くの?」


「1人でというか、ライムと」


「ライムとね」


 そういう意味ではないのだが、まぁ、つまり私は置いていかれるようだ。

 森の奥に入るのなら、確かに馬車では行けない。それは分かるのだが、こんな場所でわざわざ別れてまでファンクを狩りに行かなくてもいいと思うのに。


 正直に言うと、不安だ。何かあったらどうしよう。


 そんな私の心中を知ってか知らずか、セスは荷台から弓と矢を取り出した。これは、野盗が所持していたのを戦利品として持ってきたものだ。何でも、殺した相手の荷物は自由に持って行ってもいいというのがこの世界のルールらしい。

 それじゃどちらが野盗か分からない、と呟いたら、自分達がやらなくても他の者がやるだけなのだから気にするだけ損だ、と言われた。

 この世界で悩まずに生きていけるだけの神経がほしい。


 そんなこんなでセスは弓矢を持ち、ライムに乗って森の奥へと消えていった。


「はぁ、大丈夫かなぁ……」


 出てきたモンスターを倒しながら私は独り言を呟いた。


 今のところ問題はない。モンスターもちゃんと対処できているし、馬車に破損等も見当たらない。では一体何が不安なのかと言うと、セスが私とリッキーに進んでいていいと言ったことなのである。

 そんなことをして私たちがどこにいるか分かるのかと聞いたら、道に出れば車輪の跡やリッキーの足跡でわかるから大丈夫、とのことらしい。

 ここに来て誰ともすれ違っていないとは言え、セスがいない間にそういうことがあれば私たちの足跡が消えるかもしれない。最終的には森の外に出ればいいだけだからそこで落ち合うことはできるのだろうけれど、それでもちゃんと戻ってきてくれるのだろうかと不安だった。


 こんな風に1人で森の中を進むなんて初めてだ。

 正確にはリッキーもいるが、リッキーは私の呟きに振り向いて心配そうな顔を見せてくれるものの、言葉を発することはない。普段そんなに会話が弾んでいるわけでもないが、話し相手がいなくなっただけでも寂しさを感じる。


 セスがライムと共に森の奥に入ってから体感的に2時間ほど過ぎた頃、不意にリッキーが喉を鳴らして止まった。

 こちらを見て何かを訴えるような顔をしている。


「リッキー?」


 馬車を降りてリッキーの側へと寄る。全身の様子を見てみたが、怪我をしているというわけでもなさそうだ。


「どうしたの?」


 顔を撫でてやると、リッキーは森の奥の方に顔を向けた。

 もしかして、セスとライムが近くにいるのだろうか。


「セスたちが帰ってきたの?」


 喜びを表して問いかけてみたが、リッキーは森の奥から視線を逸らさず、何かを警戒するように喉を鳴らしている。

 どうにもセスとライムが帰ってきた、という感じではなさそうだ。


「なにか、いるの?」


 そう口に出した瞬間、手前の木の陰から音もなく何かが出てきた。

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