第15話 遠征依頼
「なんですか? そのベリシア騎士団の遠征依頼って」
「あそこの山脈わかるか? エスニール山脈」
「エスニール山脈は分かります」
エスニール山脈。この山脈のことは以前父から聞いたことがある。
レガンテ大陸の東に位置し、なおかつ北から南まで縦断している広大な山々だ。
エルフの里はこのエスニール山脈の麓の森にある。
「シスタスとカルナのちょうど間くらいの位置に、デッドラインと呼ばれる場所が存在する。そこにルブラと通ずるワープポイントがあるんだ」
「ルブラへのワープポイント……そこからルブラに行けるということですか?」
「まぁ……そうだな。ルブラへと繋がるワープポイントはミトスには数多くあるが、ワープ先がランダムなものもあるし、必ず同じ場所へ出るものもある。一方通行のものもあれば、相互通行のものもある。エスニール山脈に存在するワープポイントは相互通行で必ず同じ場所に出るタイプのものだが、ルブラ側がモンスターの巣窟でな。向こうからどんどんモンスターが出てきちまう。そこからルブラに行くことは現実的じゃないな」
そんなに簡単にルブラと繋がっている場所があるとは思っていなかった。もっと門みたいなのとか魔方陣みたいなのがあってそこから行くのかと。
「で、そのデッドラインに湧き続けるモンスターを駆除するための依頼が、ベリシア騎士団の遠征依頼だ。デッドラインの麓に駐屯地があり、そこに3か月住み込みシフト制で駆除にあたる。それをこなせば10000ポイント。対象はDランク以上だ」
「3か月で10000ポイント!?」
それをやればDからCまでが1回で終わる。3か月ということは、目安の半分の期間だ。
いや、でもおいしすぎる気がする。こういう依頼には大体何か裏がある。
「そんなにもらえるなんて、よっぽど危険ってことですか?」
「まぁ、そうだな。1回の募集人数は30人ほどだが、大体数人の死者は出る。しかしポイントが高いのと騎士見習いへの登用もあるからな、人気だぞ」
やはり相当危険なもののようだ。そうじゃなければ3か月で10000ポイントなんてもらえないか。
「絶対全員が騎士見習いへ登用されるんですか?」
手っ取り早くCになるにはちょうどいい依頼だとは思うけれど、ベリシアの騎士になるつもりはない。それが強制的なものならば、私には残念ながら依頼を受けることができない。
「希望者だけだぞ。単純にポイントがほしいだけのやつもいるしな」
「なるほど。それなら考えてみようかな」
死者も出るほどの依頼だからなぁ。危険なのは承知なんだけど、そんなこと言ってたら冒険者としてやっていけない。
「腕に自信があるんだな!」
そう笑うと、ガルガッタは立ち上がり火の側へと歩いて行った。肉でも焼いていたのだろう。
すぐに肉を片手に戻ってきて私の横へと腰を下ろした。いい匂いがする。
「きっとそこで死ぬようなら冒険者としてやっていっても同じかなって」
Dランク以上が対象の依頼だ。ここで死ぬようなら普通の依頼でだってきっと死ぬだろう。
「戦いに身を投じるだけが冒険者じゃないがな! まぁ、やってみるのもいいだろうて」
なんだか深い言葉だ。戦いに身を投じるだけが冒険者じゃない。じゃあ一体それはどんな冒険者だというのだろう。いつか分かる日がくるんだろうか。
その後は大した話もせずに、2人で黙々と昼食を食べた。
出発の時間が来たので馬車に戻ろうとしたのだが、なぜかガルガッタは乗る気配を見せなかった。
「戻らないんですか?」
「なに、あの中は窮屈だからの。ちょっと歩くわい」
そんな選択肢があるというのか。それなら私もそうしたい。ただ座っているだけだと体が痛くなってしまいそうだ。
「僕も一緒に歩いていいですか?」
「あぁ、構わんて」
「おい、あんたら歩くのは勝手だが何かあっても責任は取らないぞ。俺たちは馬車は守るがそこから勝手に出たやつは管轄外だ」
私たちの行動を見て、馬車を護衛している1人が声をかけてきた。




