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第13話 別れ

 翌朝、父はすぐ発つというので、門まで見送りに行った。


「父さん、ありがとうございました」


「シエル、お前は聡明そうめいだ。子供の頃からわがままも言わず、こちらの言いつけをきちんと守ってきた。子供らしくないと、俺と母さんはよく話していたものだが……」


 別れ際、脈絡もなく告げられた父の言葉に、心臓が大きく跳ねた。


「そんなお前にあの里は退屈だったことだろう。これからは自由に生きるといい。いろいろな人と出会って、いろいろなものを見て、たくさんのことを学べ」


 一瞬、今までの自分の言動から、転生者に繋がる何かが出て来るのかと思った。

 この世界に他の転生者がいるのかいないのか、判断できるだけの材料は今の所ない。

 転生者がこの世界にとってどういう意味を持つのか分かるまでは、慎重にいかないと。


「……これで最後みたいな言い方はやめてください」


「別に、そんなつもりで言ったわけじゃない」


 私の言葉に父は困ったように笑って、私の頭をポンポンと叩いた。


「何かあったらいつでも帰ってくればいい。あそこはお前の家なんだから」


「……はい、ありがとうございます」


 しかし杞憂きゆうだったようだ。

 単純に、子を想っての発言だった。


 私が前世の記憶を持っていると知ったら、それでも父は同じことを言ってくれるのだろうか。


「1人のうちは街への移動は必ず定期便を使って行け。ギルドで聞けば分かるから」


「分かりました」


「……死ぬなよ」


「…………」


 少し前なら、僕の実力は知ってるでしょう、なんて返したかもしれない。

 だが、想像以上にこの世界の人の命はあっさり終わることを知った。


 父の言葉が冗談ではないことを、知ってしまった。


「……はい」


 父の目を真っ直ぐに見て頷くと、父は寂しそうに笑って去って行った。




 父が帰ってしまってから数日、引き続き街依頼をこなしていた私だが、ついに1ヶ月契約の依頼書を見つけた。


 依頼主:宿 フィオーネ

     (オーナー:ビル・オルダー) 

 内容:食堂スタッフ(まかない付)

 形態:30日契約(内休日5日)

    住み込みの場合の宿代:銀貨2枚/日

 ランク:Eランク以上

 報酬:白金貨2枚

 報酬ポイント:1000


 料理は前世でもやってきたことだし、街依頼でも何度かやったので、私はこれをやってみることにした。


 仕事内容的には調理や接客、その時の状況によって様々だ。

 引きこもりが長かったお陰で接客は少し辛いが、調理については問題なくできている。


 ここのオーナーは長期契約をギルドに依頼して、駆け出しの冒険者の支援をしているらしい。

 その言葉通り、旅で狩った動物の調理法や保存法などを合間で色々と教えてくれたり、スパイスとして使える野草の見分け方などを教えてくれた。


 そんなこんなで仕事にもだいぶ慣れてきたころに、1ヶ月の契約が終了した。

 実は日数を数えておらず、1日の仕事が終わったその日の夜にいきなり達成カードを渡されたので非常に驚いた。


 EランクからDランクに上がるために必要なポイントは2000。

 この時点で若干足りなかったので追加で働かせてもらい、無事にDランクへと上がった。

 次のCランクまでの必要ポイントは10000。確か目安としては半年だったか。


 ちなみに、冒険者証に記載されているポイントの部分は、手書きで受付の人が直している。

 それだといくらでも不正ができてしまうのでは、と思って話を聞いてみると、特殊なインクを使っていて普通には消すことができないんだと教えてくれた。よくできている。


 カルナへの定期便は、2日後の出発で料金は金貨5枚、到着まで7日間とのことだった。

 移動中の食事は自分で用意しなければならないので、その2日間で買いに行かなければ、と思ったのだが、なんとフィオーネのオーナーが用意してくれた。

 自家製の干し肉だ。しかも飽きないように数種類の肉が用意されており、計10日分くらいはある。ありがたい。


 残りの日数を自由に過ごしてついにカルナへ立つ日が来た。

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