第12話 世界地図
それからはあまり話もせず街へと戻ってきた。
ギルドに角を納品し、報酬とポイントをもらう。
これで750ポイント。だがそんなこと、どうでもよかった。
カデムを返してくる、という父と別れ、先に宿に戻ってきた私はそのままベッドに突っ伏した。
それからしばらくして父も帰って来たが、何も言わずにすぐ部屋を出ていってしまった。
私に気を遣ってくれたのだろう。
何もする気になれず、そのまま夜まで過ごしてから帰ってきた父と夕食を共にした。
会話がない。
おまけに言えば食欲もない。昼も食べていないのだが、やはりショックが大きかったのか、精神的にきているようだ。
「もしお前が早くギルドランクを上げたいと思うのなら、長期契約の仕事を受けるのもいいと思うぞ」
気まずい、と思ったところに沈黙を破って父が話し始めた。
あの話とは違う話を振ることで、気持ちの整理をつけろと言っているのだろう。
確かにいつまでも悩み続けているわけにもいかないし、少し前を向かなければ。
「長期契約?」
「その契約の間は他の依頼を受けられないが、1ヶ月契約で1000ポイントくらいは入るはずだ」
「そんなものがあるんですか」
自分がEランクの掲示板を探していた限りでは見つけられなかった。
1ヶ月で1000ポイントなら物によるのかもしれないけど悪くない。
「まぁ、そう数は多くないけどな。見かけたらラッキーと思ってやってみるといい」
「はい、それはぜひやってみたいですね」
「俺はそろそろ里に帰ろうかと思う」
「あ……そう、ですか……」
帰る、という父の言葉に、一度は浮上したはずの気持ちが下がっていく。
できればもう少し一緒にいてほしかった。あんなことがあったから、なおさら。
しかしそれを口にすることはできなかった。
私が父の本当の子供であったなら言えたのかもしれないが、前世の記憶を持ち合わせているせいで、どうしても遠慮というものが出てきてしまう。
断られたらどうしよう、という不安も拭い切れない。
「お前はDランクに上がったらカルナに行くといい」
私の気持ちを知ってか知らずか、父は鞄から地図を取り出し、机の上に広げた。
あまり手を付けられていない食事が端に寄せられていく。
「カルナ?」
「まずシスタスはここだ。レガンテ大陸の南部に位置する、ベリシア国の都市だ。カルナはベリシアの首都で、シスタスから1週間ほどの場所にある」
この地図に載っている大陸は3つ。
1つは今父が説明したレガンテ大陸。私たちがいる場所だ。地図上では東に位置している大陸。
西に位置している大陸がルーマス大陸。大陸の中では最も面積が広い。
中央やや北に位置しているのがリビ大陸。他の2つの大陸から比べるとずいぶんと小さい。
レガンテ南部に位置するベリシア国はシスタス、首都カルナを含め5つほどの街が存在している。レガンテには4つの国があり、ベリシアは2番目に国土が広い国のようだ。
「カルナは首都だけあって依頼の数が多い。ランクCくらいまではカルナでやるのがいいだろう」
「分かりました。ではDになったらカルナに行ってみます」
「ああ。そこからは自由にするといい。ベリシアの北にはネリスとエルゴニア、それとドワーフの街ルワノフがある。ネリスとエルゴニアは小競り合いが続いているが、まぁ冒険者として行く分にはあまり関係ないだろう。さらにその北には大国アルセノがある。アルセノはこのレガンテ大陸で一番強大な国だ。行ってみるのもいいし、逆にルーマス大陸に行くのもいいかもしれない。ルーマスに渡るならネリスから行くか、アルセノから行くかのどちらかだな」
「リビ大陸へは?」
ルーマスは候補に出るのにリビが候補に出ないのはなぜなのかわからなくて聞いてみる。
単純に現在地から遠いからだろうか。
「リビはやめておいた方がいい。ここは東西2つの国しかないが、互いに争っていて危険だ。ネリスとエルゴニアの比ではない」
「なるほど」
どこの世界でも領地争いはあるものなんだな。
そんな紛争に巻き込まれるのはごめんなので、素直に父の言葉に従おう。




