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第103話 目的

 城周りの富裕層住区にリーゼロッテの家はあった。

 見るからにお金持ちの家、という感じの広い豪華な家だった。

 

「2人とも、ありがとうございました。もうこれで会うこともないのかもしれないと考えると、寂しくなりますね」


「そうだね、またどこかで会えるといいね」


「元気で、リーゼロッテ。また」


 あえて"また"と言って私たちは別れた。

 3班のみんなにまたどこかで会えるといい。本当にそう思う。


 リーゼロッテが家の中に入ったのを見届けて、来た道を今度はセスと2人で戻る。

 別に誰か家の者が出てきたわけではなかったので、酔ったガヴェインが送ってきたとしても、セスが1人で送ってきたとしても何の問題もなかったのでは、と思う。


「ねぇ、セス。本当に僕と一緒にアルセノに行ってくれるの? 何か旅の目的があるんじゃないの?」


 後でする、と言っていた話を今ちょうど2人きりなので切り出した。

 帰りにも1時間半かかるのでちょうどいい。


「どうして俺に旅の目的があると思うの?」


 セスは私の質問に質問で返す。


 そうか。そうなるのか。

 確かセスはあの時、ニコラの気ままな旅なのかという質問にそんなものと答えた。

 それだけの情報だったら目的があるのではないか? という質問自体が出てくるはずがないのだ。


「隊長に、聞いたから」


「……何を?」


「セスはその秘石を狙われることが多くてミトスで辛い思いをたくさんしたって。だから何か目的がなければミトスを旅する意味もないんじゃないのかなって思って」


「……なるほど。ヴィクトールはずいぶんと余計な話をしてくれたようだね」


 私の言葉を聞いて、呆れたようにセスが笑いながら言った。


 余計な話。セスにとってはそうなんだろうな。


「まぁ、確かに君の推測通り、目的はある。そうだな……話しておこうか」


 そう言ってここで一度言葉を切った。

 言葉を整理するかのように何かを考えている。

 私はこの辺に並ぶ富裕層の豪華な家並みを眺めながら次の言葉を待った。


「君はリュシュナ族についてどこまで知っているのかな」


「どこまで……。うーん、秘石を守るために天族には珍しく武術的な戦闘能力に長けた一族だって。後は不老ってことと、秘石が割れたり抉り取られたりすると死ぬってことと、その秘石を他種族が取り入れると不老になるってことかな」


「なるほど」


 これがどこまで聞いていることになるのか分からないけど、私はヴィクトールから聞いたことをそのまま答えた。


「リュシュナ族はアルディナの各地に拠点を構えていて、ギルドと同じようなことをしているんだ。正確には、ギルドの依頼を一族が受けて、それを上の人間が下の人間に割り振って強制的にやらせている。雑用から護衛、暗殺まで何でもやるけど、俺は今暗殺者として、一族の命令で裏切り者を追っている」


「暗殺者……裏切り者……」


 まるで、漫画やアニメの中の話のようだ。

 しかしそうか。だからセスは誰でも殺せるのか。


「もう、ミトスに来て50年になる。この広いミトスで人1人を探すなんて無理がありすぎて、俺は一生この目的を果たせないんじゃないかと思ってるんだが、命令が取り消されることもないから仕方がなく冒険者をやりながら追っている」


 50年……気が遠くなるような時間だ。そんな長い時間をセスは今までたくさんの人に裏切られながら過ごしてきたのか。

 それは誰も信じられなくなるよね……。


「その人を見つけたら殺すってことか」


「そうだね。アルディナへ連れて帰るという選択肢も一応はあるけど、恐らく殺すか逆に殺されるかのどちらかになるだろう。連れて帰ったところでどうせ処刑されるだろうし、生きたまま連れて帰れるとも思えない」


 それが当たり前かのようにセスは言う。

 殺すか殺されるか。そんなことを表情1つ変えずに淡々と言うセスを、私はやはり理解できないと思った。

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