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第102話 最後の晩餐・4

 ガヴェインは3年前に結婚して、1歳になったばかりの子供がいるらしい。ちなみに女の子で、その子がいかに可愛いかを延々と話していた。

 あまりの溺愛ぶりに今までのガヴェインのイメージが崩れ若干引いたが、そんな小さい子がいるのに3か月も遠征に出されていたのは気の毒になる。今日だって本当は早く家に帰りたいのではなかろうか。


 そのガヴェインが、自分も親の立場だからパーシヴァルの親の気持ちを思うとやり切れない、自分の詰めの甘さのせいで、と突然泣き出した。

 泣くと言っても号泣というわけではなく、こらえられなかった涙が頬を伝ったくらいの感じなのだが、あまりにも突然のことで場は一瞬で静まり返った。

 きっとその姿を私たちには見せなかっただけで、あの時もこうやって1人で悔やんでいたのだろう。


 普段屈強なガヴェインが見せた不意の涙に、私ももらい泣きしてしまった。私だけではない、アイゼンも、エレンも、ニコラも、リーゼロッテも泣いている。

 ベロベロに酔って自我を失ったベルナが、まるで小さい子にするようにエレンの頭を撫でたり涙を拭ったり抱きしめたりしている。母性あふれたその姿を見て私はさらに泣いた。

 エレンもそんなベルナに抱き付いて泣いている。

 みんなをただ静かに見つめていたセスの切なげな表情が印象的だった。


 しんみりさせてすまなかった、でもパーシヴァルをしのんで終わるのも3班らしいか、とガヴェインはここでこの宴会をしめた。

 ありがとう、元気でとみんなで言い合って3班は本当にこれで解散となった。

 とてもじゃないが1人で家まで帰れるとは思えないベルナは、エレンが抱いて寝ると部屋へ連れて行った。抱いて寝る。たぶん猫を抱いて寝るという意味合いなのだろうが、いやらしい響きに聞こえてしまうのはなぜだろう。


 完全に熟睡しているフィリオは私とニコラで何とか部屋へと運んだ。

 アイゼンは酔ってはいるけれど受け答えもしっかりできて問題なさそうなので1人で帰らせ、リーゼロッテはセスが送ることになった。

 最初はガヴェインが送って行くと言っていたのだが、酔っている男がオルコット家まで行くのも問題だということで却下になったらしい。


「ごめん、シエル、君も来てくれないか。さすがに俺が1人でリーゼロッテを送って行ったら問題になりそうだ」


 セスが言う。

 何がどう問題になるのか分からないけれど、別に異論もないので私は素直に頷いた。






 3人でカルナの街並みを歩く。

 今は21時過ぎ。名家の令嬢がこんな遅くに帰って大丈夫なのだろうか。


「ここから家までどれくらいなの?」


「1時間半くらいでしょうか……遠くてすみません」


 私の質問に申し訳なさそうにリーゼロッテは答えた。


「それは全然いいんだけど結構遅くなっちゃうね」


「大丈夫です」


 そうは言っても今からだと23時近くにはなってしまいそうだ。

 というか、1時間半かけてここに来たのか。さぞ大変だったことだろう。


 メインの大通りを、ひたすら北上していく。大都市カルナだけあって、この時間でも街は明るく活気に包まれている。

 しかし元々口数が多い3人ではないので、ほぼ無言だ。完全に人選ミスのような気がしてならない。

 アイゼンがもし途中まで方向が一緒だったなら、待たせて一緒に行けばよかった。


「セス、あれだけ飲んでいたのに全然酔わないんですね。驚きました」


「アルコールは効かないんだ。アルディナにある一般的な毒もだけど、幼少期から毎日少しずつ体に入れて慣らしているから」


 沈黙を破るようなリーゼロッテの問いかけに当たり前のようにセスが答えた。

 それってあれか、忍者の修行みたいなやつか。


「だから俺には酒も普通の飲み物と変わらない。飲む意味もないから普段は飲まないんだけどね」


「なるほど、リュシュナ族とはそういう一族なんですね」


「あ、セスがリュシュナ族ってみんな知ってたんでしょ? 僕知らなかったよ。というか、聞きもしなかったんだけどさ」


 リーゼロッテから出たリュシュナという単語でそれを思い出した。


「全員が知ってるかは私も分かりませんよ。私も個人的にセスに聞いただけなので」


「まぁ、聞いてこなかったのはシエルだけだから他は全員知ってるね」


 リーゼロッテの言葉にセスが補足する。


 みんなちゃっかりそういう話してたんだな……。

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