第101話 最後の晩餐・3
待っていたガヴェインは、今までとは違いずいぶんとラフな格好をしていた。
「班長、早いですね」
「そりゃ、主催者だからな」
私の言葉に苦い笑みを浮かべてガヴェインが答えた。
「考えてみればリーゼロッテの家からは結構遠かったかもしれんな。オルコット家の分家はいくつもあるだろうが、だからと言ってさすがにこの辺にあるということはないだろうし」
ここは討伐隊が集合した噴水の近くだ。南のギルドの近くにある。
「帰り大丈夫かな?」
今から食事をするのだから帰りは暗い夜道を歩いて帰らなければならない。ここから家までどれくらいかかるのか分からないが、ベルナならともかく、さすがにリーゼロッテ1人だと危なそうだ。
「誰かが送っていけばいいだろう」
「そうだね」
提案するセスの言葉に同意しつつも、できれば自分が1人で行く選択肢は除外したい。帰り道が1人とか怖すぎる。
全員が揃う前にガヴェインは料理を注文し始めた。ちょうど揃った時にすぐ料理に手を付けられるようにしたいのだろう。
上からフィリオたちも下りてきてベルナとアイゼンも来たので、後はリーゼロッテを待つだけだ。
「お待たせしました」
18時ぎりぎりにリーゼロッテが現れた。
ちょうど料理も並び終えて、いいタイミングだ。
「酒を飲むのは誰だ?」
「はい!」
ガヴェインの問いかけに手を上げたのはアイゼンとベルナだ。
ヒューマたちは誰も手を上げていない。
「お前たち飲まないのか? まだ全員17歳なのか?」
「18歳です。任務中に誕生日を迎えました」
ガヴェインの質問にフィリオが答えた。
そういう言い方をするということは、ヒューマは18歳で成人ということだろうか。
「僕はまだ17歳なので飲めないです」
「私も」
「私もです」
ニコラとエレン、リーゼロッテはまだ17歳のようだ。
成人しなければお酒が飲めない、というのはこの世界でも共通のことらしい。
正直17歳も18歳も変わらないんじゃ、と思うけれどずいぶんと律儀だな。これから騎士団に入る手前、ガヴェインの前で不正はできないということなのかな。
「じゃあフィリオ、お前は飲むだろ?」
「どうしようかな……。じゃあ、少しだけいただきます」
フィリオにとってこれが初めてのお酒か。そりゃ悩むだろうな。
「シエルお前は? もう成人してるんだよな?」
「してますけどいいです。僕お酒飲みすぎると死ぬんで」
「死ぬって……」
ガヴェインの問いかけに即答する。
あの暗い森は日本で言う三途の川的な場所に違いない。2回も奇跡の生還を果たしたのだからきっと次はもう無理だ。
「少しなら飲めるってことだろ? 飲もうぜシエル」
アイゼンが言う。
そう言われちゃうと断りにくい……。
「じゃあ、少しだけ」
って言ったのにコップに並々と注がれた。1杯くらいならいいか……。
「セス、お前も飲むよな」
「まぁ、じゃあ、せっかくだからいただこうか」
ガヴェインの質問に、どっちでもいい風な言い方でセスは答えた。
お酒を飲まないヒューマたちはフルーツジュースだ。正直そっちのほうがおいしそう。
「じゃあ任務終了を祝って、乾杯!」
「乾杯!!」
こうして最後の晩餐は幕を開いた。
パーシヴァルの件で躊躇われるかと思った宴は、思いの外盛り上がっていた。
私は1杯だけでお酒を切り上げ、そこからはエレンたちと同じジュースに切り替えたので酔いというほどの酔いは感じていない。多少フワフワとした感覚がするくらいか。
アイゼンとガヴェインがお酒の効果でそれはもう饒舌になって場を盛り上げているのだが、ベルナは人が変わったように隣に座っているエレンにベタベタと抱き付いたりしている。酔うとやっかいなタイプだ、あれ。
エレンも「ちょっと離れてよ」とか口では言ってるけど、まんざらでもない様子でフワフワとした耳や尻尾をモフモフしている。うらやましい。
フィリオはガヴェインに飲まされるだけ飲まされて寝てしまっている。
セスも同じくガヴェインに結構飲まされているのだが、飲む前と全く何も変わっていない。話に相槌を打ちながら水を飲むようにお酒を飲んでいる。
アイゼンやガヴェインの話に付き合わされているシラフのニューマたちがだいぶ引き気味だ。
分かる。
私もそう。




