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おはようはザラメ味  作者: ぺぺ
1/2

1.

この物語は相模様とSNSで話してる時に作られました。設定や世界観は相模様との共作になります。後日、相模様が同じ設定・世界観で執筆して下さる予定です。

また、作中では人間の思考特性が魔法の効果に深く結びついている設定になっていますが、素人考えで書いておりますので実際の人間の思考特性とは異なる事が書かれている可能性があります。このお話の中ではそうなんだ、くらいのゆるさで読んでいただけると助かります。

大体週一更新、3話完結です。


1.


『おはよう』はザラメの味がする。

なんて、そんなこと言うとみんな変な顔をするから、めったに言わないけれど。

でも、確かにするんだ。

『おはよう』を聞くだけで喋るだけで、何だったら今も、私の舌は甘い幸福を思い出す。


駅のホームで乗るはずだった電車を見送りながら、私はそんな事を考えていた。

朝起きたらもう家を出る時間で、慌てて走ってきたけど混雑を極める満員電車を見たら途端に面倒くさくなってしまったのだ。

朝のラッシュで混雑した構内は、うなだれた女子高生なんか気に留める人はいない。

朝ご飯、食べてないからお腹すいたなあ。

少し待っていればすぐ次の電車がくるってわかっていたけれど、足は自然と売店を目指す。

『おはよう』の言葉だけじゃ、味は感じてもお腹は膨れない。

かえって空腹が増すだけ。

ああ、牛丼屋さんか安いファミレスに行きたいなあ。

むしろここにドーン!とキッチンが現れてくれてもいい。

醤油味の何かを作るんだ。

食い意地のはった事を考えながら、人の波をかきわけて進む。

すると突然、駅のスピーカーが割れんばかりの異音を放ち、ハウリングを起こしたように唸りだした。

誰もが耳を押さえて困惑する中を、男の間の抜けた歌声が響く。


『てれれってってってって!てれれってってってて!』

「は?」

「何コレ」

「どういう事??」

「ふざけてんのか!!」


殺気立った人たちが次々に声を荒げた。

今から仕事に行かなくてはいけないのに、朝っぱらからのんきな歌声を聞かされたんだから苛立も倍増らしい。

今のメロディは確か、TVのクッキング番組の曲。

駅員さんもたまにはふざけたくなることがあるんだろうなあ。お仕事お疲れ様です。

びっくりしたけれど怒る程の事でもないなと考えて、私は止まっていた足を一歩踏み出した。

ぐにゃり、私の体重を受けたアスファルトが低反発枕みたいに沈んだ。


「えっえっえ!やだ!ちょっと待って!」


体勢を立て直そうにも片足が踝まで埋まった状態では踏ん張りがきかず、底なし沼にハマったかのように引き抜くこともできない。

偶然、対面にいたベビーカーを押した母娘が、驚いた顔でこちらを見た。

母親の方が助けてくれようとしたんだろう、私に向かって手を伸ばす。

でも間に合わない。

再び、スピーカーから男の歌声。


『てれれってってってってってってってってー!』


歌声に反応するように穴が広がって、私は真っ暗闇に飲み込まれていった。








固く閉じた瞼の裏が、ふいに光を感じた。

恐る恐る目を開ければ、そこはもう、あの暗闇ではなくなっていた。

何度か瞬きして目を慣らすと段々自分のいる場所が見えてくる。

そこはテラスに面した明るい室内で、金ピカの豪華な調度品、高い天井からは大きなシャンデリアがぶら下がるヨーロッパのお城の一室みたいな場所だった。

毛足の長い絨毯から頬を上げ横坐りになるとゆっくり辺りを見回す。

私の知ってる日本じゃないみたい。

歩きながら寝落ちしちゃったのかな。

だって目の前にいる3人の男の人は、どう見ても東洋人の顔立ちじゃないもの。


三人の男のうち、一番手前にいる一人はローブを纏った三十代くらいの男の人だ。

茶色の髪を肩につくかつかないかくらいでザンバラに伸ばしてる。

シャンとすればカッコいいんだろうけど、人の良さそうな顔立ちがどことなく頼りない。


その人からやや遠くに、並んで立つ二人の影。

隣の少年を守るように立つ男の人は鋭い目付きで私を睨んでいる。

外国の警察みたいに真っ黒な洋服に黒目、黒髪で見るからに蒸し暑そう。

守られている少年は、黒づくめの男の後ろからひょっこり顔を出してこちらを見ていた。

同い年くらいかな、外国の人の年齢は検討がつかないけど、金髪碧眼の絵に描いたような王子様フェイスだ。

どうしよう、英語なんて喋れないんだけどな私。

沈黙してお互いの出方を伺っている私たちだったが、ややして黒づくめの男の人が口を開いた。


「殿下、お下がりください。ロキ、どういう事だこれは」

「嘘だ、そんな、こんな事って……!」


黒づくめの男の人が詰問すると、ロキと呼ばれた男の人は、蒼白になって頭を抱えた。

殿下と呼ばれた王子様フェイスが、彼を励ます。


「しっかりしなよロキ。今、君の手で初めて大魔法・異世界召喚が成されたのかもしれないんだから」

「異世界召喚??」


聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。

異世界召喚て、私から見たら貴方達の方が異世界人ぽいんですけど。


「ですが殿下、あれは古の大賢者のみが成しえる魔法で、僕のような者が成功する筈がないんです」

「目の前に魔法の結果が出ていてもそう言うのかい?」


金髪碧眼は本当に王子様なんだろうか。

二人の歳上の男性から敬意を持って扱われているので、きっとやんごとない人なんだろうな。

目があったのでとりあえず会釈しておく。


「まだ異世界人とは決まった訳では……き、君、君の名前は?歳は?えっと出身国は?」


ロキさんが膝をついて私に尋ねた。


「高原優佳、16歳、日本人です。あの、私、さっきで駅にいたはずで……これは夢ですか?」

「確定だな」

「うわああぁあぁ16歳の女の子に!僕は何て事を!!!」


ロキさんは両手を床に叩きつけるみたいにひれ伏した。

だ、大丈夫?そんなに落ち込まないで。

私が立ち上がると武器を持っていない事がわかったのか、後の二人も警戒しながら近づいてくる。

珍獣を見るみたいな扱い、やめてほしいんだけど。


「ようこそ、異世界の友よ。ここはアルデバラン王国。私は第一王子シリウスです。倒れてる男はプロキオン、通称ロキ。貴女を招び出した男だ。もう一人は私の護衛のリゲル。貴女の来訪を歓迎します」

「はあ…」


あんまり嬉しくないことに、どうやらこれは夢じゃなくて現実みたいだ。

その証拠にずっと座り込んでた私の足が立ち上がった途端にじわじわ痛い。痺れてる。

自分の返事が不敬かなとは思ったものの、異世界に連れてこられて不安な状況で、王子様相手にご挨拶なんてどう返したらいいかわからない。


「異世界、ですか……」


こんな所に連れてこられて、どうしよう。

何かさせられるのかな。

私、本当に普通の女子高生なんだけど。

これからの自分に思いを馳せていると、ロキさんが勢いこんで言った。


「ユウカちゃん!心配しないでいいからね!君が帰る日まで僕が生活面をサポートするから!」

「え!いいんですか!?ありがとうございます!」


いきなり不安の八割が解消された!

喜びのあまり思わずロキさんの手を取ると、彼の眉がへにゃっと下がる。


「君、動じないね……」

「動じてますよ!いきなり吸い込まれて、めちゃくちゃびっくりしましたもん!」

「異世界に召喚されたのに、びっくりした程度で済ますあたり、恐ろしいほどのマイペースを感じるな」


黒づくめの騎士、リゲルさんがため息をついた。

三人の視線が、珍獣を見るものから呆れたものに変わる。

マイペースで楽天家とはよく言われるけど、男三人で囲んでそんな目で見なくてもいいじゃない!

珍獣扱いよりはマシだけど!

あー誰か助けてくんないかな……って、


「あーーーー!!!」

「ど、どうしたの!?」

「大変な事を思い出しました!ここに来たのは私一人ですか?」

「……すまない。君一人だけが招び出されたんだ」


ロキさんが再び項垂れた。

違うんだよロキさん!


「よかったぁ!」

「よかった?」

「私が召喚された時、助けてくれようとした女の人がいたんです。巻き込まなくて安心しました」


もし巻き込まれていたら、ベビーカーの赤ちゃんを母親から引き離すことになってしまっていた。

そんな事になってたら、流石に笑えない。


「へえ」

「ふむ」

「き、君って子は……!」


三人は何か納得したような顔をした。

ロキさんが改めて私の手を取り顔を覗き込んでくる。

彼の瞳には固い決意が宿っていた。


「必ず!必ず元の世界に帰してあげるからね!!」

「はあ……」

「なんでそこで生返事!?」


だって初めて召喚に成功したって言ってたのに、帰る方法がスムーズに見つかる気がしないんだもん。









「君の世界では魔法は一般的かい?」


私たちは豪勢な部屋から、中庭の木陰の下のテーブルに場所を移していた。

メイドさんが入れてくれた紅茶とマフィンを味わってると、ロキさんが質問してきた。

テーブルについているのは、シリウス様とロキさんと私。

リゲルさんは護衛だからか、殿下の少し後ろで控えている。


「一般的も何も、使える人なんて見た事ないですよ。私の世界では、魔法はおとぎ話の中のお話です。ここでは皆使えるんですか?」

「皆、という訳ではないけれどね。王宮に仕える者達は大半が何らかの魔法を持っているよ。出世するには強い魔法が欠かせないと言われるくらいだ。この国、いや、この大陸では魔法は重要な技術の一つだ」

「大変ですね」


バイトの面接とかでも聞かれるのかな。

ではあなたの得意な魔法を見せてください、なんて。


「やっぱり魔法使いの家系とかだと、強い魔法が使えるんですか」

「そういうケースもありますが、基本は個人の思考特性ですね」


王子様がわからない事をおっしゃった。

思考特性??

馬鹿にはできないって意味なら、私には使えないな。


「魔法は、原則一人に一つだけ。魔法の種類は行使する人間の思考に沿ったものになるんだ」


人の良さそうな魔術師は、咳払いをすると低い声で話を続けた。


「この世界で大切なことは一つ。脳だ。」


彼の長い指がこめかみを叩く。


「頭の良さは関係ない。思考のルーチン、パターンによってその人の得意魔法が変わってくる。例えば僕は思考が聴覚と強く結びついているタイプなんだ。僕が小説を読むと、登場人物のセリフは脳内で再現されるし、その場面にあった音楽が再生される。他の問題について考えている時も、楽譜に音符を並べてる感覚に近い」


人間、頭のいい・悪いはあっても思考の仕方なんて皆同じだと思ってた。

私は本を読む時に声が再現されたりしない。

文章は文章だから文章のまま読んでるって感じかな。

ただその文章に特定の言葉が含まれていると味を感じるんだけど。


「聴覚が強いと、異世界人を召喚できる魔法が使えちゃったりするんですか?」


私の質問に、ロキさんは目を泳がせた。


「……その、君を召喚したのは本当に偶然で、僕の魔法は元々は、異世界の歌を歌えるっていう他愛ないものだったんだけど…いつもより魔力の調子が良くて思いっきり歌ってたら召喚できちゃったんだ」

「魔法って効力めっちゃフワッとしてない?!」


ていうかなんで王宮で歌ってるの?と聞いたら、殿下がよく気晴らしに異世界の歌を聞きたがるらしい。

ロキさん、シリウス様のカナリアか何かか。

歌を忘れたら、後ろの山に捨てられるか、背戸の小藪に埋められるから気をつけて!


「魔法の方向性を決定づける思考特性は、大きく分類して四つに分かれるんだ。問題について考える時、言葉を並べて考える言語優位のテキストタイプ。脳内で発声するように討論する音楽タイプ。状況を思い浮かべる視覚が強い映像タイプ。そしてその他」

「そのほか?」

「おそらく魔法の効果は思考特性に関係があるんだろうと考えられてはいるんだけど、まだ研究が進んでいないんだ。僕は音楽タイプだけど、テキストタイプのように思考してる時に言葉だけが出て来る時もある。どちらの特性により近いかであって、完全にそれだけって訳じゃない。無理して言うならば、僕はテキストよりの音楽タイプって感じかな」


そう言ってロキさんは侍女の一人を手招きして呼んだ。


「彼女はカペラさん。映像タイプよりの思考特性を持っていて、彼女の魔法は、顔を見た人の嫌いなものがわかるというものだ」

「へぇ!すごいですね!」


お淑やかに礼をするカペラさんは、私より二つか三つ上のお姉さんだ。

動作に隙がなくてしっかり者だという事がわかる。

カペラさんが魔法を使えば、私が生のトマト嫌いっていうのもわかっちゃうんだろうか。

色んな人が生活する王宮なら、重宝されそうな魔法だ。

興味が湧いて、隣の王子様に話をふる。


「シリウス様は何タイプなんですか?」

「私?私は何でもできますよ」


にっこり。

それはそれは完璧な笑顔を見せた王子様は、それ以上の質問を許さない迫力があった。

そうか、王族の魔法なんて秘密に決まっているか。

それにしてもシリウス様って見かけは優しげな王子様だけど、なかなか食えないタイプだぞ。


でも思考に特性があるっていうのは、性格診断テストみたいで面白いかもしれない。

あの人は音楽タイプだから言語に強いとか、テキストタイプは理屈っぽそうとか、それがどんな風に魔法として発揮されるのか気になる。

私は友達とと暇つぶしにやった血液型診断や星占いを思い出した。


「古の大賢者が呼び出した異世界人は、その魔法で洪水を鎮めたという」


再びロキさんが厳しい表情を作って話を締めくくった。


「生い立ち、容姿、性格が全く同じ人間はいないように、魔法は一人ずつ異なる…異世界から来たお前は我々にない思考特性をしている筈だ。異世界人の君も、ここで過ごすうちに何らかの魔法を手に入れるだろう…」


魔法が使えたらそりゃ面白いだろうけど、それよりも気になることがある。


「なんでちょいちょい変な喋り方するんですか?」

「魔術師っぽくない?」

「ぽいけど、似合わないです」

「そっか……」


あからさまに気落ちした表情になってロキさんは紅茶をかき混ぜ始めた。

砂糖壺から三個取り出して紅茶に入れるあたり、相当な甘党と見た。

拗ねた魔術師に代わって、殿下が話を繋げる。


「ちなみにこっちのリゲルは魔法が使えないんですよ」


思わず黒づくめの騎士の顔を見つめる。


「それは、思考能力がないという……?」

「違う!俺は魔力がないだけだ!」

「思考特性は、魔法の方向性を決定づけるだけだよ。エネルギーとして魔力が使われる訳だから、魔力がない人は使えないんだ」


うーん。現代風に言うなら、魔力が電気エネルギーで、思考特性が機械ってこと?

人によって使える機械は車だったり、映写機だったり、様々って感じ?


「それで、今の話を聞いてみて、どう?君の思考特性はどんなものだと思う?どんな魔法が使えそうかな??」


一瞬で立ち直ったロキさんが身を乗り出してきた。

思考特性、特別言えるなら、アレしかないけど、言いたくないな。でも言うしかないのかな。


「……私、多分その他タイプだと思います」

「その他!いいね!大賢者もそうだったんだよ!」

「多分皆さんの期待には答えられないと思います。……私、特定の言葉に味を感じるんです」

「あ……味……??」

「はい、味です」


三人の男性陣とカペラさんが目を丸くした。

それからじわじわと食いしん坊のダメな子供を見るような目つきに変わっていくのが辛い。

これが私なんだから気にしてても仕方ない。

私は生暖かい視線は無視して話を続ける。


「例えば『おはよう』はザラメの味がします。口に出しても聞いても、考えても、『おはよう』って文字を見るだけでザラメの味を感じます。味覚が思考にくっついてるタイプ……なんでしょうかね」

「お、おう」

「何と申せばよいのでしょうか……」

「素晴らしい!」

「ロキ?」


コメントに困る一同の中、ロキさんが立ち上がって叫んだ。

プルプル震えてるからてっきり笑いを堪えているかと思ったのに、その目は爛々と輝いている。


「素晴らしい!素晴らしいよ!過去にも味覚よりの思考特性を持つ人間はいたけど、どうしても数が少なくて研究が進んでいなかったんだ!その特性は、育ってきた環境で生まれたのか、君自身の特性なのか、非常に興味深い!是非具体的な話を……っと、その前に魔法特性の検査をしようか!こちらへ!」


驚きの声をあげる暇もなく、ロキさんが屋内へ向かう。

席を離れていいのか王子様の顔を伺い見ると、「魔法に影響を及ぼす思考特性はロキの研究テーマなんです。付き合ってあげて下さい」と言われたので会釈一つ残してロキさんを追いかけた。









十分もたたずに戻ってきた私達をシリウス様が笑顔で迎えた。

私の微妙な表情と、ロキさんの新しいおもちゃを見つけた子供のような笑顔を交互に見て、口を開く。


「それでどういった魔法が手に入ったんですか?」

「凄いですよ!」

「待ってロキさん!ハードルあげないで!凄くない、全然凄くないから!」



あの後、屋内に入るとすぐにロキさんは取り出した紙に魔法陣を書いて、私に差し出した。

子供が初めて魔法の練習をする時に使われる魔法陣で、その上に手を乗せて意識を集中すると頭の中に魔法を発動する為のキーワードが浮かぶ、という仕組みらしい。

キーワードは人それぞれで、思い浮かんだら口に出して唱えてほしいと言われた。

恐る恐る魔法陣に手を置いて、しばらくした後に思い浮かんだ言葉は。


『おはよう』







「……えーっと私の魔法は、すべてのものを自由に好きな味にすることが出来るっていうものです。例えばこの石もあたしが『おはよう』て言いながら触ればザラメ味に…」

「凄い魔法ですよ!砂糖はとても高価で、財力自慢の貴族が、パーティの目玉に砂糖の彫刻を披露するくらいだ!甘党の僕としてはとても羨ましい!」

「……それは何かの役に立つのか」

「知りませんよそんなの」


ホクホク顔のロキさんとは反対に周りの反応は予想通り。

異世界からきた割にはあまりにしょぼい魔法に、沈黙が落ちた。

眉間を押さえて頭痛を堪えるポーズのリゲルさんと、笑顔が張り付いたシリウス様、カペラさんは目をそらしている。

きっと、前に召喚された異世界人みたいに、国にとって有益な魔法が生まれるのかも!と多少なりとも期待してたんだろう。ごめん。


「ちなみに部屋に活けてあった花ですが、魔法を試したので今は砂糖味になってます」

「……蟻が集るから変えさせましょうか」


皆が一つずつ魔法を持ってるなら、中にはこんな魔法があってもいいじゃない。

あ、もしかして、役に立たない魔法だったら放り出されたりするのかな。

政治利用はされたくないけど、ちょっとは役に立つ所、アピールした方がいいのかな?


「でも拷問は出来ますよ!捕虜にこのザラメ味の石を食べさせるのはどうです?石だけどザラメですよザラメ。砂糖って高級なんですよね?まあ食べると歯が欠け顎が壊れますけど」

「とんだ鬼畜だな!」

「それには、それ用の魔法使いがいますからね。気になさらずとも、魔法の特性一つで貴女をどうこうしませんよ。……ロキ」

「はい」


王子様はニッコリとあの有無を言わさぬ笑顔で告げた。


「彼女の面倒を見てあげてくれるかい?」

「勿論です!」


胸を張って答えたロキさんは、見かけ通りお人好しな人だ。

そして王子様はやっぱり食えないな人だなと確信した。




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