2話
「…あ、あの……。」
「…今だけは、もう少しだけこのままで…。」
「うん…。」
長刀を持っていた左手が腰に回っており、優しい右手は頭の後ろへと移動する。
(私は抱き返すこともできない…。)
「…。」
「……。」
流れる沈黙。疲れがとれる。涙がまだ止まらない。
「…ごめん、真美。」
「……なんのこと?あなたは、誰?」
「えっ?………?」
「…えっと、その……。」
「…俺は、ま……まもる。」
「あの、その、まもるさんがどうして私のことを知ってるの?」
「えっと、知ってた…から。真美のこと。」
「あ、うん……。」
(聞いちゃいけないことだったのかな?)
まもるさんの手がどんどんきつくなっていく。
「あの、い、痛いです…。」
「あ、ごめん…。」
パッと素早く手が離れる。
「…今、手錠はずす。」
まもるさんの手が近づいてくる。血で汚れた手に。
「あっ!」
思わず手を引っ込めてしまう。
「どうした?」
「あ、いや、その…。」
「…?」
「私の手、血で、汚れてるから……。」
「そんなこと、関係ない。」
引っ込めた手を力強く引っ張ってくれる。
(あっ…。)
そして優しく長刀で手錠を壊してくれた。
「…ありがとう。」
「うん…行こう。」
「…何処に?」
「ここじゃないところ。真美が嫌じゃない場所。嫌だろ?ここは。」
「うん…。ありがとう…。」
まもるさんの後を必死に追いかける。
「はあっ。はあっ…。」
まともにものを食べてないせいか、息が上がるのが早い。少し遅れて足元もふらついてくる。
「はあっ…はあっ……。」
(…きつい。)
「わぷっ!」
目の前のまもるさんにもろにぶつかる。
「真美、俺に捕まって。」
「へ?」
瞬間、体が宙を舞う。次に気付いた時にはまもるさんの腕に抱えられていた。
「しっかり捕まって。」
「え?へっ?…えっ?」
混乱が抑えられない。
(な、何これ?)
「このまま突っ切るよ。」
「え?あ、うん!」
少し、少しだけ、頬が照っているのを感じた。