プロローグ
「やめて…何をするの?痛い…離してよ、ねぇ痛いよ、痛いよぅ。」
覆面を被った男の人に手首を掴まれていた。
(痛いよ、やめて…。)
「……おとなしくしてろ。」
その言葉とともに口元が覆われる。
「んん〜!」
(息が、苦しい……。)
「真美ねぇーーー!!!」
遠くから聞こえる聞きなれた声。同時に覆われていた口が解放される。
「ん、ぷはぁっ……はぁっ、はぁっ…ま、こと?」
「ちっ、ガキが……。」
「きゃっ!!」
手首も解放され、地面に叩きつけられる。
「真美ねぇを穢すなあああぁぁ!!」
遠くから現れた男の子…誠は体に似つかわない長刀を手に男へと駆ける。
「…ふん。」
男はそれを軽々しく避ける。
「なっ……!?」
瞬間、何が起こったのかわからなかった。気がつくと誠の手にあった長刀が男の手にあるのだ。背が男の方に向く誠。
「お前が…死ね!」
同時、男の長刀が誠目掛けて落ちていく。
「誠!!」
体は動いていた。頭で考えるよりも明らかに早く。
ザクッ!
そんな音とともに左肩に強烈な痛みが走った。
「ま……ぇ……!!!」
覚えていることはその時の誠の眼が鬼のように紅くあかく染まっていたことだけだった。
それから先のことは何も覚えていない…。
7年後……。
俺はあの頃の長刀を背に、旅立った。
さらに1年後………。