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「サン・ジェルマン少年と謎の妖精」(セーラー服と雪女 第15巻)  作者: サナダムシオ


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④ 魂の旅

「目を閉じたまま聞いてちょうだい。」

 彼女は少年を落ち着かせるように言った。

「この旅には、簡単なルールがあるの。貴方はそれを守れるかしら?」


「どんなルールなの?」

「この先で見た物、聞いた物に関わらないことよ。」

「えっ、それはどういう⋯。」

「何を見かけても、触ったり、話しかけたりしてはダメなの。」


「どうして?」

「⋯貴方の無責任な行動のせいで、歴史が変わってしまうからよ。」

「それは⋯いけないなあ。」


「特に今回はいけないわ。」

「なぜ?」

「これから、生まれたばかりの貴方と、御両親を見るから。」

「ああ⋯。」


「まあ、でも、事故を防ぐために、薬の成分は調整してあるんだけどね⋯。」

「えっ?」

「⋯ほら、もう着いた。ゆっくり目を開けてごらんなさい。」


 彼女に言われるがままに、少年は目を開ける。

 すると、先程まで居た部屋と同じ場所なのに、何だか随分暗くなっていた。


 燭台に灯された明かりに照らされて、いつも自分が寝ているベッドが見える。

 そこには、一人の女性が横たわっていた。

 彼女の腕には、生まれたばかりの赤ん坊が抱かれており、ベッドの傍らには一人の男性が跪いて、母子を見守っていた。


「ねえ見て。元気な男の子よ。」

「立派に産んでくれて、ありがとう。」

「大好きな貴方の子ですもの。大切に育てるわ。」

「うん、僕もできるだけ様子を見に来るよ。」


 少年と妖精さんは、そんな二人のやり取りを、部屋の片隅の暗がりから、こっそりと見ていた。

 少年にとってみれば、その二人には見覚えがあった。

 

 やっぱりあの二人が僕の両親だったんだ。少年はそれを確信し、一人頷いていた。

 今でもよく屋敷を訪れるその二人には、オジサン、オバサンと呼ぶように言われていたが、かねてからの疑問が、これで解消されたのだった。


 良かった。

 僕にも、ちゃんと両親が居たんだ。

 道理でいつもあんなに優しく接してくれるわけだ。


「でも、どうして⋯?」

 少年は思わず呟いてしまい、慌てて口に手を当てる。

 「大人には、イロイロと事情があるのよ。自分たちが両親だと明かせない事情がね。もう少ししたら、貴方にも判るように説明してあげるわ。」

 妖精さんが、少年の耳元で静かに囁いた。


「さあ、無事に目的は達成できたから、帰りましょう。」

「えっ、もう?」

「初めてなんだから、無理しないの。」

「何だか物足りないなあ⋯。」

「贅沢言わないの。それに今後その気があれば、何度でもここを訪れることはできるのよ。」


「ホントに?」 

「私は、貴方にはウソを言わないわ。これまでもそうしてきたし、これからもそう。」

「分かった。今日はこれで帰るよ。」

「良い子ね。それでこそ、私のサン・ジェルマンよ。」


 そしてもう一度二人は手を取り合うと、目を閉じて、元の時空へと精神を集中させたのだった。

 


挿絵(By みてみん)

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