㉖ 不満顔の大団円
「でもまあ、今回の一番の功労者は、誰よりも早く異変を察知した、弓子さんよねえ。」
雪子が言った。
「いやいや、夜中にあんな巨大な悪意…ううん、殺意を感じたら、誰だって飛び起きますって!」
弓子が答える。
「それで、僕もたたき起こされて、自宅からここまで連れて来られたんですよ。でも僕が感じた、雪子さん出現の予測と場所が一致していたので、コレは何か一戦あるなと…。」
続けて雪村が言う。
「私は元々サン・ジェルマンと一緒に居たのよ。彼が世中に、夢遊病のように出て行ったから、こっそり跡をつけたのよ。」
雪子に訊かれる前に京子は自分から言った。
「あれっ?そう言えば鷹志君と由理子さんは、どうしてここに?」
雪子が思い出したように訊く。
「え~っと、たまたま近くに泊まり込んでたんですよ。たまたま…。」
鷹志と由理子が声を揃えて答える。
「へええ、たまたまねえ?二人で?冬休みの最後の夜に?」
雪子が左の口角を上げて、ワルい笑顔になる。
「もう、いいじゃないですか。みんなの役に立ったんだから!」
何故か由理子が顔を真っ赤にして言った。
「兄としてどう思う?雪村。」と訊く雪子。
「…鷹志君、ふしだら…じゃなかった、ふつつかな妹ですが、どうか末永くよろしくお願いいたします。キミは僕の義理の弟になるんだね?」
そんな雪村の一言にみんなで笑った。
鷹志と由理子だけは顔を真っ赤にしてドギマギしていた。
「ああ、楽しかった。じゃあ、そろそろ私、帰るわね?」
宴もたけなわであったが、雪子がそう切り出した。
「色々お世話になりました。」と弓子。
「また遊びに来てね。」と由理子。
「もう来なくていいから。」と京子。
「じゃあまた、研究所で。」と鷹志。
「貴女がどこにいても、危機の時は僕が必ず駆けつけますから。」と雪村。
「我が育ての母であり、姉であり、初恋の君である雪子さん。どうかお元気で。」
サン・ジェルマンはそう言った。
「えええ、私はぁ?」と京子。
「貴女は私の最愛の君ですよ。」とサン・ジェルマン。
「ああ、良かった。私の勝ちね?」満足気な京子。
「はいはい。まあ、ぶっちゃけ私さえ関りを持たなければ、みんな安全に暮らせるはずだから、この時間軸への暫くの訪問は控えるわ。でも、もしもの時は、雪村、頼んだわよ?」
「任せて下さい。」雪村は胸を張って答えた。
今やこの三次元世界での、彼のチカラは絶大だ。
「じゃあね、皆さん。いつかまた、逢いましょう!」
雪子さんは、両手を高く上げて振りながらその場から後ずさると、次の瞬間には、亜空間レストランから消えてしまった。
「あ~あ、行っちゃったねえ。」と由理子。
「うん、行っちゃった。」と鷹志。
「さあ、お疲れ様!今日はもう、お開きにしましょうか。」
サン・ジェルマンのその一言で、会はお開きとなった。
みんながそれぞれの場所へ帰って行くのを、窓から眺めるサン・ジェルマンの隣に、京子がやって来た。
「ねえ、雪子ロスなんて絶対言わないでよ?隣にこのワタシが居るんだから。」
「大丈夫ですよ。彼女は私にとって、青春時代の幻影みたいなものですから。❝銀河鉄道999❞で言えば、私は鉄郎、彼女はメーテルです。」
「え~、私はぁ?」
「貴女は❝森雪❞ですよ。」
「それ❝宇宙戦艦ヤマト❞じゃない!」
「ああ、そうでした。どちらも松本零士先生の作品でしたから、つい、うっかり…。」
「…もう。でも貴方が❝古代進❞ならいいわ。」
ふくれっ面でそんなことを言う京子の顔を最後に、この物語を閉じることに致します。




