㉕ 事件の経緯
「…何はともあれ、そんな訳で、私は別の並行宇宙の出身であるにもかかわらず、この❝昭和の時間軸❞にに関わり過ぎたの。まあ、ぶっちゃけそれ以外の色々な世界にも、ちょっかい出し続けてたんだけどね?」
雪子がテヘペロしながらそう言った。
「その行動が、私たちより高次の存在、四次元とか五次元とかの住人から、すっかり危険視されたらしくて、狙われるようになったの。前回なんて、四次元人に雪村の身体を乗っ取られて、警告を受けたわ。そしてそのあげくが、先日のあの事件だったって訳なの。」
「なるほど。全ては雪子さんのせいだったと…。」と由理子。
「あー、もー、ホントにごめんなさい!私はただ、雪村のことが心配で…。」
「…良いですよ。許してさしあげます。」と由理子。
「えー!?許すの?私のサン・ジェルマンが、あんなひどい目にあわされたのに!?」
やはり京子はそう言った。
「いや、氷漬けにしたのは貴女でしょうが?」と雪子。
「それだって、もとはと言えば貴女のせいでしょ!」と反論する京子。
「あちらの席では、随分と盛り上がっているようですねえ。」
レストラン内の対角線上に位置する、一番遠いテーブルでは、3名の男性が座って談笑していた。
それは言うまでもなく、サン・ジェルマン、真田雪村、杉浦鷹志だった。
「今回も鷹志君のお手柄でしたね。」
サン・ジェルマンが声をかける。
「いえいえ、伯爵が最近、身辺に違和感を感じていて、いつでも対応できるように準備を怠るなと、常々僕に言って下さっていたからですよ。」
「それにしても、あの電磁防壁は良く出来てましたねぇ。僕なんかには、とても作れないや。さすが元神童。」
謙遜する鷹志を、雪村が褒めちぎる。
「雪村君こそ、ヤツにとどめを刺したのは結局キミなんだから、凄いチカラだよ。」
「まあ、それは、ケガの功名と言うか、棚から牡丹餅というか…以前乗り移ってくれた四次元人の影響ですから、皮肉なことに、むしろ感謝しかないですね。」
「雪村君、アレがチカラの全力って訳でも無いのでしょう?」
サン・ジェルマンが興味深そうに尋ねる。
「そうですね。まあ、出力としては、ほんの一割ほどですね。」
「そうですか…いつか全力を見てみたいものです。」
あんな目に遭っても、彼の好奇心は止まらないのだった。
「随分楽しそうね。何の話をしているの?私のサン・ジェルマンと雪村で。」
そんな事を言いつつ、座っているサン・ジェルマンの後ろから、いきなり雪子が抱き着いて来た。
彼女は、いつの間にか忍び寄っていたのだ。
もっともサン・ジェルマンが、ソレに気づかないはずもないのだが…。
「貴女はもうすっかり、私の少年時代を満喫して来たのですね?」
「それはもう、可愛かったわよ?最後には泣きべそまで見せて…。」
「…もうそれは忘れて下さいよ。恥ずかしい…。」
「今なら私、手塩にかけた息子を手放す、母親の気分がよく分かるわ。」
「だ・か・らぁ、貴女のサン・ジェルマンじゃないでしょ!それに母親でもないわ!」
後から京子が追いすがって来て言った。
「そして、雪村君はわたしのモノです。」
弓子もやって来た。
「因みに、鷹志は私のモノで~す!」
由理子もやって来て、鷹志に抱きついた。
結局みんな合流したのだった。
亜空間レストランは、今やすっかり楽しいカオスになりつつあった。




