㉑ 総力戦の果てに
「来ます!」と弓子。
「させるか!」と京子。
彼女は。何かしようと動いた瞬間のサン・ジェルマンを、すっかり氷漬けにしてしまった。
「まだです!」と弓子。
サン・ジェルマンの中から、何か白い影のようなモノが出て来た。
鷹志が手元のリモコンスイッチを押す。
四次元的な攻撃にも対策された、電磁防壁が味方のメンバーを囲む。
すると白い影が雪子の方に向かう。
「やらせないわ!」と由理子。
どこからともなくやって来た八咫烏の一群が、一斉に白い影に襲いかかる。
「その子たちは特別よ。魂さえも獲物にできるのよ!」
何とか攻撃に転じようと、上に逃れる白い影。
それを逃すまいと、更に上方に浮き上がる雪子。
「甘いわね?」
雪子の両手から金色のエネルギー波が次々に打ち出される。
それに押されるように次第に下方に落ちて来る白い影を、地上で待ち受ける人影があった。
それは雪村だった。
『そうだ、またオマエに入ってやる。』
白い影からそんな声が響いた。
近づく白い影に対して、雪村は余裕の笑顔を見せながら、徐ろに右手を開いて上に突き出した。
するとそこから、まばゆい光の玉が生まれ、白い影を包み込んでしまった。
雪村が右の掌を、ゆっくり握り締めると同時に、光の玉も収束して行き、最後には小さな光の点となり、やがて完全に消えてしまった。
「アナタの敗因はね…。」雪子がもう滅してしまった影に向かって語る。
「…かつて雪村の中に入ったことよ。結果として、それが彼のチカラの覚醒を加速してしまったのよ…ってもう聞こえてないか?」
雪子は地上に戻って来た。
「お帰り、雪子さん。」
「ただいま。雪村。みんなも元気そうね?」
「お久しぶりです、雪子さん。」と由理子。
「協力ありがとう。八咫烏、凄かったわね?」と雪子。
「すっかり吹っ切れたみたいね?」と京子。
「まあね。」と雪子。
「鷹志君も難しい仕掛けをありがとう。」
「お安い御用ですよ。」と鷹志。
「弓子さんのおかげで、攻撃のタイミングもバッチリだったわ。」
「私には、これぐらいしかできませんから…。」と弓子。
「皆さん、何か大事なことを忘れていませんか?」
後ろから声がしたので、皆振り返った。
自力で冷凍状態から身体を回復させた、笑顔のサン・ジェルマン伯爵が、湯気を出しながらそこに立って居た。
「まったく。京子さんも無茶なことをなさる。もしも私じゃなかったら、とっくに死んでますよ?」
「ああ、私のサン・ジェルマン、無事で良かったわ。」と雪子。
「だ・か・ら、貴女のじゃないでしょ!?」と京子。
「あら、少年時代の彼は、私が育てたのよ?」
「そんなの反則よ。私だって今からビートルで行ってやるんだから!」
「中世の時代に、あんな大きな銀色のカブトムシが現れたら迷惑よ。」
「あら、知らないの?私のは黄色いのよ!」
「まあまあ、二人ともその辺で…。」
サン・ジェルマンと雪村が同時にユニゾンでそう言った。
由理子も弓子も、あっけにとられてそれを見ていたのだった。




