⑳ 名護屋テレビ塔へ
雪子は、17歳のサン・ジェルマンの目の前から消えたその足で、連続時空ジャンプを使って、昭和64年1月7日の午前3時30分に移動した。
それは時の天皇の崩御の3時間前…昭和最後の日だった。
昭和が終わる前に、彼女には、どうしても決着を着けておきたいことがあったのだった。
場所は久屋大通公園の中央よりもやや北側の、名護屋テレビ塔前だ。
するとそこに、既に36歳のサン・ジェルマンが待ち構えていた。
彼は腕を組んで仁王立ちの姿だった。
雪子はそれをどこかで見た気がしたが、他でもないかつての自分の姿だということに思い至って、つい苦笑いしてしまった。
「どうしたのかしら?そんな門番のようなポーズで立ちふさがるなんて。」
笑顔のまま、雪子が彼に尋ねる。
すると大人のサン・ジェルマンが口を開いた。
『門番?確かにそうかもしれないな、今のワタシの役割を思えば。』
あら、やだ。セリフまで私にそっくり。彼女はまたも苦笑してしまった。
『この期に及んで笑顔を見せるとは…随分余裕なんだな?』
「いえいえ、コレはただの思い出し笑いなのよ。」
『ほう…。』
「それにしても、お久しぶりね。どうやらアナタも、相当執念深い性格みたいね?」
『その後のキミの行動は、やはり目に余る。看過できなくなった。』
「それでどうするつもりなの?❝四次元人さん❞。私を魂ごと消滅させるのかしら?そして私の過去・現在・未来に渡って、この三次元空間から、無かったことにしてしまう気なのかしら?」
『だったら、どうだというのだ?』
「やれるものなら、やってごらんなさい。でもその前に、私の大事なサン・ジェルマンの中から、出て行って貰おうかしら?」
『そんな勝手な要求が通ると思うのか?キミはワタシに敵わないぞ。』
「そうね。❝私だけ❞だったらね。でもアナタも少しは後ろに気を配ったら?四次元人のクセに、意識を一方向に向け過ぎなんじゃない?」
『なに!?』
「…黙って聞いていれば、相変わらず失礼な女ね。サン・ジェルマンは私の婚約者よ!」
それは黄色いワンピースの雪女、村田京子だった。
「アナタはやっぱり、怪しいオジサンだったのね?」
それはメイドコスプレの動物遣い、真田由理子だった。
「アナタは悪意の塊だわ。」
それは黒いワンピースのテレパス、酒井弓子だった。
そして他には杉浦鷹志も…真田雪村までもが、そこに居たのだった。




