⑱ 時空の門
「前にも言ったように、タイムトラベルの方法には、いくつかバリエーションがあるの。それは、もはや❝流派❞と言ってもいいわね。宗教家が瞑想して、悟りを開いたりするのに似た、精神体だけを飛ばすやり方と、量子物理学的な理論に基づいた、タイムマシンを使って、肉体ごと飛ばすやり方。この二つはもう知ってるわね?そして実はもう一つ、時空間ゲート、いわゆる❝ポータル❞を使って移動するやり方が有るのよ。」
歩きながら雪子が言うのを、サン・ジェルマンは興味深く聞いていた。
「もしかしてそれが…?」
「そう、今まさに私たちがくぐって来た鳥居よ。」
「なるほど。」
「世界広しと言えども、古の昔から、こんなにあからさまにポータルの存在を誇示している国は、日本だけよね?」
「時刻や天候や季節など、ある一定の条件を満たした時に、鳥居の真ん中をくぐると、別の時空に出られるのよ。ここなんて京都で最古の神社だから、ゲートとしては理想的ね。」
「ひょっとして、さっきの藤原家も関係している…?」
「いい推理ね。あの家の当主は、代々秘密裏にこの神社のゲートを利用しているはずよ。」
「そうか。だから目の前に突然、僕らのようなタイムトラベラーが出現しても、驚いたりしなかった訳だ。」
「そういうこと。ただ、この方法には大きな欠点があるの。それはゲートからゲートにしか行けない、ということよ。」
「つまり、別の言い方をすれば、ゲートの無い場所には行けないと?」
「まさにその通り。でも、神社の鳥居の無い外国にも、ゲートの役割をする場所はあるのよ。」
「えっ?それってどういう…。」
しゃべりながら、二人はいつの間にか西本殿にたどり着いていた。
せっかくだからとお賽銭をささげ、二礼二拍手一礼した二人は、そこから帰路に就いた。
「世界平和とか交通安全とか、それに旅の安全などを願う神社らしいから、私たちにはちょうどよかったわね?」
平日のせいか人通りも少なかったっため、そのまま二人は物陰に隠れて、ポータブルタイムマシンを起動することができた。
やがて二人は無事に、元の森の広場に戻って来た。
近くにちょうど良い倒木があったので、二人で並んで腰かけると、おもむろに雪子が話し出した。
「さて、約束の種明かしの時間ね?」
サン・ジェルマンは耳を澄ませて聞いていた。
「私の本当の名は真田雪子。人呼んで❝超時空の魔女❞よ。未来でちょっとしたことがあって、大人になった貴方にこっぴどくやり込められたのよ。」
「えっ?」
「でもそれは、見当違いの努力をしていた私に、大人の貴方がストップをかけるためだったって分かっていたの。」
「そうなんだ…。」
「理屈では分かっていても、とても腹が立ったわ。だってそれまでの自分の生き方そのものを、全否定されたようなものだったから。」
「うん、うん…。」
「その後も私は、意地を張って努力を続けたわ。でもやがて疲れ果てて…とうとう最後には、貴方に下らない仕返しでもしてやろうって、考えるようになったの…まあ、逆恨みよね?」




