⑰ 二人の関係
「ところで、立ち入ったことを訊くようだけど⋯。」
「何かしら?」
「そちらの殿方は⋯貴女の伴侶なの?」
与利子さんはサン・ジェルマンを指して言った。
「それに、120年後だなんて、まさかこの方も貴女同様、不老不死なのかしら?」
もっともな疑問である。
「私は祖母に免じて貴女のことを信用するけど、この方の事はよく知らないわ。どうか教えていただけるかしら?」
「こちらの殿方は⋯。」
雪子さんが話し始める。
「⋯私の伴侶⋯ではないわ。むしろ私の弟のような、息子のような、弟子でもあり、恩師でもある、関係性は複雑だけど、とにかくそういう大切な人物よ。」
「⋯そう⋯なの?」
与利子さんは納得行かない表情だった。
きっと自分もそんな顔をしているに違いない、とサン・ジェルマンも思った。
「それに彼は、120年後にここへ、貴女の子孫とお見合いをしにやって来るのよ?」
「ええっ!?」
与利子もサン・ジェルマンも同時に叫んでしまった。
雪子は直ぐに、自分が喋り過ぎたことを自覚した。
「とにかく、未来のことを知り過ぎるのは危険なんだから!もう帰るわね。勝手口を使うけどいいわよね?」
そう言うと雪子さんは、さっさと歩き出した。
サン・ジェルマンも慌てて、後ろからついて行く。
すっかり呆気に取られて、口をアングリさせている与利子を尻目に、二人は勝手口から路地へ出た。
「話しかけてもイイかな?」
「どうぞ。」
「まず妖精さん⋯本名は雪子さんだったんだね?」
「そうね。貴方との生活があんまり楽しくて、ついうっかり、言いそびれてしまったわ。ごめんなさいね?」
「⋯それはもうイイんです。でも120年後の件は⋯?」
「それについては、帰ってから落ち着いて、キチンと説明します。」
「⋯そう⋯なんですね?」
「⋯必ず。だから今はまだ待って。それよりせっかくの京都なんたから、少しお散歩しましょう。」
二人は歩きながら、やがて下鴨神社までやって来た。
「今後の道中の無事を祈って、お参りして行きましょう。」
「いや、僕はクリスチャンだから⋯。」
「大丈夫。日本の神様は心が広いのよ。」
そう言いながら雪子は神社の敷地に入って行く。
しかし、突然振り返るとサン・ジェルマンに言った。
「ああ、言い忘れてたけど、その鳥居の真ん中は通らないでね?」
「ええっ!?」
危なかった。彼は何とか鳥居をくぐる一歩目を端に寄せた。
「⋯間に合った。でもどうして?」
「真ん中は、神様の通る道ってことになっているの。」
「なるほど。」
「⋯でも実は、他にも意味があるのよ。」




