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「サン・ジェルマン少年と謎の妖精」(セーラー服と雪女 第15巻)  作者: サナダムシオ


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⑯ 謎の箱

「お久しぶりです。与利子さん。」

 妖精さんが屋敷に向かって歩きながら当主に声を掛ける。

「20年ぶりかしら?予言の時間通りね、雪子さん。」

 突然庭に出現した二人の不審者に対して、全く動じる気配も無く、渋い緑色の着物を美しく着こなし、凛とした姿勢のままの彼女は答えた。


 そしてそれが、サン・ジェルマンが初めて聞いた、妖精さんの本名だった。



※ 当たり前ですが、このエピソードの会話は全て日本語でなされています。

  もちろん、サン・ジェルマンも例外ではありません。



「❝王政復古の大号令❞の1年後、朝10時ちょうどに庭に現れる。完璧な予言だったわね?」

 与利子さんは余裕の笑顔で言った。

「何しろ私、スケジュールを守る主義なので。」

 雪子さんも笑顔で返した。

 顔は笑っているのに、二人の間に火花が散っている感じがしたのは、自分の勘違いだろうか?

 何故かサン・ジェルマンはそう思った。


 二人が縁側の間近までやって来ると、与利子さんが言った。

「約束のモノを取りに来たのね?」

「ええ、貴女のおばあ様に頼まれたソレを、預かりに来ました。」

「コレね。では、どうぞお収め下さい。」

 与利子さんが横に置いてあった木箱を差し出す。

「確かに。いただきます。」

 雪子さんがそれを受け取る。


「私の隣に居るこちらの男性が、サン・ジェルマン伯爵という者です。」

 雪子さんが彼を指して言う。

 まだ彼は伯爵では無かったが、彼女の意図を察して黙っていた。

「こんにちは。ミスター・サン・ジェルマン。」

「初めまして。与利子さん。」

 二人は軽く挨拶を交わした。


「120年後、ほとぼりが冷めるのを待って、彼がまたこの箱を返しに来ます。それまでに、中身の一部を使用しても良い、という約束でしたね?」

「そうね。そんな約束を祖母が確かにしていましたね。でも、貴女のような得体の知れない小娘にどうしてそんな…これは失礼。」


「いいんですよ。確かに私の見た目は小娘ですから…本当の年齢は幾つになるのか…もうどうでも良くなってしまったのよ?」

「あらそう…。」


 よく見ると与利子さんは疲れているようだった。しかし、気を取り直したように、再び姿勢を正してこう言った。

「新しい政府の略奪から宝物を守るお役目、ご苦労様です。」

 すると雪子さんも、その場で❝気をつけ❞をして、その上❝敬礼❞までしてこう言った。

「その御役目、しかと承りました。必ずや来たるその日まで、無事に宝物を保管し、守り通すことをお約束いたします。」


 サン・ジェルマンには、それがいささか諧謔にも見えたが、彼女たちは大真面目であった。

 そして彼は、その箱の中身がとても気になったのだった。


挿絵(By みてみん)



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