表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「サン・ジェルマン少年と謎の妖精」(セーラー服と雪女 第15巻)  作者: サナダムシオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/26

⑬ 戦後の理想

「その衣装で踊るのだな?」

 大王が妖精さんに尋ねる。

「ええ、そうですよ。」

 彼女はもう引っ込みがつかなくなってきた。


「では今ここで、一節踊って見せよ。」

「いいですとも。」

 すると妖精さんは、その場で適当に振り付けをして、スカートのヒダをヒラヒラさせながら、つま先立ちでクルクルと回った。

 そして最後に、スカートの端をつまんで膝を少しだけ曲げて、宮廷風の会釈をして見せた。


 彼女は幼い頃、母の勧めでクラシックバレエの教室に通っていたことを、その時、心の底から良かったと思ったのだった。

「うん、見事なものだな。」

 大王は満足したようだった。


 サン・ジェルマン少年は、尋ねるなら今が絶好のタイミングだと思い、彼に話しかけた。

「恐れながら大王様。一つだけお訊きしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ、小僧。不躾なヤツだな。まあ、いい。言ってみろ。」


「大王様は、16歳からずっと戦争を続けて、一度も負けることなく、ついに現在知りうるほぼ全ての世界を、制覇なされました。」

「うん。まさにその通りだな。」

「それは何のためですか?…次は、どうなさるおつもりですか?」

「小僧、質問が二つではないか?」

「…あっ。」

「しかし、答えは一つか。まあいいだろう。教えてやる。」

「ありがとうございます。」


「俺は、我が統治のもとで、世界中を争いのない平和なモノにしたいのだ。」

「おお、やっぱり。」

「…とでも言えば、満足するのかな、小僧?」

「えっ!?」


「父が暗殺された後、俺は最初にマケドニアを武力で制圧し、統治した。その後も15年もの間、ずっと世界を渡り歩いて、戦い続けて来た。俺のカリスマ性に惹かれて、部下たちも長い間ついて来てくれた。最後はインドの北西部まで行ったが、実際には、ゾウに乗った軍隊には敵わなかったよ。」

「…そう…なんですね?」


「戦争は虚しく、どこまで行っても、際限の無いものだ。俺は正直、もうすっかり疲弊した部下たちを、これ以上、この終わりのない旅に巻き込みたくないんだ。」

「…。」


「つまり、立派な理想を持つことは確かに大切だが、何事にも潮時というものがある、ということさ。」

「一人の人間にできることには、限界があると?」

「そうだな。簡単に言えばそういうことだ。」

「…。」


「少年時代、アリストテレスを師に迎えて、様々なことを学んだよ。そのころには、最初に言ったような理想を、本当に目指していた。俺が世界を導くのだとね。」


「でも、貴方はまだ32歳なのに…。」

「逆だな。32歳で気がついて良かったと思っているよ。」

「そうですか。」

 妖精さんには、少年がひどく失望しているように見えた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ