第12話
――三智桜歌
あの後、私達は須磨北文化センターからテクテク徒歩で名谷駅に戻り。
地下鉄で学園都市駅へ移動。
駅で仕事帰りのお母さんが運転する車にピックアップしてもらい、さらに車で移動すること10分弱。
合計で1時間ほどかけて目的地であったピーニャにたどり着いた。
ピーニャは小束山交差点の近くに店を構えたイタリアンレストランで、質の良いイタリア料理をオーダーバイキング形式でおなかいっぱい食べられるとてもコスパの良いお店だ。
場所的に私の家から歩いて15分という近場にあることから、三智家では外で美味しいものを食べようという話になった時に第一候補に挙がるのがこのお店だ。
ディナータイムの店内は客席の照明をしぼっている影響で少し薄暗く、それが隠れ家的な雰囲気を演出している。
内装は非常にオシャレで、各客席を落ち着いた色の天蓋で仕切り、通路と客席の間に水を流すなどの工夫が凝らされている。
料理の質が良く、内装もオシャレなのでデートスポットとしても人気があり、お客さんの中には若いカップルの姿もちらほら見かける。
「みんな今日は付き合ってくれてありがとう。食べ放題のコース頼むから、おなか一杯食べてね」
客席に案内されるとお母さんが任せろと言わんばかりに宣言する。
ピーニャはコスパがいいと言っても中学生が気軽に寄るにはちょっとお高いお店だ。
しかし、お母さんみたいに人並み以上に稼いでいる社会人なら4人分の食事代くらい余裕なはずだ。
「それじゃ、遠慮なく注文しますね。慧人さんは、何か食べたいものはありますか? イタリアンレストランなので、パスタやピザがメインですがお肉が食べたいなら、ラム肉の串焼きとか、ハーブソーセージとかありますよ」
私は隣に座った慧人さんに、パルスフォンに表示された料理の写真を見せながら何が食べたいか聞いてみる。
「じゃあ、串焼き4人前とソーセージ全種類とピサを頼んでくれ。いま、猛烈に腹減ってて倒れそうなんだよ」
「さっきまで、泳いでたんだからお腹空いてるのは当り前よ。私もお腹ペコペコだもん。ただ、栄養のバランス考えると最初はサラダとかにしておいた方がいいわよ」
「私は生ハムとチーズが食べたいですね。発酵食品って、レストランとスーパーで味が全然違うんですよ」
私達がパルスフォンの画面を見てワイワイやっていると、その様子をお母さんはニコニコ顔で眺めていた。
「慧人君、転校当初はいろいろあって日本の生活になじめるか心配してたけど、仲良くしてるみたいで安心したわ」
「桜歌のおかげです。日本に来てからずっと世話になりっぱなしですよ」
「本当にそうですよ。慧人さんって国籍は日本人なのに、頭の中は完全にクサリクでしたからね。私、慧人さんが日本の生活に馴染めるようにけっこう頑張ったんですよ」
「でも、世話焼くの楽しかったんでしょ? 慧人君は桜歌が世話好きな性格だったことに感謝することね」
アサミンの言う通り、慧人さんのお世話をするのは楽しかった。
自分でも損な性分だと思うが、私は自分のために努力するよりも、誰かを助けるために行動する方がやる気も出るし、頭の回転も速くなるような気がする。
「でも、慧人さんが良い子なので助かりました。慧人さんって、勘違いからトラブルを起こすことはあっても自分の待遇に不平不満を全く言わないので」
「確かに慧人君って、他の男子となんか違うわね。クラスにはヤマザルみたいな男子も多いけど、慧人君は同調して騒いだりしないし」
「慧人君は社会人だったから、あなた達より大人なのよ」
「社会人って……あっ、そうか!?」
お母さんに言われて気が付いた。
慧人さんがマモノハンターなのは知っているが、『マモノハンターとは何なのか?』と聞かれたら、答えは仕事だ。
慧人さんは、私達より一足早く社会人として仕事をしてお金を稼いでいたのだ。
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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