第6話
――三智慧人
予想外のお宝を手に入れて興奮気味の桜歌をベンチで休ませて、関谷さんと鹿島さんの様子を見に行くと。
アクセサリーを売っている露店で、関谷さんがテーブルに並べられたアクセサリーとにらめっこをしていて、背後で鹿島さんが真剣な彼女をあきれ顔で眺めていた。
「関谷さんなにしてるんだ?」
「アサミンがこの店の商品を一個買うつもりなんだけど。どれが自分の服に似合うか迷うんだって」
服装に似合うアクセサリーと聞いてどんなものか見てみると売っているのは、カメオアクセサリーだった。
カメオとはメノウや宝石サンゴのような柔らかい宝石に、職人が浮彫の彫刻を施したアクセサリーで美術品に近い代物だから当然値段も高くなる。
店をだしているのは20代くらいの若いお姉さんだが、どうやってこれだけのカメオを集めたのか正直想像もつかない。
「関谷さん、そんなに悩むなんて予算的に厳しいのか?」
「予算は大丈夫なんだけど。このバラと、スイレンのカメオのどっちがいいか決められなくて」
「服に似合うやつがいいって言ってたけど、どんな風に使うんだ?」
「胸元のリボンの上に付けるの、いいアクセントになると思ったんだけど」
「それ試着した姿、自分で見た方がいいな。鹿島さん、悪いけど写真撮影してくれ」
俺のパルスフォンは完全防水を実現するためにカメラ機能をオミットしているので、鹿島さんに写真撮影を頼む。
「なるほど、カメオを胸元にかざしたところを写真撮影するわけね。確かに最初からそうすればよかったね」
店主のお姉さんにお断りして関谷さんが商品を胸元にかざした写真を2枚撮影し、出来上がった写真を店主のお姉さんを含めた4人で確認する。
「バラだね」
「そうだね。バラの方がよさそうですね」
「そうなのか?」
写真を見て、鹿島さんと、店主のお姉さんは何かを感じたようだが、俺には胸元に少し形の違うカメオを付けているという感想しか沸いてこない。
「男の子にはわかんないかあ。彼女は、ブラウスがピンクで、スカートが紺色でしょ。ブラウスの色が暖色系だから、花弁が赤いバラの方の方が統一感が出せるの」
「でも、カメオ石って両方とも白ですよね?」
俺がそう言うと、3人は『ダメだ、こいつ』と言わんばかりにタメ息を吐く。
「お姉さん、このバラのカメオください」
「毎度あり。本当は1,000円だけどお嬢さんが身に着けてくれたら宣伝になるし800円にまけちゃうね」
「ありがとうございます」
二人は笑顔で商品に受け渡しをやっていたが、値段を聞いて俺は驚きを隠せなかった。
「ちょっと待ってください。カメオ石って宝石ですね? そんなに安く売ってもいいんですか?」
俺がそう言うと、二人は一瞬キョトンとした顔をした後、クスクスと笑いはじめた。
「あのね、慧人君。お姉さんが作ってるカメオはアクリル樹脂。詳しい説明は省くけど質のいいプラスチックで作ってるの。本物の宝石使ってるわけじゃないからたくさん作れるし、値段も中学生が買えるレベルまで安くなるってわけ」
「地球じゃ、宝石以外でカメオ作れるんだ」
いままで宝石を削って作っていると思っていた美術品がプラスチックで大量生産できると知って俺は言葉を失ってしまう。
「言っておくけど、お姉さんスゴイ人なんだよ。今日買ったカメオ、型がその辺のお店じゃ売ってないデザインだし。素人はこんなにキレイに作れないからね」
「あら、お嬢さんもハンドメイドアクセサリー作ってるの?」
「私じゃなくて、お姉ちゃんが作っています。デザイナー志望で洋裁学校に行ってる姉がいるんですが、最近アクセサリー作りも始めたんです。でも、なかなか上手く作れないみたいで」
「最初は大変だよね。私も慣れるまでは端がかけたり、気泡が入ったりしたよ」
「そうそう、お姉ちゃん、良くそんな感じで失敗して悲鳴上げてます」
すっかり店主のお姉さんとなかよくなった関谷さんは、しばらく手作りアクセサリーの話に花を咲かせていた。
「鹿島さんは何も買わないの?」
店主のお姉さんと関谷さんがアクセサリーの話をしているのを後ろでボーっと見ていた鹿島さんに声をかけてみる。
「買いたいものがあれば買うけど、いまのところピンとくるものは無いかな。まあ、あたしは何を買うかはオッカとアサミンに聞いてから決めることにしてるから」
「聞いてからか」
鹿島さんは俺と似たところがあるので予想していたが、彼女はファッションに対して桜歌や関谷さんほど強いこだわりがあるわけではないらしい。
「別にダサい格好でも構わないと思ってるわけじゃないんだよ。あたしも女子だから、かわいくした方がいいと思ってる。ただ、あたしが足りない頭で考えるより二人が勧める服着た方がかわいいって言われるんだよね」
言われてみると、鹿島さんが今日着ているゆかたをベルトで固定するスタイルは和服フリークの桜歌の影響を感じる。
「鹿島さんが納得してるならそれでいいだろ。今日の鹿島さん、俺が目を見張るくらい美人だと思うし」
「褒められると悪い気はしないね。それに、今日の格好は気に入ってるんだ。最初に話したけど、着物はベルト外せばすぐ脱げるからからね」
学園都市の駅で見せてもらったが、ゆかたの中身はショートパンツとTシャツだと言っていた。
今日の服装は、いつでも走れる服装が好きな鹿島さんと、カワイイ服を着て欲しいという桜歌のアドバイスの折衷案なのだろう。
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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