第4話
――三智慧人
「なんで慧人君、制服着てるの? 今日は登校日じゃないわよ」
待ち合わせをしていた学園都市駅で関谷さんと落ち合うと、俺は開口一番にイヤミを言われた。
「慧人さん、私服持ってないんですよ。クローゼット調べてみたら手持ちの服が、制服と、通学時に着ているジャージと、戦闘服だけでした。よく考えたら、学校が休みの日もずっと制服かジャージを着てたのでもっと注意するべきでした」
桜歌がそう語ると、彼女と関谷さんは同時に大きなため息を吐く。
「その選択肢だと、制服が一番マシね。でも、慧人君が日本に来たのは先月でしょ、ウルクに居たときはどうしてたの?」
「ウルクでは一年中戦闘服だったな」
そのため戦闘服は洗い替えのために同じものを3着持っている。
「うげっ! あのゴリゴリの迷彩服で街中歩いてたの。ウルクってそういうの許されるんだ」
「俺はマモノハンターだからな。服を買う金があったら飯や装備に回す」
そうは言ったものの、ウルクに居たときは時子に『戦闘服で街中歩くのはヤメロ』と文句を言われたし、街中歩いていると三日に一回は警察ギルドの職員に職質を受けていたので実は不審者だと思われていたのかもしれない。
「仕方ないので今日は慧人さんの私服も買います。フリマで良さそうなものを探しましょう」
「私服なんていらないだろ? 学校の制服着ればドレスコードで弾かれること無いし、身体は一つしかないんだぞ」
俺が不満を漏らすと、桜歌と関谷さんに無言でにらまれる。
「慧人さんお言葉ですが、日本には決められたドレスコード以外にTPOという概念があって時間・場所・場面に応じて服装や言動に気を付ける文化があるんです。私達3人の服装と、自分の服装見比べて違和感を覚えませんか?」
桜歌に言われて3人の服装を観察する。
桜歌が着ているのは、ニビルに行ったときに時子にプレゼントしてもらったウルク服だ。
黒染めの上着と、朱色の生地に格子模様をあしらった女袴がセットになっていて、袴は皮のベルトでまとめている。
昨日着ていたピンクの着物に比べると少し大人っぽい服装で、普段の小動物的なかわいらしさがなりを潜め、小悪魔的な魅力を醸し出していた。
関谷さんは、襟元や袖にフリルをあしらったブラウスと、フリル付きのサスペンダーが付いたフレアスカートに身を包んでいた。
普段のシッカリ者のイメージが強いが、今日はアニメに出てくるお嬢様が着ているガーリーな服を身にまとうことで、普段とは真逆な穏やかなイメージを作り出している。
「二人ともスゴク気合の入った格好ですね。かわいいと思います」
制服で来た俺が文句を言われても仕方ないと思えるくらい、二人は気合を入れて着飾っている。
特にお嬢様風の服装に身を包んだ関谷さんを見たら、彼女が好きな上坂は鼻血を吹くかもしれない。
「見てください。今日はきいさんも、ちゃんとTPOをわきまえた服装で来てるんですよ」
「オッカ、その発言スゴク失礼だからなッ!」
怒鳴り声をあげた鹿島さんも、桜歌の言う通りキレイに着飾っていた。
鹿島さんは朱色の生地に花柄模様がプリントされたゆかたに身を包んでいて、帯の代わりに女性用の幅広ベルトで着崩れしないよう固定している。鹿島さんらしく足元は普段使いのスニーカーだが、スタイルの良い彼女が派手な模様のゆかたを身にまとうことで中学生とは思えない大人びた魅力を醸し出している。
「鹿島さんも、改めてみるとやっぱり美人だな」
「悔しいけど、身長とスタイルの良さでは、きいに勝てないわね」
「褒めてもなにも出ないからな。それに一応体裁は整えたけど、オッカやアサミンに比べたら手抜きしてるから」
「そんな風には見えないけどなあ」
確かに帯締めはベルトを使って省略しているが、俺には鹿島さんがゆかたをキレイに着こなしているように見える。
「実はゆかたを上から一枚羽織っただけで、中身はショーパンとTシャツなんだよね」
鹿島さんがチラリと浴衣のスソをめくると、白い太ももとデニム生地のショートパンツがチラ見えする。
うわあ……パンツが見えたわけじゃないが、非常にエロイ。
「ちょっと、きいさんッ! 軽々しくスソをめくらないでください」
「なんで? 別にパンツ見られたわけじゃないし。その気になれば上着は丸ごと脱いでも平気だよ」
「それでもですッ!」
無自覚にエロを振り撒く鹿島さんに、桜歌は真っ赤な顔で詰め寄って浴衣のスソを整える。
「とりあえず今日は課題の材料と、慧人さんの私服を探します。いいですねッ!」
「異議なし」
「りょうかーい」
「あいよ」
そんなわけで俺は美少女3人に引っ張られてフリーマーケットに向かうことになった。
ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。
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