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第20話

――オッカ


 クエストを成功させてハンターギルドに戻って来たが、ノヤキとの戦いで瀕死になってしまったケイトとキーは明らかに不機嫌そうな顔をしていた。


「このゲームで遊ぶの初めてなんだから失敗は仕方ないですよ。マモノハンター2はけっこう難易度が高いゲームだし」


 アクスは戦闘中に死んだことを気に病むなと二人に声をかける。

 彼の言う通り、初めてプレイするゲームで操作を間違うのも失敗して死んでしまうのも誰でも経験することだ。


「いや死んだことは別にいいんだよ。ノヤキは手ごわい相手だし、殺し合いをしてるんだから自分が死ぬこともある。ただ、戦ってるときに身体の自由が利かなくなるのは勘弁して欲しい」

「あたしもそれ思った。走っていたら身体が勝手に敵の正面捉えるように向き変えたり、斬り込むときに強制的に足が止まったりしてビックリした」


 どうやら二人は戦っているときに、身体がオートで動いてしまう現象に戸惑っていたようだ。

 こうなる予感はあったが、どうやら私の予想は当たってしまった。


「身体が勝手に動いたのはロックオン機能とモーションアシスト機能の影響ですね」


 ロックオン機能は敵を見失わないよう接敵したエネミーを自動的に正面に捉える機能。

 モーションアシスト機能はアバターを動かすときに、運動力学的に正しい動きをシステムが自動的に行ってくれる機能だ。

 私のような人の姿をしていないアバターを使っている場合は、モーションアシストの助けがなければ歩くことも飛ぶこともできない。


「二人とも剣を振るときに踏み込んで、斬撃に下半身の力を伝わるように動いたと思うんです」

「腕の力だけで剣を振っても斬れないからな」

「普通の人は、その正しい動きが出来ないんですよ」


 斬撃に体重と下半身の力を乗せるのはかなり難しい。

 確実に成功させるにはキーやケイトさんみたいに年単位の修業が必要だ。

 私みたいな剣術の修業をしていない人間にそんな難しい運動ができるはずがないので、大半のVRゲームは剣術の専門家にお願いして正しい動きの記録を取らせてもらい、プレイヤーが剣を振ろうと思ったら記録された正しい動きをアバターが再現するようにプログラムが組まれている。


「おそらくケイトさんや、キーさんが、ノヤキを攻撃しようと思ったときにモーションアシスト機能が働いて動きを補正したのが違和感の正体です。ロックオン機能も同じですね。普通の人は敵が近くにいても見失ってしまうことがあるので敵を見失わないようシステムがアシストしてくれるんです」

「余計なお世話だッ!」


 ギルド内にケイトさんの心の叫びが響きわたる。

 どちらの機能も私やアクスさんのような運動の苦手な人には必須の機能だが、ケイトさんや、キーさんには無用の長物だろう。


「大丈夫。モーションアシストやロックオン機能は設定でオフにできますよ」

「そうなのかッ!」


 設定で身体が勝手に動く機能をオフできると聞いてケイトさんが笑顔を見せる。


「ロックオンはともかく、モーションアシスト切るなんて姉さん本気なの?」


 アクスさんは、エストックで敵を突くときに体重を乗せて威力を増すための足運びも、敵の攻撃を回避するための前転や側転も、モーションアシストの助けがなければ出来ない。

 モーションアシストが無ければまともに戦えない彼からすれば、迷いなくアシストを切るというキーの判断に驚くのも無理はない。


「本気だけど。自由に動けなくなる機能なんて邪魔だし」

「それじゃ二人とも、私と同じように叫んでください。ステータスオープンッ!」


 そう叫ぶと目の前にパッと自分の能力値が表示されたステータス画面が表示された。



 ――ケイト


 設定画面で、モーションアシスト、ロックオン、緊急回避といった身体が勝手に動く余計な機能を全てOFFにした俺とキーはアバターの動かし方を練習するために、次はハンターバトルに挑戦することにした。

 ハンターバトルは文字通りマモノハンター同士が直接対決する対人戦のことで、友人同士で対戦するフリーバトルなら負けても特にペナルティは無いのでアバター操作の練習にはうってつけだ。

 俺達はフリーバトルのバトルステージになっているコロッセオに移動し無人の観客席で対戦の段取りを話し合っていた。


「とりあえずアクスさん練習相手お願いします。先輩をボコボコにするいい機会だと思ってください」

「姉さんと違って、ケイト先輩を恨みとかないんでボコボコにしたいとか思わないけど、今日ゲームを始めたばっかりの初心者に負けるわけにはいきませんね」

「あくすう~、あたしには恨みがあるって言うのかよ」


 キーの言葉にアクスは無言でニヤリと笑いながら闘技場に降り立った。

 俺とキーが対戦するとお互いにモーションアシストを使わない変則プレイヤー同士の対戦になってしまうので、練習相手はオーソドックスな動きをするアクスに頼むことにした。


「最初は俺が相手してもらっていいか」

「いいですよ。しかし、ケイト先輩マニアックな武器使いますね」

「カッコいいだろ。俺はニビルでもずっとコイツを使っていたんだ」


 俺が使う武器は四尺野太刀。

 束の長さまで含めると全長約180センチ。

 重量が3キロを超える大型武器だ。

 威力は抜群だがこれほど巨大な武器だとモーションアシストで再現できる動きが振り下ろすか薙ぎ払うかの2択になってしまい、攻撃した時のスキも大きいのでゲームの攻略サイトでは産廃と酷評されている。

 もっとも、他人の評価なんて俺には関係ない。

 俺は四尺野太刀抜いて鞘をその場に投げ捨てる。

 剣豪小説では鞘を捨てるのは恥ずべき行為だと揶揄されることもあるが、巨大な四尺野太刀の鞘は戦闘中邪魔になるので普通に捨てる。

 鞘なんて戦いが終わってからゆっくり拾えばいい。

 それから俺はキーと同じように四尺野太刀を肩で担ぐように八相の構えを取る。

 重量3キロを超える四尺野太刀を日本刀と同じように構えると腕の負担が大きいので文字通り肩に担いて負担を軽減するのだ。

 一見窮屈な構えに見えるが四尺野太刀は取り回しを良くするため日本刀より束が長くなっているので、この構えから自在に斬撃を繰り出すことができる。


「ケイト先輩は使える魔法がケモノノハドウしかないから僕が圧倒的に有利ですよ」

「ケモノノハドウが使えれば十分だ」


 アクスはこのゲームをやり込んでいるので主要な魔法はだいたい習得している。

 ノヤキとの戦いを見る限り攻撃の主体は氷魔法シロノヤイバ。

 ケモノノハドウを緊急回避や敵との間合いの調整に使い。

 逃げた敵を追い打ちするための飛び道具としてトウケツダン辺りも習得しているはずだ。

 手札はアクスの方が圧倒的に多く戦力差は圧倒的。

 しかし、ケモノノハドウを実戦と同じように使えるなら十分に対抗可能だ。

 アクスが鞘からエストックを抜いて構えるのとほぼ同時に――。


『Let's go ahead!!』


 戦闘開始時のゴングが鳴った。

 開始時点で対戦相手との距離は10メートル。

 接近戦を仕掛けるには走って距離を詰めなくてはならない。


 氷魔法≪トウケツダン≫


 最初の一手でアクスは迷いなく飛び道具を選択した。

 エストックの先端に氷属性の白い魔力が集束し、先端から敵を氷漬けにする白い魔力弾が放たれる。


 獣魔法≪ケモノノハドウ≫


 俺は足の裏から運動エネルギーを噴出して跳び上がった。

 幅跳びの要領で放物線を描くようなジャンプで一気に距離を詰めて接近戦を狙う。


 獣魔法≪ケモノノハドウ≫


 直後、アクスがエストックを構えながらケモノノハドウを発動する。

 飛ばして落とす。

 それがアクスの作戦だったのだろう。

 堅実な作戦だ。

 上空から自由落下するだけの俺と、ケモノノハドウの推力で突撃するアクスとの間には打撃力に圧倒的差がある。

 しかし……。


「俺の獲物は四尺野太刀だッ!」


 獣魔法≪ケモノノヤイバ≫


 突撃に合わせて振り下ろした大太刀にアクスは脳天を唐竹割にされ、彼はエンジンが壊れた飛行機のようにキリモミしながら墜落した。


『ケイトWinッ!』


挿絵(By みてみん)

ご拝読ありがとうございました。 私の作品が、皆様の日常のちょっとした楽しみになれば幸いです。


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