第二話「加入」
手術後、彼は静かに目覚めた。
「んん…ここは...公園...?」
彼は現金の入った鞄が消えているのを見て手術が終わったのだと悟った。
彼は家に戻って学校の支度を済ませて登校した。
本来普通の親ならば帰って来た瞬間泣いて自分達がどれだけ心配したかお説教が始まるだろう、しかし彼の家庭は違った両親はこの時間までバイトしていたのだろうと楽観的に考えていた。
学校が終わり彼はスマホ片手にバイト先へ向かっていた。
SNSを漁っていると日本語で同志募集中と書かれた広告を見つけた。
その広告を出していたアカウントはアラビア語で書かれたアカウントで何一つ分からずアラビア語に翻訳してDMで質問してみることにした。
「ماذا يعني دعوة الرفاق؟」(訳:同志募集とはどういうことですか?)
すると...。
「我々の組織で共に闘う仲間を募集しています」
と日本語で返ってきたのだ。
彼が興味本位で詳細について聞くとどうやらイスラム国という組織は沢山の戦闘員が必要とのことだ。
彼は思った。
「この痛みを感じない体なら適任なのではないか…!?」
と、このイスラム国という組織がテロリスト集団であることは周知の事実だが彼に失うものなどない。
「加入させてください」
彼はいつの間にかそう返信していた。
加入の手続きはとんとん拍子で進んだ。
そして数日後、彼はイラクのバグダードの土を踏んだ。
「ヨウ、アンタが中田カ?」
同じアジア圏の人間と思われる男が話しかけてきた。
それなりに流暢だが癖のある訛りが入った日本語だ。
「あぁ、はい」
「車を出シテアル、ツイテ来い」
「あの、お名前を…」
「あぁ、ソウダッタナ俺の名前は博古ダヨロシク」
「博さんですね、よろしくお願いします」
「別に敬語ジャナクテいいさ、俺も数ヶ月前ニ入ったバカリだからな」
博は笑いながらそう言った。
イラクの首都バグダードを抜けて4時間が経った。
「ヨシ、到着ダ今日からココがオ前ノ家ダ」
博が車を止めて指差した先には建物が密集しネオンに照らされた街だった。
例えるならば九龍城砦の構造をもうちょっとシンプルにしたような街だった。
「ココには住む場所ハ勿論、レストランに武器庫おまけに映画館やピンクな店マデ何デモ揃ってル」
「そういえば、自分が生活する場所は…」
「安心シロ、ちゃんと個室ダ」
そう案内された先にあったのは広い一つの部屋を壁とドアで分けたようないわゆる半個室というものだった。
「俺は隣ノ部屋ダカラ何カアッタラ何デモ聞けよ」
そう言って博は部屋に戻った。
「今日は疲れた...もう寝よう」
彼は静かに目を瞑った、両親ともう関わらなくなる彼本人の意思はただそれだけしか浮かばなかったが本能はそれに大喜びし安心できたのか秒速で眠りについた。
「テロリズム」第二話どうだったでしょうか?今回初登場の博古は中国共産党員の博古から取らせていただきました、本当は中国人でテロリストがいたらそれと同じ名前にしようと思っていたのですが見つからずに苦し紛れにこの名前になった次第です...とりあえず終猫の連載の邪魔にならない為にも5話程で完結する予定なので見届けてもらえたら幸いです。