三原色の夜
空気が朝のにおいを帯び始めた頃,歩き疲れた私はふと顔を上げた。くたびれた信号機が黄色から赤へと色を変えた所だった。
「…お前もか。」
ただそこに立たされて,一定の周期で色を変える。見る者がいなくとも律儀に働き続けるこの信号機は,どこか切なくて私と同じ匂いがした。
理不尽な社会の矛盾したシステムと,弱い自分への苛立ちに押し潰されそうになっている私と同じ匂い。
「あぁ、くだらない世の中だな」
私がそう思った時,彼は『進め』と合図した。
「お前がそう言うなら、進んでやろうじゃないか」
私は振り返らずに彼に誓った。