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豊村花凛とのCM撮影 1

 監督である足立さんが今回撮影する内容を話し出す。


「今回は低迷したボーリング人気を回復させる目的で企画したCM。よって2人にはカップルという設定でボーリングを楽しんでもらうよ」

「かっ、カップル!?」


 足立さんの言葉に一緒に話を聞いていた豊村さんが声を上げる。


「わ、私と青葉さんがですか!?」

「そうだよ。事前に青葉くんには許可をもらってるから安心して」


 今回の撮影内容はあらかじめ東條社長を通じて聞いていた。

 男性が少ないこの世界では女性と接することもできない男性が多いため、俺がNGを出すシュチュエーションがあると思い、事前に足立さんから確認の連絡があった。

 その際、「ハイタッチも問題なくできると思いますよ」と返答したため、カップルという設定で撮影することが決まった。


「青葉くんは今まで関わってきた男性と全然違うからね。カップルという普段できない設定で撮影させてもらうよ」

「確かに、お兄ちゃんは女性と話しても問題ないし身体的接触をしても全然怖がる素振りはないから、カップルという設定はアリですね」


 俺たちと一緒に話を聞いていた妹の雪菜が同意する。

 この世界の男性は基本的に働かず、女性に養ってもらう人たちばかりなので、CM撮影に出演する男性は皆無と言っていい。

 仮に出演していても身体的接触は禁止されていることが多いので、身体的接触も問題なくできる俺は稀有な存在らしく、注目を集めるためカップルという設定で撮影するようだ。


「だからハイタッチはどこかの場面で撮影させてもらうよ。カップルのように見えるからね」


 俺は足立さんの話を聞き、豊村さんに話しかける。


「足立さんから色々と聞いて俺は豊村さんとカップルという設定で撮影したいと思ったんだ。豊村さんが嫌なら断るけど……どうかな?」

「わ、私はその……も、問題ないです……」


 照れながらも豊村さんが同意し、俺たちはカップルという設定で撮影することとなる。


「じゃあまずは普通にボーリングを楽しんでいいよ」

「……え?普通にですか?」

「うん。このCMはボーリングの人気を回復するためのCMだよ。楽しんでるところを撮らないで人気回復なんて無理だからね」

「それもそうですね」


 とのことで、まずは2人でボーリングを楽しむことにする。


「じゃあ行こっか、豊村さん」

「は、はいっ!」


 俺たちは撮影を行う5レーンへ向かう。


「青葉さん。よろしくお願いします」

「あぁ。よろしくね。一応カップルという設定だけど抱きしめたりはしないから安心して」

「そ、それは私のセリフです!」

「………確かに」


 この世界は貞操逆転の世界。

 女性が男性に痴漢する世界なので、今のセリフは男である俺じゃなく女である豊村さんが言うセリフだ。


「私は青葉さんに抱きついたりはしませんので安心してください。もし青葉さんに変なことをしたら雪菜ちゃんに怒られますので」


 豊村さんと雪菜は中学からの友達なので変なことをしたら遠慮なく怒られるらしい。


(豊村さんのような巨乳美少女から抱きつかれても迷惑なんて全く思わないけどなぁ)


 そんなことを思うが、変態と思われてしまいそうなので口には出さない。


「じゃあボールを取りに行こうか」

「はいっ!」


 俺たちは5レーンに荷物を置き、あらかじめ準備されていたボーリングシューズに履き替えてからボールを取りに行く。


「重さは……12ポンドでいいか」


 俺は軽々とボールを持ち、レーンへ運ぶ前に豊村さんの所へ向かう。


「やっぱり10ポンドくらいがいいのでしょうか?」


 「うーん」と可愛らしく悩んだ後…


「よしっ!10にしよう!」


 そう言って10ポンドのボールを持つ。


「重たっ!」

「だ、大丈夫?」


 重そうにボールを持つ豊村さんへ声をかける。


「重いなら1つ軽いボールにした方がいいよ?」

「い、いえ。このボールにします。重い方がピンが倒れやすいと思いましたので」


 重そうに持っているが交換する気はないようで、一所懸命ボールを運んでいる。

 そんな豊村さんが可愛く見え、手伝いたくなった。


「豊村さん。俺がボールを持つよ」

「い、いえっ!青葉さんにそんなことをしてもらう必要はありませんよ!」


 俺より年下ということで遠慮する豊村さんだが、俺は引かずに声をかけ続ける。


「ダメだよ。今の豊村さんはふらふらしながら歩いてるんだから。俺は豊村さんが怪我をしないか心配だよ」

「心配……ですか?」

「あぁ。俺の彼女である豊村さんが怪我をしたら大変だからね」

「かっ、彼女……っ!」


 “ボッ!”と一瞬で豊村さんの顔が真っ赤になる。

 彼女呼ばわりしたが、撮影中はカップルという設定なので間違ってはいない。


「あぁ。だから俺が持つよ」


 全然迷惑ではないことを伝えるため笑顔で言う。


「〜〜〜っ!あ、ありがとうございます……」

「どういたしまして」


 “プシューっ!”という音が聞こえそうなほど真っ赤な顔をしている豊村さんからボールを受け取り、俺は5レーンへ向かう。


「きゃぁぁっ!俺の彼女だって!」

「ボールを持ってくれるなんて青葉くん優しすぎっ!」

「あんなこと言われたら好きになっちゃうよ!」

「やっぱり青葉くんは女性が怖くないんだ!」


 そんな俺たちを見て、周りのスタッフたちが盛り上がってた。

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