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転生した悪役令嬢の希望はのんびりスローライフです。

作者: ひろ

勢いがついて、そのまま書き上げました。

誤字脱字報告いつもありがとうございます!

皆様に感謝です♪

「フローラ、貴様との婚約は今この時をもって破棄する。

そして隣にいるこの美しい女性オディアルこそが私にふさわしいのだ!彼女と新たに婚約を結ぶ!」


ウェーブがかった金髪を揺らし、得意げにわが国の第一王子がわたくしに叫んでいる。


広いホールの前方、一段上に設けられたステージには一組の男女がはしたなく、ベッタリくっついている。

わたくしはホール中心付近で友人達と第一王子の挨拶を聴くため、姿勢を正して立っていた。


学園の卒業パーティーというお祝いの席で、挨拶をすると思っていた王子の爆弾発言で会場は静寂に包まれている。


『フローラとはわたくしの名前ですわね。という事は、わたくしが何かを言えと?』


フローラは周囲を見渡し、また王子を見つめ、渋々口を開く。


「バシャ殿下、オディアル様、ご婚約おめでとうございます。」


お祝いの言葉を口にすると、何故か2人とも驚愕している。

いや、ビックリしているのはわたくしですわよ?


「あと、大変申し訳ありませんが、私はバシャ殿下と婚約はしておりませんので、破棄しようがありません。」


「「なっ!」」

バシャ殿下とオディアル様の声が重なった。


「確かに幼い頃、王家の方から婚約を打診されましたが、お断り致しております。」


きっぱり、ハッキリ言いましたわよ、わたくし。

周囲の人々も無言で頷いている。

社交界でも周知の事実だ。

訳の分からないカオスと化した空間で、わたくしは遠い日の記憶を呼び覚ましていた。


私には前世の記憶がある。

日本という国に生まれ、

両親に恵まれず、施設で育ち、

勉強は好きで返済不要の奨学金制度を利用して大学に行き、

周りがサークル活動や恋に青春を謳歌している頃、

生活費のための掛け持ちバイトと隙間時間にひたすら勉強を睡眠時間を削りながら暮らし、卒業後は寮のある製薬会社に就職して研究に没頭した。


わずかにできた自由時間に特に親しい友人がいなかった私は乙女ゲームや、恋愛小説で擬似恋愛を楽しんだ。


仕事にも慣れて、自信がつき余裕が出て来た頃、

あっけなくトラックに轢かれてテンプレ転生してしまった。

享年25歳。


愛される事を知らず、誰かを愛すこともなく。

研究室にひたすら引き篭もって過ぎて行った人生だった。


そして死亡直後、私は突然現れた白っぽい人に次の人生の希望を聞かれたのだった。


『貴女の魂はこれから異世界に転生するのだが、希望はあるかえ?』


『ぐーたらできて、まったりした引き篭もり人生を希望します!』


『それは部屋に閉じこもってダラダラした生活を送れるという感じかの?』


『はい。最高です!ずっと部屋でダラダラして過ごして、ついでに愛する旦那様がいたら最高です。』


『ふむふむ、部屋に閉じこめて、溺愛する伴侶付き、しかと承ったぞ!』


『ヤッター!!ありがとう!神様ー!!』


そして、見事異世界転生を果たした私は前世あんなに縁が無かった家族の愛とお金が溢れる高位貴族の末娘として周囲から溺愛されて育ったのである。


かつてやったことのある乙女ゲームベースの恋愛小説の世界「守護龍と聖なる花の乙女の純愛」の世界だと5歳で確信した私は片手を力強く突き上げ、神に感謝した。



花の乙女は女神から祝福を授かった美しい少女が様々な奇跡を起こし、国の危機を救い、始祖はドラゴンだという王族の王子と結婚するシンデレラストーリーだ。



両親に溺愛され我が儘放題に育つ悪役令嬢に転生した私は、記憶を頼りにフラグというフラグをへし折った。災害などを予見し、流行りの病を前もって回避し実母の死亡フラグも見事にへし折り、7歳にして経営者の才能を発揮し、自分の存在を周囲に認めさせた。


「お嬢様、今日はどのドレスになさいますか?」

専属侍女のアリサが声をかけてきた。


「そうね、、、お父さまの瞳に近いエメラルドに、お兄様の髪のプラチナの刺繍が入っているドレスに、お母様が下さったネックレスにしましょう。」


毎朝、私は家族の色が入ったドレス選びに神経を尖らせる。

間違った選択をすると、家族が喧嘩を始め、さらには自分の色のドレスを作らせると言いはるからだ。


私の部屋の隣はそんな家族の重い愛が込められたドレスで一部屋ぎっしり埋め尽くされている。


これ以上ドレスを贈られるわけにはいかないと、元貧乏苦学生だった私は前世縁のなかったファッションセンスを磨きながら毎日四苦八苦しているのだ。


「アリス、サイズアウトしたドレスはいつも通りリメイクしてお店に出しておいてね。」


貴族令嬢ではあり得ないが、服飾店のオーナーもしている。

有り余る服が勿体無くて、ドレスのリメイクを思いつき、格安でリメイクしたドレスを店に並べたら、貴族の御令嬢が飛び付き大反響となった。


売り上げ金の一部は教会や孤児院に寄付し、残りの利益は奨学金制度を作り資金に回した。

そう、前世の自分がお世話になった奨学金をこの世界にも作ったのだ。


家族に当初この計画を打ち明けて実行したのは7歳だったのだが、幼い子の戯れと思わず、両親も兄も助けてくれた。


そして15歳になった私は王立学園に3年間通った。


学園には第一王子と聖なる花の乙女のヒロインらしきピンク色の頭をした令嬢もいた。

テンプレ通り、幼い頃から天才と家族や周囲から認められた私に王子の婚約者にと打診があった。

こうなると予想した私と家族は早い段階で、一つの公爵家に事業提携と婚約の打診に伺った。


現在の王弟が当主であるデシレ家だ。

歳の差20歳。王位継承権は放棄し臣籍降下したものの、誰とも婚約をしていない優良株。


私は幼いながら父の友人で父とそう年齢の変わらないデシレ公爵様に自分を必死に売り込んだ。


「わたくしのこんやくしゃになっていただければ、ぜったいにこうかいさせません!さきものがいです!」


幼女の必死の懇願に折れた公爵はわたくしが18歳で学園を卒業するまで気持ちが変わらなければという条件付きで、受け入れて下さった。


すぐに兄にあたる国王陛下に許可を貰い、正式に婚約は認められたのだが、まだわたくしが幼いという理由で発表は内々で終わらせた。

けれど、大々的な発表をしていないだけで、調べればすぐにわかるし、社交界でもわたくし達の婚約は知られている。


何故か王妃様から何度もお茶会の招待状が届いていたが、デシレ公爵様経由でお断りしていたはずだ。


そしてヒーローらしき王子ともヒロインらしき令嬢とも関わる事なく、3年間前世でできなかった青春を謳歌したわたくしは晴れ晴れとした気持ちで友人達と卒業パーティーに来ていたのだ。


「わたくしの婚約は7歳の頃に国王陛下から許可を頂き、正式に認められております。ですからバシャ殿下の婚約者にはなり得ませんし、候補にもあがっていないかと。」


「そんな馬鹿な!だって母上はいつもフローラ嬢と仲良くするようにと………!」


「何度かお茶会にご招待頂きましたが、婚約者様経由でお断りしております。」


「父上も国の発展の為にフローラと学園で交流するようにと……」


「わたくしが入学直前に非営利組織を立ち上げ、乳児医療院の開設を陛下に認めて頂いたからかと……」


「それじゃあ、私の婚約者は誰なんだ!」


「………存じ上げません」


実際王子の婚約者候補は数人いたが、バシャ殿下の王族教育が全くもってままならず王の資質なしと歴代教育者達から見放され、性格にも問題ありと立太子も見送られたらしい。


王太子には側妃が産んだ第二王子がなると言われている。

そんな状況だったので高位貴族の令嬢は留学したり、病弱設定で領地に引き篭もったりして未だに決まっていなかった。


互いに長い沈黙の後、微妙な空気感が会場を包む。


『第一王子、想像以上にアホじゃね?』


『そうだよAHOだYO!!』


『マジでアレが王子とか、ツラ死。』


ざわざわとしだす会場。

ああ、皆の心の声が聞こえてきますわ。どうしましょう。


こんな時は前世で歌った卒業ソングで……


いまーこそーわかーれめー

いざーあさーらーばー


『一刻も早くわたくしがこの会場からおさらばしたいですわ!!』

フローラは脳内で一人ツッコミをする。

前世ぼっちだった頃の特技だ。

そんな現在逃避をしていると、目の前に救世主が現れた。


「我が愛しい婚約者殿、遅れてすまないね。」

デシレ公爵閣下のバリトンボイスが会場を満たした。


「デシレ様、お待ちしておりましたわ。」


「先程兄上に正式に書類を受理してもらったよ。大切な書類だから直接渡したかったからね。」


「では、正式に?」


「ああ、我が花嫁。」

デシレ公爵が私の頬にキスをした。

周りから黄色い歓声があがる。


「嬉しいですわ!お披露目は後になりますけれど、その時は皆様、是非ご参加くださいませ。バシャ殿下とオディアル様も是非!」


「あ、ああ………」


「我が甥よ、其方の父からの伝言だ。此度の騒ぎの件、至急城に戻り説明するようにだそうだ。」


「ひっ!」


すでに国王陛下の耳に今回の騒動が入っている様子。

当たり前ですが、王立学園ですからね、多くの貴族子女が在籍しているので状況の把握は常にされている筈です。

かなりリアルタイムに近いのは何かやらかすと思ったからに違いありませんが。


「それでは、皆さま、失礼いたしますわね。」

ニッコリ微笑んで挨拶をすると、周囲から温かい拍手とお祝いの言葉をかけられた。


私は婚約者にエスコートされながら会場を後にし、公爵家の馬車に乗り込んだ。


「覚悟はできているかな?フローラ。」


「もちろんですわ、ルカス様……」

うっとりと婚約者を眺めながらわたくしは彼に寄りそったまま公爵邸に向かったのだった。


いつの間にか睡魔に襲われた私はそのまま公爵様に抱き抱えられ、ベッドに運ばれていた。

その夜、夫婦になって初めての夜はとても甘く刺激的だったのは言うまでもない。

翌日昼前に目を覚ました時には、第一王子は王位継承権を剥奪され、第二王子が王太子となっていた。

オディアル嬢も既に修道院へと送られたらしい。

仕事が早いね!みんな!


こうして私の引き篭もり生活は順調にスタートした。


今思い返しても、かなり無茶な要求をしたと思う。

幼い私からの婚約の申し入れをしたあの日、彼は私に言った。


『自分は先祖返りと言われるほど魔力が高く、常に魔道具で制御している。両親からは化け物と恐れられた自分を育ててくれたのは兄である国王陛下だ。だから臣下として一生国王陛下に尽くすつもりだ。

先祖返りの特徴は高い魔力の他に、愛する者への強い執着だ。我が花嫁になれば、きっと邸から一歩も出る事は叶わなくなる。歴代の先祖返りがそうであったと聞く。君にその覚悟はあるかい?』


『それはずっとおへやにいて、こうしゃくさまのおかえりをまつということですか?』


『ああ、きっとそうなる。ずっと部屋で過ごし、社交もできない。だから誰も私の妻にはなりたがらないのだよ。』


『おへやではなにをしてもいいのですか?おひるねしても、すきなだけほんをよんでも、ダラダラしてもおこられないですか?』


『………誰も怒らない。部屋では自由に過ごせる。

だが…だが、街に出て遊んだり、お茶会や夜会にはほぼ参加することはないのだよ?』


『まちにでてあそぶのはみりょくてきだけど……おちゃかいとかすきじゃないし、コルセットはきらいなのでやかいもきょうみないのでだいじょうぶです!』

目を輝かせて言う幼女にデシレ公爵は何とも言えない表情になった。


『だったら君が学園を卒業するまで気が変わらなければ結婚しよう。婚約中は一緒に街に出て遊べばいい。』


『はい!よろしくおねがいいたします!』


こうしてわたくしは公爵様の婚約者になり、結婚するまでの間やりたい事は全てやりきり、ルカス様とも順調に愛を育んだ。


私は約束通り公爵邸に入り滅多に人前に出ることはなく部屋でまったりと過ごしている。

立ち上げた事業は全て、信頼できる人に譲渡し、溢れるお金を持て余しながら今日も一日中ベッドでゴロゴロしている。

専属侍女のマリアは私が社交界に出られないのは勿体無いといつも嘆いているが、貴族的な会話は疲れるし、ドレスも窮屈で着たくない私はなんなら前世のジャージを開発して一日中着て過ごそうかと現在企んでいる。


『まずはストレッチ素材の糸と布地の開発からね!』

今日も本を読み、せっせと知識を増やしながら邸に引き篭もってフローラは過ごしている。


その後、私の喉元にあるアザが女神の祝福で花の乙女の証拠なのだとか、

幼い私を見た瞬間デシレ公爵は番だと確信したとか、

転生の時に会った白い人はこの世界の女神様だったとか、

いつの間にか自分達が物語の主人公に成り代わっていたとわかったのは何年も過ぎた後だった。


え?ヤンデレ監禁生活?

全く困っていないので、逆に幸せに過ごしているので問題ないですわ!


マイペース引き篭もり令嬢は今日ものんびりスローライフを満喫している。



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― 新着の感想 ―
[一言] お金持ちのハイスペヤンデレの監禁はいたれりつくせりで引きこもるのがはかどるー! なんてうらやまけしからん生活! 末永くお幸せに!
[一言] 監禁ルートは、引きこもりにはご褒美よね~
[一言] 〉私は家族の色が入ったドレス選びに神経を尖らせる。 相手の誕生日や機嫌取りたいときには、全身を相手の色や贈り物コーデにするとうまく行きそう。 ……悪女かな?www
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