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お題シリーズ2

人と雨と人

作者: リィズ・ブランディシュカ



 雨がやまない。


 どうしてだろう。


 どうやってもやまない。


 何をしてもやまないのだ。


 もうずっとやまない。


 覚えていない昔から。


 どれくらいやんでいないか分からない。


 記録をとるのも忘れるくらいの昔から、だから。


 何百年かな?


 何千年かな?


 それとも何万年かな?


 それくらいやんでいない。


 ずっと降り続いている雨はあきないのだろうか。


 雨の気持ちなんて、聞いた事がないから分からないよ。


 たとえ何かを考えていたとしても、その気持ちを思いやってやれるほど余裕はないけれど。


 だからもう、雨の気持ちなんて分からないままでいいような気がしてきた。


 それに人間だから。


 分かりたくても、雨の気持ちなんて分からないし。


 きっとこれから先も分かる事はない。


 何か大変な事が起きない限り、世界の常識が変わるような事が起きない限り。


 分かる事は、ずっとない。


 だから人間達はもうずっと、どれくらいか前から、あるだかないだか分からない雨の都合を無視して。


 やんでくれ、早くやんでくれ。


 と願うしかない。


 言葉の通じぬものには、一方的に願うしかできない。


 言葉の通じぬものには、一方的に要求をつきつけるしかない。


 言葉が通じないから、気持ちが分からない。


 気持ちが分からないから、行動の原因が分からない。


 行動の原因が分からないから、そうする事しかできない。


 人間達は、ただ一方的に雨がやんでくれればいいのに、と今日も思うしかできない。








 雨は語りかける。


 人間に語りかける。


 お空に取り残された人がいるよ。


 だから助けてあげて。


 かわいそうだよ。


 なきそうだよ。


 だからどうか助けてあげて。


 雨じゃ助ける事ができないから。


 そう、ずっと語りかける。


 けれど人間に雨の言葉は伝わらないから。


 ただ降りしきるしかできない。


 はるか頭上にいるばかりだから、地上の様子も分からないままで。


 だって他に方法がなかったから。


 天気を雨にするしか方法がなかったから。


 こうするしか方法がなかったから。


 雨は、言いたい事が言えない。


 だから。


 私を見て原因に気づいて。


 としか、やれない。


 雨は喋れたらいいのにと思う。


 そしたら、人間にも気持ちを理解してもらえるのに。








 空に人がいた。


 その人は取り残されていた。


 地上に戻りたいけれど、戻れない。


 うっかり空にのぼってしまって、戻れなくなってしまった。


 だから困っていた。


 おーいおーいと叫んでみても、


 あまりに天空すぎるから、


 地上にいる人達には何も言葉が届かない。


 地上にいる人達は何も気づけない。


 だから。


 今日も地上には降りられないまま。


 分厚い雲が視界を遮っている。


 その雲の下の外に人間はいてくれるだろうか。


 これじゃあ何があるのか分からない。


 この雲が晴れてくれたら、地上から自分が見えるかもしれない。


 とっても高い所にいるけれど、双眼鏡や望遠鏡で見つけてくれるかもしれない。


 雲は嫌いだった。


 いつも、だって。


 空に取り残されている自分を、孤独にしてしまうから。



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