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第一章7 六刀流の使い手

 四人は洞窟を更に奥へと進んだ。かなり奥の方まで来たはずだ。途中、蜘蛛の大群に遭遇し、卒倒した三人娘を守りながらカズキが蜘蛛を一人で蹴散らしたこともあったりしたが、何とかここまで来た。


「もういやー!おうち帰りたーい!」


 カテリナが叫んだ。


「もう少しでボスがいるはずだ。我慢しろー。」


 カズキは適当に返事をしておいた。


  と、その時、カズキは何か異変を察知した。洞窟を進むにつれて気温が上がり、湿度も高くなってきているのを感じた。何やら硫黄のようなにおいもしてきた。耳を澄ますと、水の流れる音が奥から聞こえてくる。


「この感じ・・・温泉?」


 カズキの予想は的中した。洞窟が広くなり部屋のようになった空間で温泉が湧き出ていた。石で作られた浴槽が所々にあり、『遊泳禁止』の看板があった。


 と、奥の方の浴槽に人影のようなものが見えた。誰かが湯に浸かっているらしい。


「あのー、すみません。冒険者の方ですか?」


 返事はない。湯気で良く見えない。カズキたちはさらに近づいて行った。すると、そのシルエットが次第に明らかになり、四人は異形の存在を目の当たりにした。


 それは、蜘蛛であった。いや、蜘蛛男とでも言おうか。顔は人間のような顔だが、目の上に小さい副眼があった。腕は六本あり、二本の脚があった。体はモフモフの毛で覆われていた。蜘蛛男は温泉に浸かってくつろいでいた。


「きゃあっ!」


 三人娘は叫んだ。カズキは剣を抜き、構えた。


「よお。」


 蜘蛛男がしゃべった。


「お前・・・ここで何してる?」


 カズキが尋ねた。


「何って、見りゃあ分かるだろ。温泉に入っているだけだ。」

「そうか。俺たちはここのボスを倒しに来たんだが、ボスはこの先か?」

「ああ、ボスならこの先にいるぜ。まあ、俺が通させはしないけどな。」


 やはり、そのまま素通りはさせてくれないか。


「でも戦うのは面倒だな。どうだ、一緒に温泉に入ってゆっくりしてから帰るってのは。そっちのお嬢さんたちも一緒に。」

「バカ言ってんじゃないわよ変態!誰がアンタ達なんかと入るもんですか!」


 カテリナは憤慨した。アンタ達ってことは俺も入っているのか。少しショックだ。


「まあそういうわけだ。俺らはアンタを倒して先に進むぜ。」

「やれやれ、しょうがないねえ。」


 そう言って蜘蛛男は浴槽から上がり、そばに置いてあった六本の刀をそれぞれの腕で持った。そして四人の前に仁王立ちした。


「俺は六刀流の使い手。愚かなお前らをミンチにしてやろう。」


 蜘蛛男はそう言って刀をこちらに向けた。


「六刀流って、そんなのアリなの?」


 カテリナはうろたえた。


「なあに、俺に任せときなって。」


 カズキは前に出て蜘蛛男と対峙した。


「お前の相手なんざ俺一人で十分だ。どっからでも切りかかってきな。」

「ほう、よかろう。後悔するなよ。」


 そう言うと蜘蛛男は六本の刀を突きだし、猛スピードで突進してきた。カズキは、身動きせず棒立ちしていた。


(動かないだと?バカめ!死ね!)


 蜘蛛男はそのまま六本の刀をカズキの体に突き立てた。


「カズキ君!!!」


 マリーが叫んだ。


「へへへ、バカな奴だ。即死だぜ。」


 と、その時、カズキがにやりと笑った。そして蜘蛛男は異変に気付いた。刀が抜けない。そしてカズキからは血が出ていない。


「お前は何を斬っているんだ?」


 蜘蛛男の背後からカズキの声がした。蜘蛛男が振り返ると、カズキが立っていた。


「バ・・・バカな!?じゃあこいつは?」


 蜘蛛男が攻撃した相手を見ると、それはスライムだった。刀を蜘蛛男の腕ごと飲み込み、蜘蛛男の動きを封じた。


「まさか!スライム分身だと!?それにお前いつの間に後ろに?転移魔法か?」


(だがありえない、スライム分身は知力レベル40以上が必要な上級魔法。転移魔法に至ってはレベル60以上が必要な超上級魔法。それをナイトが使ってくるなど・・・。)


 そう、このゲームには体力、筋力、持久力、知力、信仰、運の六つの能力値があり、レベルが上がるごとにどれかの能力値レベルを1上げることができる。各能力値は上限が100となっており、20レベル毎に階級が分けられている。レベル40以上の上級魔法は、基本的にはキャラクターの職業が魔術師でないと使えないはずであり、それをナイトであるカズキが使ったため、蜘蛛男が驚くのも無理はない。


「きっ・・・貴様・・・何者だ?」

「んー、ただの廃課金者だよ。」

「フッ、そりゃ反則だぜ。」

「じゃあな。」


 そういうとカズキは剣を振りかぶり、蜘蛛男に強烈な斬撃をお見舞いした。


「ぐあああああ!!!」


 蜘蛛男は叫び、絶命した。


 三人娘が駆け寄ってきた。


「カズキ君ナイスファイト!」

「やるな、カズキ。」


 マリーとユイがカズキを労った。


「奴隷のくせにやるわね。でも、アンタ騎士(ナイト)のくせになんであんな魔法使えるわけ?私でさえ使えないのに。」


 やべ、さすがにやりすぎたか。


「え?い、いやあ、コレだよほら、この指輪は課金ガチャであたる超レアアイテム『ソロモンの指輪』といって、これをつけてると魔術師以外の職業でも上級以上の魔法が使えるんだ。これを手に入れるのにボーナス全部使い切っちゃったよハハハ・・・。」


 もちろん嘘だ。そんなアイテムは無い。この指輪はただのアクセサリーだ。


「ふーん、そんなもの使って俺TUEEEして楽しいわけ?理解できないわ。やるゲーム間違えてるんじゃないの?雑魚狩りしたいならそういうゲームをすればいいだけじゃない。」


 全く仰るとおりです。しかし上手くごまかせて良かった・・・。


「ま、まあこれで先に進めることだし、ボス退治といこうぜ!」


 四人はボスが待つ洞窟の最奥部へと向かった。

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