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第一章5 いざ、冒険へ

 次の日の朝、四人は村を出発した。村中の人々が四人の門出を祝福してくれた。


「君たち四人に神の祝福があらんことを。」


 村長はこう言って、四人に回復薬と金貨100Gをくれた。まさか冒険者の一人が魔王だなどとは考えもしまい。


「ありがとうございます。行ってきます。村長さん。」

「気をつけてな。近くに来ることがあれば、いつでも寄ってくれ。飯をサービスしてやろう。」


 村を出た四人は、一つ目のステージである洞窟へと歩みを進めた。


 村長曰く、千年王国と呼ばれるこの世界に突如現れた魔王は、伝説上の生き物や魔物を具現化し、世界を破壊し始めた。魔王が支配した洞窟、沼地、森、火山、湖、古代遺跡、砂漠の七つのダンジョンでボスを倒し、ボスが持つメダルを手に入れることで、魔王城への扉が開く、ということらしい。


 しかしひどい話だ。俺は魔王の部屋に来た勇者を倒せという指令があっただけで、そんな設定になっているなんて知らなかったぞ。だいたい、魔王というやつはいつも製作者の都合で悪者扱いされるが、ちょっと世界にイタズラして勇者どもと戯れようとしただけで、世界征服だの人間支配だのには興味がない。


 やがてカズキたち一行は、洞窟の入り口へと到着した。カズキはみんなに話しかけた。


「ところで、まだみんなの武器とかスキルについて聞いてなかったな。一緒に旅をするんだし、お互いのことは知っておいた方がいいだろ。」

「ちょっと、何でアンタが仕切ってんのよ!奴隷のくせに。そのことなら私もちょうど聞こうとしていたところよ!」


 カテリナが突っかかってきた。いや絶対嘘だろお前。明らかにぼーっとしてただろ。どうせ今日のお昼は何を食べようかしらとか考えてただろ。


「じ、じゃあまずは俺から。俺の武器はこの勇者の剣。悪魔とアンデッドに対して2倍のダメージが入るんだ!」

「へー、強そうね。でもどうせ課金武器でしょ?最初からそんなの使って楽しいわけ?」

「ち、ちげーよ!これは・・・」


 マズイ!これは魔王を倒した時に手に入る武器だなんて口が裂けても言えない。そうだ!


「これは・・・俺の死んだじいちゃんの形見なんだ。俺のじいちゃんは昔魔王を倒した伝説のパーティのメンバーだった。じいちゃんは死の間際に俺にこの剣を託してこう言った・・・。


『カズキよ・・・魔王は必ずまた復活する。その時は、お前が魔王を倒すのじゃ。』

『でも・・・僕できないよ!』

『できるとも。お前には英雄の血が流れておる。この剣は必ずやお前の願いに応えるじゃろう。』

『じいちゃん・・・。』

『さらばじゃ、カズキよ・・・。お前の勇姿を天国から見守っておるぞ。』

『じいちゃーーーん!』


こう言ってじいちゃんは死んだ。俺はその時の約束を果たすため、こうしてこの剣とともに旅に出たのさ。」


 カズキはしみじみと語った。みんなはしんとなった。我ながら、よくもこんなデタラメを即座に考えだし、ペラペラと話せるものだと感心した。


 すると、マリーが大声で泣き出した。


「うえぇぇぇん、とてもいいお話ですぅ!」

「そ、そうかしら、私にはコイツの妄想にしか聞こえないけど。」

「そんな、ひどいですぅ。カズキ君、必ず魔王を倒しましょうね!」


 マリーはキラキラした目でカズキを見つめた。


「あ、ああ。そうだな。」


 カズキは申し訳ない気持ちになった。


「あと、俺のスキルは『英雄の血』だ。一定時間スタミナが無限大になる。」


 これも大嘘。俺の真のスキルは『デビルズ・デストラクション』。効果範囲内の相手の下着以外の全ての装備を破壊する。俺は、このスキルをこいつらに使う機会を伺っている。


「で、カテリナは?」

「私の武器は見習い魔女の杖で、スキルは一定時間MPが無限大になる『魔女の知恵』よ。」


 うん。普通だ。


「じゃあ、マリーは?」

「私の装備は治癒のアミュレットとホーリークロスです。治癒のアミュレットは、神に祈ることで味方のHP回復、状態異常回復を行うことができます。ホーリークロスは近接武器で、相手に神の鉄槌を下します。スキルは『聖母の抱擁』で、効果範囲内の味方のHPを全回復できます。」

「マリーってさ、力持ちだよね。」

「いいえ、神のお力が私の身に宿った結果、大きな力が発現できるのです。私はただのかよわい乙女です。」


 そうか、分かった。そういうことにしておこう。


「ユイは?」

「私の武器は苦痛の刃と絶望の弓だ。苦痛の刃は人間に傷を負わせると、傷口から神経毒が体内に入り込み、相手は三日三晩激痛でのたうち回る。絶望の弓は、矢を放つと相手に命中するまでどこまでも追尾する魔法が込められている。人間に命中すると、矢じりに塗られた神経毒が体内に入り、相手は三日三晩激痛にもがき苦しむ。」


 この女、ドSだッ!相手が激痛にのたうち回るのを見てゾクゾクし、笑みを浮かべているような・・・。

 カズキは、この女だけは絶対に敵に回してはいけないことを悟った。


「へー、恐ろしい武器ね。この奴隷に試し切りしてみれば?」

「断る!」

「はじまりの村のまわりには、アリしかいなかったからな。人間相手に試したことはない。ちなみに私のスキルは『狩人の知覚』。半径100メートル以内の敵の位置を察知できる。」


 探知系スキルか。便利だな。


「よし。みんなの情報が聞けたことだし、洞窟に入るとするか。みんな、準備はいいか?」


「いいわよ。」とカテリナ。

「はい。」とマリー。

「OKだ。」とユイ。


 こうして四人は洞窟に入っていった。

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