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第47話



 朝食を食べ終え、とうとう帰るだけになった俺たち。

 荷物を持ってバス停に向かい、俺たちはバスを待っていた。


「愛実ちゃん……」


「はい?」


「なんか……いつも以上に近く無い?」


「そうですか?」


 愛実ちゃんはいつも以上に俺との距離が近かった。

 そんな愛実ちゃんを見て、玲佳さんはニコニコしながら愛実ちゃんに尋ねる。


「うまくいったのね」


「はい! 玲佳さんのおかげです!」


「うふふ、良かったわね。次郎君はやっちゃったわね」


「そんな嬉しそうに言わないで下さい……」


 玲佳さんはベンチに座りながら、俺の方を見てニヤニヤしていた。


「どうだった? 愛実ちゃんの体は?」


「変な事を聞かないで下さいよ……」


「昨日、私達の部屋まで聞こえてきたわよ?」


「え!? マジっすか!!」


「嘘よ」


「……マジでやめて下さいよ……」


「うふふ、若いって良いわねぇ~」


「そんなに歳変わらないじゃないですか……」


 玲佳さんの言葉を聞き、俺は心臓が止まる

かと思った。

 本当にこう言う冗談はやめてほしい……。


「あんまり次郎をいじめるなよ玲佳」


「あら? 今日は随分優しいじゃない」


「まぁ……無理を言ってこの旅行に来て貰ったからな……」


「高井さんがそんな事を言うなんて……明日は雪ですかね?」


「次郎、それはどう言う意味だ……」


 そんな話しをしているうちにバスがやってきた。

 俺たちはバスに荷物を載せて、席に座った。 窓から温泉街を眺めながら、俺は隣の愛実ちゃんの方を見る。


「愛実ちゃん」


「はい?」


「今度は……二人で来ようか……」


「え……は、はい!!」


 そう言うと愛実ちゃんは俺の手を強く握り、肩に頭をのせてきた。

 楽しかったのか、それとも昨晩の影響なのか、愛実ちゃんはそのまま眠ってしまった。

 

「色々あったが……来て良かったな……」


 俺はそんな事を思いながら、自宅へと帰って行った。







「次郎さん!」


「何?」


「父と母が今度の日曜日に、一緒に食事をしたいそうです」


「へ?」


 温泉旅行から一週間が経ち、来週から新学期が始まるという今日。

 遊びに来ていた愛実ちゃんが、俺の膝の上でそう言った。


「なんで?」


「いやぁ……母にこの前の旅行の話しをしたら、そろそろちゃんと紹介して欲しいと言われまして……」


「なるほど……ところで愛実ちゃん……」


「はい?」


「旅行の話しっていうのは……あくまで温泉の話しだよね?」


 まさか自分の両親にあの夜の話しなんてしてないよな?

 なんて事を思いながら、俺はゲームのコントローラーから手を離し、愛実ちゃんに尋ねる。


「はい、温泉が気持ちよくて、次郎さんと温泉の博物館に行ってきたって言いました」


「あぁ、そっか……それなら良いか……」


「はい! 流石に私だって両親にあの夜の話しはしませんよぉ~」


「だ、だよなぁ~」


「はい、初めて一緒にお風呂に入った事はいいましたけど」


「え?」


 この子はなんでこんなに天然なのだろうかと、俺はこのとき思った。

 しかし、ちゃんと挨拶はするべきだろう。

 ご両親だって、娘が誰と付き合っているのか気になるだろうし……。

 でも……会いたくねぇなぁ……。

 絶対愛実ちゃんのせいで色々バレてるだろ……。


「はぁ……」


「どうしたんですか?」


「ん? 別に……愛実ちゃん可愛いなぁーって」


「えへへ~やめて下さいよぉ~、チューしちゃいますよ!」


「あぁ、それは良いから」


 俺はそんな事を言いながら、愛実ちゃんを膝から下ろし、立ち上がる。


「さて、愛実ちゃんそろそろ帰らないとでしょ?」


「えぇ~もうですか……」


「そうだよ、送ってあげるから、ほら行くよ」


「ぶ~……はーい」


 俺は愛実ちゃんを自宅まで送り届け、自分の家に戻り始めた。


「愛実ちゃんの両親と飯か……」


 前に会った時の事を思い出すと、あまり緊張はしない。

 いい人だったし、お父さんも怖そうな人では無かった。


「でもなぁ……」


 それでもやっぱり、彼女の家で食事なんて考えると緊張してしまう。


「はぁ……どうしよう……」


 何を着ていけば良いのだろうか?

 手土産は何を持って行けば良いのだろうか?

 考える事が多すぎる。

 俺は愛実ちゃんの両親との食事の事を考えながら、部屋に帰った。





 愛実ちゃんの家での食事の日が来てしまった。

 時間は夕方6時から。

 俺は手土産と、なるべくちゃんとした服装で、愛実ちゃんの家にやってきた。


「よし」


 俺は覚悟を決めて、愛実ちゃんの家のインターホンを鳴らす。


「はーい」


 愛実ちゃんの声がドアの向こうからしてきた。

 案の定ドアの開けたのは、愛実ちゃんだった。

 

「次郎さん!!」


「うぉっ!! ビックリした……」


 愛実ちゃんはドアを開けていきなり俺に抱きついてきた。


「待ってましたよ!」


「そ、そう……あのさ……ご両親も居る事だし……離れてくれない?」


「えぇ~、大丈夫ですよ! うちの両親はもう次郎さんを認めてますから!」


「そう言うことじゃ無いから……」


 俺は愛実ちゃんにそんな話しをしながら、家の中に入って行った。

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