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第4話



 12月と言えばクリスマスや年末と色々と忙しい、忘年会と称したサークルの飲み会なんかもあり、何かとお金が要る。

 残念ながら、俺はそこまで金があるわけでもないので、毎日バイトに明け暮れる。

 一月になれば、正月に新年会と来月もかなりの出費が予想される。


「はぁ……俺の人生、なんだかつまんねーなぁ……」


「何がつまらないんですか?」


 鉄板でハンバーガーのパティーを焼いていると、ニコニコしなが石川さん……もとい愛実ちゃんが尋ねてくる。


「あぁ、いしか……愛実ちゃんか……」


 最近この子は俺から名字で呼ばれる事を激しく嫌がる。

 なぜだかは良く分からないが、色々面倒なので言うとおりにしている。


「高校生は良いよなぁ……」


「そんな事ありませんよぉ! 来年は受験だし……折角のクリスマスなのに彼氏は居ないし……あ、先輩も彼女居ませんでしたね」


「嫌みか!」


「はい! 嫌みです」


「満面の笑顔で言うな!!」


 俺は満面の笑みで俺に嫌みを言う彼女から視線を外し、肉の焼き加減を確かめる。


「お、俺はまだ彼女は良いかなって……お、思ってるだけで……俺だってその気になれば……」


「じゃあ次郎さん、女の子と手とか繋げます?」


「当たり前だ! それくらいは高校の時に……」


 っつても臨海学校の夜のフォークダンスだけど……。 

「ふぅ~ん……それよりも、クリスマスは次郎さんもバイトでしたよね?」


「まぁな……来月は実家に帰ろうと思ってるし……金を稼いでおかないとね」


「悲しいクリスマスですね」


「愛実ちゃんには言われたくない」


 今日も店は平和だ。

 こんな話しをしてるくらい余裕がある。

 

「愛実ちゃんなら彼氏くらい直ぐ出来るだろ?」


「まぁ、確かにそうですね」


「認めるんだ……」


 自信たっぷりに言う彼女。

 だが、彼女の容姿がその言葉の説得力を上げている気がした。


「でも……私にだって好きな人がいますし……」


「ふぅ~ん……愛実ちゃんが好きな人かぁ……少し興味あるなぁ……」


「え!? そ、それはど、どどどどう言う意味でしゅか!?」


 愛実ちゃんは顔を真っ赤にして俺に聞いてくる。


「ん? いや……どんなイケメンだろうなって、単純な興味だよ」


「あ……そうですか……」


 今度はなんだかふてくされたような様子でそう言ってくる。

 表情の豊かな子だなぁ……。

 

「あ、これ出来たから持って行って、12番様」


「嫌です」


「え? な、なんで……」


「自分で持って行って下さい」


 頬を膨らませて俺にそう言う愛実ちゃん。

 いや……俺の方が先輩だし……これ一応仕事なんだけど……。

 なんて事を思いながらも、俺は出来上がった商品をお客様のテーブルに運ぶ。

 

「次郎さんは、もう少し女心を学んだほ方が良いと思います!」


「はぁ?」


 厨房に戻った俺に彼女はそう言い、ドリンクマシーンの洗浄作業に戻っていった。


「なんなんだ……」


 女子高生の気持ちは分からない。





 私、石川愛実がアルバイトを始めて早いもので二ヶ月が過ぎようとしていた。

 今日も私は学校の帰りに、真っ直ぐバイト先のファーストフード店に向かう。


「おはようございまーす」


「ん? あぁ、石川ちゃんおはよう!」


「おはようございます、高井さん」


 私はスタッフルームに入り、先にシフトに入っている高井先輩に挨拶をする。

 このバイト先の人たちは基本的に皆優しい。

 始めてのアルバイトで不安だったけど、今では結構この仕事が楽しかったりする。


「あれ? 高井さん何をしてるんですか?」


 着替えを済ませ、更衣室から出てくると、高井さんが雑誌とスマホを広げて何かを調べていた。


「あぁ、彼女へのクリスマスプレゼント何が良いかと思ってな」


「あ、そう言えば高井さんって彼女さん居るんですもんね」


「おう、だから悪いがクリスマスはバイトには絶対に出ないぞ!」


「店長には昨日も頼まれてましたもんね」


 楽しそうに話す高井さん。

 良いなぁ……私も彼氏とか欲しいなぁ……。

 なんて事を考えると、私は最近とある人の顔が頭をよぎるようになっていた。


「そう言えば、石川ちゃんはシフト入れてたけど良いの? 折角のクリスマスなのに……」


「はい、友達も彼氏と過ごすって言う子がほとんどで……別に用事もないですし……」


「そうなのか? 石川ちゃんモテそうなのに」


 高井さんの言うとおり、私はモテる方なのだと思う。 クリスマスが近いこともあり、最近では良く男子からアプローチされたり、告白されたりが多くなってきた。

 でも、その度にあの人の事を考えてしまい、私は告白を断り、アプローチも流してきた。


「モテると言えば、次郎の奴は女の気配すらねーからなぁ……心配になってくるぜ……」


「そ、そうですよね……」


「今度合コンでもセッティングしてやるかなー」


「え!?」


「うぉっ! び、ビックリした……ど、どうかしたか?」


「あ、いえ……す、すいません、虫が居た気がしたんですけど……」


「そ、そう?」


 私は高井さんの言葉に、思わず身を乗り出してしまった。

 岬次郎さん、私の元指導係をしていた人だ。

 話し易くて良い人で……凄く優しい……。

 告白の時にいつも頭をよぎるのは、この人の笑顔だった。

 

「……なんで私が心配してるんだろ……」


「ん? なんか言った?」


「な、なんでもありませんよ!」


「それにしても……あいつも大学生だろ? 彼女の一人くらい出来ても良いと思うんだがなぁ~」


「そ、そうですよね……」


「やっぱり合コンセッティングしてやるか……この前シフト変わって貰ったし……」


「そ、それはダメです!!」


「え?」


「あ……」


 しまった、つい声に出してしまった……。

 高井さんも今度は私の言葉がハッキリと聞こえたようで、少し考えた後、ニヤニヤしながら私に尋ねてきた。


「へぇ~なんでだめなの?」


「そ、それは……」


 そんなの私にだって分からない。

 でも……次郎さんが他の女性と仲良くしている姿はあまり想像したくなかった。

 それに、私はきっとわかっているけど、分からない振りをしたいのだと思う。

 そんな事を私が考えていると、高井さんは笑顔で私に言う。


「そっか、そっか! じゃあ、あいつに合コンセッティングしてやるのはやーめた!」


「う……うぅ……」


 完全にバレた……恥ずかしい……。

 私はそんな事を考えながら、真っ赤になっているであろう自分の顔に手を当てて隠した。

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