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第27話

「あんたらさぁ……押してダメなら引いてみろって言葉知ってる?」


「「え?」」


「はぁ……あんたらは直線的過ぎるのよ、たまには引くって事を覚えなさい」


 優香里は私と優美にため息を吐きながらそう言う。

 引くって言われても具体的にはどうすれば良いのかな?

 

「例えば?」


「そうね……まず愛実、アンタはこのまま岬さんとそのまま話しをしないで一週間過ごして見なさい」


「一週間!? そ、そんなの私死んじゃう!!」


「死なないから安心しなさい。優美はアプローチをやめなさい」


「え!? そ、そんな事したら先輩が他の女の子に取られる!!」


「あー、それも多分無いから安心しなさい」


 わーわーと騒ぐ私たちを他所に優香里ははぁーとため息を吐いて頭に手を当てる。


「まぁ、言われた通りにしてみなさい。そうすれば、あっちから多分話し掛けてくるから」


「「本当!?」」


「本当よ」


「でも、その間次郎さんが合コンにでも行ったら……」


「あの人はあんまりそう言うの行かないんじゃない?」


「未遂だったけど一回行こうとしてたのよ!」


「へー以外ね……でも未遂でしょ?」


「それは奇跡みたいなものよ……はぁ……次郎さんとキスしたい……」


「だから、アンタは何段階すっ飛ばすのよ……」


「私は先輩とホテルに……」


「あ、ダメだ。この二人の頭の中は真っピンクだわ……」


 私は優香里に言われた通りにしようかどうかを考えていた。

 一週間も次郎さんと話し出来ないのかぁ……嫌だなぁ……だって今すぐにでもハグしに行きたいって思ってるのに……。

 私は考えた末、試しに三日間次郎さんと話しをしないでみようと考えた。

 




「愛実ちゃん」


「………ぷい」


 俺はバイト先で愛実ちゃんに久しぶりに声を掛けた。

 しかし、彼女は俺の言葉を無視する。

 いつもなら、尻尾を振った犬のように近づいてくるのだが……。


「ま、愛実ちゃん?」


「フン……」


 これは……本格的に嫌われてしまったようだ……。


「はぁ……」


「どうしたの?」


「ん? あぁ……小山か……ちょっとな」


「石川さんと喧嘩した?」


「なんで知ってんだよ!?」


「いや、雰囲気を見てれば分かるよ……何があったの?」


「まぁ……色々な……」


 小山には愛実ちゃんに関する話しをあまりしていない。

 告白された事も、その告白を待って貰ってる事も俺は話しをしていない。

 バレたら色々と面倒だし、ここは少し濁しておくか……。


「いや……ちょっとな」


「そう……嫌われちゃった?」


「まぁ、そんなとこ……」


「そうなんだ……折角告白されたのにね……」


「いや、それは関係な……小山、なんで告白された事知ってるの?」


「ん? 高井さんが言ってたよ?」


 あの人は……ペラペラ喋りやがって……。

 俺は高井さんに対して怒りを覚えながら、小山に話しする。


「はぁ……まぁ……そのせいで喧嘩みたいな事をしてるっていうか……」


「そっか……逆に告白しちゃったら?」


「なんでそうなる」


「いや、だって仲良いし……お似合いだと思うよ?」


「そう言われてもなぁ……」


 他人からそう言われても、俺はそうは思わない。

 そんなに第三者からは俺と愛実ちゃんが仲良く見えるのだろうか?


「まぁ、恋愛に関しては当人同士の問題だけどね……でも、愛実ちゃんは良い子だよ」


「なんだよ、小山は愛実ちゃんの味方かよ……」


「違うよ、純粋に一緒に働いててそう思ったからだよ」


「……そうなのか?」


「うん、仕事を覚えるのは早いし、みんなと仲良く仕事をしてるし、人の悪口なんて全然言わない……純粋で素直な良い子だよ」


「……だからだよ……俺にはもったいなさ過ぎる……俺なんて……」


「そうかな?」


「え?」


「だって、僕からしたら次郎君だって十分良い人だよ」


「俺がか?」


「うん、面倒見は良いし、店のみんなからも信頼されてるし、それに優しいしね」


「お、おう……な、なんだよ気色悪いな……」


「だって本当にそう思ってるんだ、仕方ないだろ?」


 なんだこいつ……イケメンで性格も良いとか完璧だろ……どっちかって言うとこいつの方が愛実ちゃんとお似合いだろ……。


「次郎君は自分を下に見すぎだよ、もっと自身を持っても良いと思う」


「そ、そうか?」


「うん、そうだよ」


 そう言われると嬉しいのだが……直ぐに自分に自信を持つ事が出来ない。

 その後、愛実ちゃんは三日間俺と一言も口をきいてはくれなかった。

 電話もメッセージも一切無く、俺は愛実ちゃんと出会う前の日常に戻っていた。


「ただいまぁ……」


 真っ暗な自分の部屋に俺は帰ってきた。

 いつもなら、帰ってきて直ぐくらいに愛実ちゃんから電話が掛かってくるのだが、最近は一切掛かってこない。


「さて……飯でもつくるか……」


 愛実ちゃんは一週間に一度、必ず俺の家で晩飯を食べて帰っていた。

 基本的に次の日が休みの金曜日や土曜日が多かった。

 今日は土曜日なのに、愛実ちゃんは来る様子が一切無い。

 昨日も愛実ちゃんは来なかった。


「やべ……二人分作っちまった……」


 昨日も同じ失敗をした。

 はぁ……何やってんだろ俺……。

 俺は二人分の食事を食べ、そのまま床に倒れた。


「はぁ……なんか……最近暇だな……」


 なんでこんなに暇なのだろうか?

 ゲームをやっても集中出来ず、大学の講義の時も集中できない。

 俺は一体どうしてしまったのだろうか?

 俺はそんな事を考えながら、スマホを操作してニュースを見ていた。

 すると、急に愛実ちゃんから電話が掛かってきた。

 俺は驚き、思わずスマホを手から落としてしまった。


「お、おっと……」


 俺は直ぐにスマホを手に取り、電話に出ようとする。

 しかし、手に取った頃には電話は切れていた。


「なんだ?」


 何か用でもあったのだろうか?

 俺はそう思い、愛実ちゃんにメッセージを送って見る。


【どうかした?】


 俺はそうメッセージを送り、愛実ちゃんからの返信を待った。

 しかし、いつまで経っても愛実ちゃんからの返信は来ない。


「……来てないか……」


 俺は風呂に入る前や入った後、寝る前などちょくちょく愛実ちゃんから返信が無いかを気がついたら確認していた。


「はぁ……何してんだろ……俺……」

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