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伊那郡代秋山伯耆守虎繁

 四郎は、次に面会したのは伊那郡代で昨年東美濃の斉藤家との戦に活躍した秋山伯耆守虎繁だった。


 秋山伯州は、数日間伊那郡の地方巡察に出かけていたので、四郎等が高遠城に到着した数日後に面会した。 



「四郎様、領内の視察にて四郎様の高遠入りの時に不在で逢った事、誠にすみませんでした。」



 秋山伯州は、高遠城で四郎に面会すると、一般最初に謝罪から口に出してきた。



「承知しました、四郎様。ところで四郎様、高遠領に異国の者を受け入れる準備を行う為に高遠入りをしたと文に書かれておりましたが、異国の者に何をやらせるのでしょうか?」


「やって貰いたい事は沢山あるのだが、まずは今高遠領でやっと生産出来るようなったギヤマンの品質向上に鉄炉の改良拡大、あと高遠領にて新しい異国の作物も作りたいと考えておる。」


(しか)らば、我々もそのような事をやる準備作りを行わないといけませぬな。」


「うむ、もし高遠で成功した事業は、すぐに他の武田領に導入するので、頑張る必要はある。」


「して(それがし)が伊那郡代として、出来る事はありませぬか?」


「善右衛門が斎藤との戦に活躍してくれた御蔭で、伊那地方には他国の脅威が少ない状態にある。ならば、この機に伊那郡の交通網を整備して貰いたい。荷馬車が通行出来る程の道があれば、色んな物資の輸送が早くなり、様々な物が時間を短縮できるようになる。」


「なるほど、そしたらこの冬の間にも領内の道を整備する事を行います。」


「恐らく父上も武田領内の交通を重視して、棒道等を整備すると言ってたから、善右衛門尉も領内の道を整備するならば、父上からの覚え目出度(めでた)くなろうぞ。」


「四郎様、(それがし)は賞賛を望む訳ではありませぬが、武田家の為に働く事に苦は感じませぬ。喜んで、領内の道を整備しましょうぞ。」


「ならば、ただ道を整備するのではなくて、兵士達を動員して領内の地図作りと野戦陣地作りの調練を方便に作ると()しいと思うぞ。」



 それを聞いた秋山伯州は、そんな考えは思いつかなかったと言わんばかりに驚いてた。



「四郎様、それは良い御考えだと思います。武田家が伊那郡を支配してまだ日が浅いし、他国との国境(くにさかい)への地形や環境を把握する機会は、まだ訪れていませんでしたので、これを機に精緻な地図を作り上げて、御屋形様に献上しますぞ。」



 そこで四郎は、間宮林蔵がやってた測量の方法を思い出して、ギヤマン職人に測量用レンズ作らせてみるかと思いついた。



「話は変わるが高遠領内で、昨年よりギヤマンを作るようになった事は、善右衛門は知ってるか?」


「はい、四郎様が音頭を取って、溝口民部少輔正慶殿と黒河内隼人丞政信殿にやらせてるのは知ってます。」


「昨年より、河原者をや流民の手先の器用な者達に鍛冶や石工、それにギヤマン職人をやらせて育成しているのだが、そのギヤマン職人の中から、遠見の筒を作らせようと思う。」


「遠見の筒とは?」


「ギヤマンを綺麗に凸型(とつがた)に磨くと遠くの景色などが、近くから見たように見える道具だ。」


「なんと!! そのような者があれば、武田の物見も多くの情報が得られまする。」


「武田家は、昔から水晶を豊富に産出するので、甲州には水晶加工の職人が数多くいるので、父上に頼んで数人高遠に来てもらう。そしてその水晶職人にギヤマンを磨かせれば、現状でも遠見の筒は作れるぞ。」


「なるほど、我等の地元に他家に負けない武器が埋もれてるとは思いせなんだ。」


「俺は早速父上に水晶商人が居れば、遠見の筒がギヤマンを使って作れるから、職人を数人派遣して欲しいと頼むか。」


「早速お願いします。これは上手くいくと他家に対して、機先を制する事になるかもしれませぬな。」


「そうなると、遠見の筒は他家との取り引きにも使えるかもな。どうせ原理と製造工程を知られれば、どこの家でも製作可能。ならば、貴重価値高いうちに取り引きに使うのが宜しいかも。」


「そうですな、四郎様。我々が遠見の筒を武田家の秘中の秘にしても誰かが漏らすかもしれぬし、海外からも持ち込まれて価値が暴落するかもしれぬ。ならば今の内に得られる利益を得るのは、正しい認識でじょう。」


「そういえば、善右衛門尉よ。其方(そなた)は斎藤家との闘いにおいて、東美濃へ行ったよな。あそこに燃える石が山中に埋まってる事は知ってるか?」


「いえ初めて聞きました。東美濃の遠山三塊は、木曽家に従属しているので、東美濃の土地の事は知る由もありませんでした。」


「その燃える石を入手出来れば諏訪や高遠で、今よりももっと沢山鉄を作れるようになるんだが。」


「なるほど現状は難しいでしょうが、将来的には武田の物になる可能性はありますぞ。」


「ほう、それはどの様にしてそう思ったのだ?」


「まず縁戚の木曽家ですが、斎藤家との敵対がとても荷が重いのです。だから我々が木曽家からの要請で東美濃へ出兵したのですが、木曽家では飛騨国の三木家との紛争の処理たけでも精一杯な状態に陥ってます。そうなると遠山三塊が木曽家が宛にならぬならば、敵対してた斎藤家に組するか三河に隣接しているので、今川家を頼る可能性があります。しかし今川家としては縁戚の武田家の領分としてる東美濃に手を伸ばすならば、武田家が敵側に追いやる事になります故、東美濃には手を出さぬでしょう。」


「善右衛門よ。尾張の織田弾正忠家が東美濃と結ぶ可能性は考えぬのか?」



 四郎が織田家の名を上げると、何で織田家が?と言わんばかりに意表を突かれた。



「四郎様、織田家は確かに裕福な家でございますが、現状今川家と斎藤家に挟まれて身動き取れぬ状態です。その様な家は東美濃へ関心を持つ事は難しいでしょう。」


「善右衛門尉よ、それは考えが固定観念に囚われ過ぎ取るぞ。我々は東美濃の地下資源に関心があるのだから、他国も資源の使い道があるならば、東美濃への関心を持つ事だろう。織田弾正忠家で、燃える石の存在を知り、使い道があるならば遠山三塊と(よしみ)を通じようぞ。」


「なるほど、四郎様なら織田家の立場として、何か使い道がありますかな?」


「俺が織田三河守信秀ならば鉄砲鍛冶を領内に集めて、燃える石を使って沢山鉄を作るぞ。鉄が沢山あれば、鉄砲など色々な武器が作れるだろう。」


「四郎様の頭の中には、様々な武具の知識があるのでしょうね。」


「ああ、沢山あるぞ。鉄砲や刀槍ばかりでないぞ。鉄が沢山あれば大砲や鉄条網、虎ハサミなどのバネを使った罠、また新型の農機具や工具など、それらの物を今後はこの高遠で生産したい。だから鉄を沢山生産するのに遠山三塊の地にある燃える石が欲しいんだ。」


「わかりました。今後は遠山三塊や木曽家の動きを注視して、他家から工作を受けているか監視しておきます。」



 そういうと時間も忘れて二人は、武田が今後必要な事をお互い言って、宿老保科弾正忠から呼ばれるまで話あっていた。


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